80/106
夜の時間
そして、夜。
局の仕事を終えた僕が帰る準備をしていると、奥から局長の声が聞こえた。
「良治くん」
「はい?」
「今日はもう上がっていいよ」
「局長は?」
「僕はもう少し、この子と一緒にいるから」
僕は局長の腕の中を見る。
暁は眠っていた。
昼間はあれだけ周りを見ていたのに、今は局長の腕の中で静かに眠っている。
その小さな身体は、まだ局長の腕の中にすっぽり収まっていた。
「……分かりました」
「お疲れさま」
「局長も、ちゃんと寝てくださいね」
「善処するよ」
「それじゃ、白澤さんと一緒ですよ」
局長が苦笑した。
「それじゃ、明日また来ますね」
僕がそう言うと、局長の腕の中で眠っていた暁が、ほんの少しだけ目を開けた。
「……ん」
「あれ?」
暁の目が、僕のほうを向く。
「おやすみ、暁」
そう言うと、暁はしばらく僕を見つめていた。
やがて、小さく瞼を閉じる。
「……おやすみ」
局長が小さく笑った。
「明日も来てくれるって分かったのかもしれないね」
「そうだといいですね」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
僕が部屋を出る。
扉が静かに閉まった。




