↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外適応管理局 ―ようこそ、人と妖が暮らす街へ―  作者: 日旅こつめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/107

座敷わらしの住む家

カラン、と涼やかなベルの音が響く。

扉を開けると、いつものように白乃さんが穏やかな笑みを浮かべて出迎えてくれた。

 店内には焙煎した豆の香りがゆったりと漂い、窓際からは午後の陽射しが柔らかく差し込んでいる。

 ゆったりとした時間が流れる店内は、買い物客で賑わうスーパーとはまるで別世界だった。

「あら、いらっしゃい。初音ちゃんもお疲れさま」

 白乃さんは手際よくグラスへ氷を滑り込ませると、「アイスコーヒーでいいかしら?」と、僕たちの前に冷たいグラスを置いてくれた。

 初音さんもほっとしたように肩の力を抜き、グラスに口をつける。

 表面に浮かぶ結露が、夏の暑さをすっと忘れさせてくれた。

「そういえば、あの黒猫さん、今日もお店の前に来てましたよ」

 僕がそう伝えると、白乃さんは嬉しそうに目を細めた。

「そう。また来てくれたのね。あの子、最近すっかりこの店がお気に入りなのよ」

 その笑顔は、常連のお客さんの話をしているときのように自然だった。

 ふと、白乃さんが僕の手に提げた大きな袋へ視線を向ける。

「良治くん、その袋……まさか」

「はい。伏見さんに勧められて……」

「あらあら。また負けちゃったのね」

 隣で初音さんまで肩を揺らしてくすりと笑った。

 僕は伏見さんから買わされたうなぎの袋を足元の荷物置きへそっと置くと、カウンター越しに白乃さんへ向き直った。

「白乃さん。実は今日は、少しご相談があって伺いました」

 白乃さんはふきんで手元を拭うと、興味深そうに首を傾げて僕の顔を覗き込む。

「実は、管理局に座敷わらしさんが相談に来られまして。事情があって今のお住まいを離れることになり、新しい住まいを探しているんです」

「座敷わらしちゃん、ねぇ……」

 白乃さんは顎に手を添え、どこか懐かしむように目を細めた。

 そして、カウンターの奥から小さなお盆を取り出し、僕たちの前へ置きながら、静かに口を開いた。

「座敷わらしはね、古い家だから住み着くというわけじゃないの。そこに笑い声があるか。誰かが『おかえり』と言ってくれる場所か……あの子たちは、そうやって『温かい家』を選ぶのよ。だから物件選びにも、少しコツがいるの」

 その言葉に、僕と初音さんは思わず顔を見合わせた。

 ただ雨風を凌げる物件を探せばいい、というわけではないのだ。

「……その座敷わらしちゃんと、一度お話しできるかしら?」

 白乃さんの温かな問いかけに、僕は力強く頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。