夢と現の裂け目
「夢なのか? 夢か、それとも記憶か」——最近、気が散ったり似たような感覚を覚えたりするたびに、なぜか意識が朦朧として幻覚や回想の中に沈んでいく。しかしどれだけ振り返っても、大筋の記憶は常に明瞭だった。唯一、この「誓い」と称されたもの、そして情愛に纏わることだけが——頭を真っ白にさせるか、激しい頭痛を引き起こす。当時何かを施されて心的外傷が刻まれ、その記憶だけが消し去られたのではないかと、疑い始めてすらいた。
夢の中を彷徨い、困惑する。一つの女性の影が、あの頃の私と同じ体格の少女の姿を取って、私に口づけた。動こうとしても、全身がまるで固定されているかのように動かない。その光景が、何度も何度も繰り返された。
夢の舞台は神聖さと聖光に満ち溢れていた。なのに私は悪夢にうなされるように、終わりのない輪廻に囚われていた。唯一の変化は——循環が一巡するたびに聖光が少しずつ弱まり、私と影の年齢が少しずつ上がっていくこと。それに伴って、身体もわずかに動かせるようになっていった。といっても依然として制御は効かず、無力なまま地面に崩れ落ちているだけだったが。
やがて私と影の年齢が成人に達すると、影はもはや口づけだけでは満足しなくなった。跨ってきた。私の身体の上を手探りし、衣服を剥ぎ取ろうとし始めた。——彼女は、私のことが好きなのか? そういえばエダも、チェルシーも、姉も——
ああ、頭が痛い。今、何を考えていた。
影がふと顔を上げ、私を一瞥したような気がした。唇を尖らせて不満を示す。何かの力が私の頭を持ち上げた。影が腰を屈めてくる。
先ほどまでの軽い口づけとは違った。今度は影が強引に唇を奪い、舌を差し入れてきた。私の舌と絡み合い、巻きつく。
言い表しがたい体験だった。一方では——舌が侵入してくるにつれ、強烈な神聖さが押し寄せ、ある種の昂奮が下半身から湧き上がってくる。
他方では——終始強制されているという異質な感覚が纏わりつき、あの名状しがたい昂奮も、何かに抑え込まれているかのようだった。
だが最終的に、神聖さと昂奮が主導権を握った。光の束が下半身に集中し、波のような刺激が腹部以下を繰り返し打ちつける。触れられているかのような感触が、刺激の中で充血を続けるそれを、真っ直ぐに正した。
影がさらに先へ進もうとした、その時——鐘の音が鳴り響いた。この神聖で異様な悪夢から、私を引きずり出してくれた。
もっとも、その安堵は目を開けた瞬間に終わった。
姉もチェルシーも、すでに起きていた。しかも私のように悪夢に苛まれた様子もなく、どうやら先に目覚めていたらしい。今は上体を起こして私を見つめている。正確に言えば——ある特定の部位を。
「どんな夢を見たの、弟? お姉ちゃんに関係のある夢だったのよね? もし違うなら、お姉ちゃんは絶対に許さないわよ」
姉が恐ろしい目で私を凝視していた。チェルシーは沈黙している。むしろ何か言ってほしかった。罵倒でもいいから。
「悪夢だ。悪夢だって」
「悪夢でこうなるの? 正直に言わないと、お姉ちゃん本当に怒るわよ。お仕置きするから」
「本当のことを言ってるんだ! 姉さん、何をする気だ」あの夢を説明することなどできない。正体不明の人型の女性の異形に犯されかけたとでも言えというのか。だが姉は引き下がらず、手を下方に向けて伸ばしてきた。慌てて両手で阻止する。
「聞いた話だと、ここを切り落とすと大量出血して、死ぬ確率が高いらしいわね。試してみる? ちなみにこの知識、あなたが私に教えてくれたのよ。もちろん、どうやって知ったのかは聞きたくもないけど」
チェルシーが笑いながら、手を縦にすっと動かして一筋の線を描いた。
「正気の人間なら絶対に承諾しない。敵を辱めるためにしかやらないことだ」
「お父様を殺しておいて、敵に足りないとでも?」
「警告するわよ、赤髪女。もし弟に対して何か実質的な脅威を与えるなら——たとえ弟に恨まれたとしても、毒薬で殺すわ」
「姉さん、落ち着いてくれ」
「それがあなた方のおもてなしなら、楽しみにさせていただくわ」
せっかく昨夜、頭痛のおかげで和らいだ空気が、一気に険悪になった。もう一度頭痛を起こした方がいいのではないかと本気で考え、額を押さえながら唇を歪めてみたが、あの表情はどう頑張っても再現できなかった。
「あの女のせいであなたが動揺してるのは正直気に食わないけど。でも弟、そこまで心配しなくていいわ。お姉ちゃんにはわかるの。この女は赤い髪の猫みたいなもの。鳴き声は凄いし、引っ掻きもひどいけど、本当は——甘えたいだけ。だから殺さないわ。少なくとも、今のところは。だってお姉ちゃんが一番愛してるのは弟だもの。弟が不幸せなら、お姉ちゃんも幸せじゃないから」
「何を出鱈目言ってるの。仮にそうだとしても、私は猫じゃないわ。獅子よ」
「尊厳の回復はご自由にどうぞ。事実はここに転がっているけれど」
「あの、洗面に行ってくるから、二人は獅子と猫の議論を続けてくれ」
気まずさに耐えかねて、口実を作り部屋を出ようとした。意外なことに、今回は二人とも手を掴んで引き留めようとはしなかった。素早く立ち上がり、扉を押し開け、城内で洗面を済ませてから散歩するつもりで歩き出した。
だが回廊に踏み出し、大広間へ向かおうとした矢先——急速な駆け足の音が、廊下の奥から響いてきた。
「お兄ちゃん! お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん、大好きなお兄ちゃん! ぎゅーっ!」反応する暇もなかった。妹が勢いよく飛びかかってきて、身体にぎゅっとしがみついた。その衝撃で数歩よろめき、危うくバランスを崩して城の廊下に倒れ込むところだった。
「妹、もう少し落ち着いてくれないか」妹の背中を軽く叩き、髪をそっと撫でた。髪の毛からチューリップの香水の香りが漂ってくる。
「やだやだやだやだ! 久しぶりにお兄ちゃんに会えたのに、一秒だってがまんできないできないできないできないできないできない。もう、どうして昨日帰ってきたのに教えてくれなかったの? 今朝になって使用人から聞いたんだよ!」妹は訴えながら、頭を私の身体にぐりぐりとこすりつけ、甘えまくっていた。
「睡眠の邪魔をしたくなかったんだよ」
「お兄ちゃんに会えるなら、あれは邪魔じゃないの。幸せなお知らせの伝達なの! お兄ちゃんに会えるなら、ずっと起きてたって構わないんだから!」
「さすがにそれは大袈裟だ。寝ないと身体に悪いぞ」
「そこは重要じゃないの! ほら、お兄ちゃん。久しぶりの、ちゅ」
「まだ洗面してないんだが」
「大丈夫だよ! お兄ちゃんの全部が好きなんだもん。洗うって言うなら、可愛い妹が洗浄器具になって、お兄ちゃんの身体の汚れを全部きれいにしてあげるよ!」
「一回だけだぞ。したら洗面に行かせてくれ」
「いいよ。でも洗面が終わったら、もっともっとちゅーしてくれなきゃだめだよ。じゃないと怒るよ、怒るよ、怒るよ、怒るよ、怒るよ」
「わかったわかった」
妹の髪を撫で続けながら、その唇にそっと軽く触れるように口づけ、すぐに離れた。




