↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外適応管理局 ―ようこそ、人と妖が暮らす街へ―  作者: 日旅こつめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/107

それぞれにできること

報告のため、管理局へ戻ると、局長とサトリさんは揃って事務所にいた。

「おかえり、良治くん」

「ただいま戻りました」

 二人の前まで歩いていくと、僕は白澤さんから聞いたことを順番に話した。

 葉月与三郎さんと河野青童さんの現在の状態。

 二人の妖気に残っていた『痕跡』。

 そして――白乃さんの旦那さんの魂にも、同じ『痕跡』が残っていたこと。

 話を聞き終えた局長が、少し意外そうに目を細めた。

「……白澤さん、そんなことを調べていたんだ」

「はい。以前から、白乃さんの旦那さんの輪廻について調べていたそうです」

「……白澤さんらしいね」

 ぽつりと呟いてから、局長は顔を上げた。

 隣で聞いていたサトリさんが静かに口を開く。

「……『痕跡』ですか。それは、偶然とは考えにくいですね」

「そうだね」

 局長は腕を組み、しばらく考え込んだ。

「……旦那さんの魂にも、同じ痕跡が……」

「はい」

 局長はしばらく黙っていた。

「白澤さんがそこまで気にしているなら、調べる価値はあると思うよ」

「はい」

「それと――」

 局長が僕を見る。

「白乃さんには、まだ何も知らせないほうがいい」

「……白澤さんも言ってました。局長も、そう思いますか?」

「ああ。知らないほうがいい、という意味じゃない」

 局長は少し考えてから続けた。

「今の段階では、かえって混乱させてしまうだけだろう」

「……では、初音さんには?」

「雪原さんには話して大丈夫じゃないかな。白澤さんも、そのつもりで頼んだんだろう?」

「はい」

 僕は頷いた。

「ただ……白乃さんには、こちらが何かを知っているとは悟られないようにしたほうがいいんですよね」

「ああ」

 局長は静かに頷いた。

「白乃さん本人から話を聞くまでは、僕たちから余計なことを伝えないほうがいい」

「……はい」

「それに、白澤さんが知りたいのは、白乃さんが何を知っているのか、なんだろう?」

「そう言っていました」

「なら、無理に答えを聞き出そうとしなくていいよ」

 局長が僕を見る。

「どう聞けば自然なのかは、雪原さんと一緒に考えてみるといい」

「……分かりました」

「それと」

「はい?」

「雪原さんには、白澤さんが何を気にしているのかも話しておくといい」

「……全部、ですか?」

「ああ」

 局長は頷いた。

「君一人で抱えていたら、また考えすぎるだろう?」

「……」

 否定できなかった。

「分かりました」

「うん。それなら、まずは二人で話を整理してから行くといい」

 局長は申し訳なさそうに、僕の肩に手を添える。

「すまないね。僕も一緒に行ってあげたいけど……他に影響が出ていないか調べないといけないんだ」

 今は、それぞれが自分にできることをやるしかない。

 白澤さんも、局長が忙しいのを分かった上で僕に頼ってくれたのだ。

「いえ。僕は今、僕にできることをやってみます」

 僕は頭を下げた。

「……あ」

「どうしたの、良治くん?」

「いえ……千代さんの様子も、もう一度確認しておこうと思って」

 先日、持田家を訪ねた時には、いつもと変わらず元気そうだった。

 けれど、あれから何日か経っている。

「そうだね。何もなければ、それでいいんだから」

 局長が穏やかに頷いた。

「はい。今日のうちに、もう一度様子を見に行ってきます」

「うん。それがいいと思うよ」

 局長が頷く。

「こちらにも何か情報が入ったら、すぐに知らせますね」

 サトリさんが穏やかに微笑んだ。

「分かりました」

 街で何が起きているのか、その全貌はまだ分からない。

 けれど、僕だってもう無関係じゃない。

 白澤さんから聞いたことも、今回の異変も、僕の身近な人たちと無関係だとは思えなかった。

 だからこそ――まずは、自分にできることからだ。

 千代さんの様子を確かめる。

 白乃さんから話を聞く。

 そして、分かったことを局長たちに伝える。

 ひとつずつでも、前に進もう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。