見えてきたもの
白乃さんから話を聞いた翌朝。
管理局の事務所に、珍しく白澤さんが姿を見せた。
「おはようございます、白澤さん」
声をかけると、白澤さんは軽く手を上げた。
「ああ。おはよう」
いつもの診療所で見る時よりも、少しだけ険しい顔をしている。
目の下には、はっきりと疲れが浮かんでいた。
昨日、白乃さんから聞いた話を報告したばかりだ。
それから一晩。
白澤さんも、あの話を何度も頭の中で整理していたのかもしれない。
九百年にわたる白乃さんと旦那さんの縁。
繰り返される転生。
そして、今回の異変に残されたものと同じだという、魂の痕跡。
それらを繋ぎ合わせるのが、簡単なことではないのは僕にも分かった。
「瀬尾くんは?」
「あ、奥にいます。呼んできます」
「いや、いいよ。私が行く」
白澤さんはそう言うと、事務所の奥へ向かって歩き出した。
その後を追うように、僕もついて行った。
普段はあまり使われていない局長室に入る。
局長は机の上に古い資料をいくつも広げ、何かを探すように目を通していた。
そして手を止めて、顔を上げる。
「白澤さん?」
「やあ、瀬尾くん」
「珍しいですね。朝からどうしたんですか?」
広げた書類を一つにまとめ、机の端に寄せた。
「昨日、槇尾くんから報告を聞いた」
白澤さんは、まっすぐ局長を見つめた。
「白乃さんの旦那さんの話ですね」
「そうだ」
白澤さんはそう答えると、迷いのない足取りで応接用の椅子に腰を下ろした。
僕も、緊張を滲ませながらその隣に座る。
来客に気づいたサトリさんが、三人分のお茶を静かに運んできてくれた。
「白澤さん、どうぞ」
「あぁ、サトリくん。ありがとう」
局長も白澤さんの向かいの椅子に座る。
白澤さんは湯呑みを受け取ると、サトリさんが気を利かせて静かに部屋を出ていくのを待ってから、本題に入った。
「瀬尾くんも、昨日の報告を聞いたんだろ?」
局長は静かに頷く。
「なら、話は早い。私の考えていることを話そう」
局長が姿勢を正し、白澤さんをまっすぐに見つめた。
「聞かせてもらえますか?」
白澤さんは湯呑みをゆっくりとテーブルに置いた。




