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人外適応管理局 ―ようこそ、人と妖が暮らす街へ―  作者: 日旅こつめ


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新しい出会い

 やがて、道の向こうに見慣れた商店街が見えてきた。

 昼を少し過ぎた時間。

 通りには買い物袋を下げた人や、店先で話をする人たちの姿がある。

 八百屋からは威勢のいい声が飛び、惣菜屋からは揚げ物の匂いが漂っていた。

「わあ……」

 暁が目を輝かせる。

「ここが商店街だよ」

「しょうてんがい……」

 暁は辺りを見回した。

「あれ、なに?」

「八百屋さん」

「やおや?」

「野菜とか果物を売ってるんだ」

「あれは?」

「お魚屋さん」

「さかな?」

「うん」

「これは?」

「……それは看板だね」

 次から次へと指を差す暁に、僕は思わず笑った。

「そんなに一気に聞かれたら、良治くんも大変だね」

 局長が楽しそうに言う。

「局長も答えてくださいよ」

「もちろん。じゃあ暁、あっちは何だと思う?」

「……わからない」

「お花屋さんだよ」

「おはな!」

 暁は嬉しそうに駆け寄ろうとして――。

 局長に手を引かれ、足を止めた。

「走ると危ないよ」

「……うん」

 素直に頷き、今度はゆっくりと歩き出す。

 その姿を見ながら、僕は少しだけ笑った。

 しばらく歩くと、見慣れた写真屋が見えてきた。

「あそこだよ。百目さんのお店」

「しゃしん?」

「そう。写真を撮ってくれるところ」

 暁が興味深そうに店の方へ顔を向ける。

 すると――。

「いらっしゃいませ!」

 店先から、元気な声が聞こえてきた。

「……あれ?」

 入口の前に立っていたのは、小柄な少年だった。

 短い髪に、動きやすそうなシャツとズボン。

 以前より少しだけ背が伸びている。

 何より、人の姿で立つことにも随分慣れたらしく、足取りにはもうほとんど危なっかしさがなかった。

 首からは、小さなカメラを下げている。

「良治!サトリ!」

 僕に気づいた瞬間、少年の顔がぱっと明るくなった。

「瞬くん?」

「うん!」

 瞬くんは嬉しそうに駆け寄ってくる。

「久しぶり!」

「すごいな……またずいぶん上手に話せるようになったね」

「いっぱい覚えた!」

 得意げに胸を張る。

 以前は短い言葉を繋げるだけでも一生懸命だったのに、今では簡単な会話ならほとんど困らないらしい。

「おや、槇尾くんたちじゃないか」

 店の中から百目さんが顔を出した。

「こんにちは」

「今日はずいぶん大勢だね」

「実は、みんなで写真を撮ってもらおうと思って」

 そう言うと、瞬くんの目が一気に輝いた。

「写真!」

「うん。お願いできる?」

「撮る!」

 勢いよく返事をした瞬くんは、そこで初めて暁に気づいたらしい。

「……だれ?」

 暁もまた、瞬くんをじっと見つめている。

「この子は暁。今、局で預かってるんだ」

 局長が二人へ紹介する。

「それから暁。こちらは百目さん。こっちは瞬くん。カメラの付喪神だよ」

「つくもがみ?」

 暁が首を傾げる。

「うん!」

 瞬くんは首から下げていたカメラを持ち上げた。

「ぼく、カメラ!」

「……カメラ?」

「写真、撮る!」

 暁は瞬くんとカメラを交互に見る。

「しゅんが、とるの?」

「うん!」

 迷いのない返事だった。

 その様子を見て、僕は少し驚いた。

 以前会った時の瞬くんは、人の姿を保つだけでも精一杯だった。

 カメラを構える手もぎこちなくて、百目さんに何度も教えてもらっていた。

 けれど今は違う。

「瞬。お客さんなんだから、まず中へ案内しないと」

「あっ」

 百目さんに言われ、瞬くんは慌てて店の扉を開ける。

「どうぞ!」

「ふふ。ありがとうございます」

 少し離れたところから、サトリさんが笑った。

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