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人外適応管理局 ―ようこそ、人と妖が暮らす街へ―  作者: 日旅こつめ


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これからのこと

 局へ戻ると、サトリさんが真っ先に僕たちを出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ……」

 いつものように頭を下げかけて――止まる。

「……え?」

 サトリさんの視線が、局長の腕の中へ向いた。

 幼子が、局長の腕の中で眠っている。

「……局長、その子は……?」

 僕は何と答えればいいのか分からず、黙ってしまった。

 局長も、しばらく何も言わない。

「……零れ落ちた朧の思念だよ」

「……」

 サトリさんの目が、大きく見開かれる。

「……朧、さんの……?」

 その瞬間、サトリさんの表情が変わった。

 見た目だけでは分からない何かを感じ取ったのだろう。

「……この子……」

 サトリさんが、そっと一歩近づく。

 そして、幼い姿になった思念をじっと見つめた。

「……ずっと、ひとりだったのですね」

 サトリさんが、幼い姿へ一歩近づこうとした。

「……っ」

 けれど、その足が止まる。

「サトリさん?」

 サトリさんは胸元を押さえ、ほんの少し眉を寄せた。

「……大丈夫です。ただ、この子の近くにいると……思念が乱されるような感覚があります」

 言葉を探すように、サトリさんが眉を寄せる。

「……長く近くにいるのは、あまりよくないかもしれません」

「そうか」

 局長は、腕の中で眠る幼子を静かに見つめた。

「……なら、しばらく僕が面倒を見るよ」

「局長が?」

「うん。今はまだ、この子をどうするか決まっていない。なら、それまでこの子が安心していられる場所を作る必要がある」

 局長は、眠っている幼子を見つめる。

「この子には、少し時間が必要なんだと思う」

「……そうですね」

 僕がそう言うと、局長は小さく頷いた。

「うん」

「では、明日、皆さまと今後についてお話ししましょう」

 サトリさんは、少し離れた場所から幼子を見つめていた。

 先ほど近づいた時に感じた、あの奇妙な感覚を確かめるように。

「……場所は、白澤さんの診療所がいいと思います」

「そうだね」

 局長も頷いた。

「初音さんにも、話を聞いてもらいたい。白澤さんにも事前に連絡しておこう。白澤さんがいれば、何かあってもすぐに対処できるからね」

 局長はそう言って、腕の中の幼子を抱き直した。

「今日はもう、この子を休ませよう」

「はい」

 僕は小さく頷いた。

 千年前に零れ落ちた、ひとつの想い。

 その想いが何を求めているのか、僕たちはまだ知らない。

 けれど――。

 少なくとも今夜、この子はひとりではない。

 そう思うと、不思議と胸の奥が少しだけ温かくなった。

 明日、僕たちはこの子と、もう一度向き合う。

 

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