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混雑と窒息

「だ、だめだ——」身体の熱暴走のせいで、無意識に独り言が漏れた。手を引き抜こうと必死にもがく。身体を冷静に戻さなければ。


だが血流が速すぎたのか、頭が一瞬ショートした。手のひらが腕より幅広いことを、本能的に忘れていた。——結果、手のひらが姉の胸に真正面からぶつかった。すでに平たく潰れていた胸が衝撃で一気に跳ね返り、蜂蜜ゼリーのように弾んだ。上がり、落ち、完璧な弧を描いて、再び私の肩に叩きつけられた。


「まあ、伯爵殿下ったら大胆」アンシラが私の理性喪失による無意識の所業を目撃し、口を押さえてわざとらしく驚いてみせた。その声に引かれ、チェルシーも顔をこちらに向ける。——姉と、私の頭を挟んで向かい合う形になった。見なくてもわかる。双方の眼差しには敵意が充満している。城壁の上の投石兵が、私の頭を遮蔽物にして互いを狙い撃ちしているようなものだ。


「ちっ。変態。血族姦通者」


「この蛮族が何をでたらめ言ってるの? 姉と弟の愛と結びつきは神聖で高貴なものよ。古代に聖タク帝国と肩を並べたサカイル帝国では、皇族は血統の高貴さを保つために姉弟や兄妹で婚姻していたの。"聖婚"と呼ばれていたわ」


「だからサカイル帝国はオリエンス人に滅ぼされたのよ。その象徴たる聖火まで封印されて」


「ああ、早く寝たい。用事が済んだら帝都に戻らなきゃならない」


「え、帰ってきたばかりなのにもう行くの? お姉ちゃんはどうなるの?」


「伯爵殿下はお忙しいですねえ。両殿下とも伯爵殿下をお待ちでいらっしゃいますのに、もうお発ちですか」


「私をここに一人で置き去りにする気?」


「それは仕方ないだろう。帝都であれだけ時間をかけて築いてきたものを、みすみす手放すわけにはいかない」


「でしたら殿下、早くお添い寝のお相手をお決めになるべきでは? お選びになれないのでしたら、いっそアンシラを——あっ! セリン殿下のお目が怖い。冗談でございます」


アンシラが相変わらず火に油を注いでいる。本当にこれまで甘やかしすぎたのではないかと疑い始めた。数日ほど地下牢に放り込んで、伯爵の威厳というものを思い知らせるべきか。


「添い寝だと。俺は一人で寝るのが危ないと言ってるだけだ。刺客を送り込まれたらどうする」


「それならご安心を。お姉ちゃんは部外者が弟に触れるのは大嫌いだけど、弟の気性はよく心得ているの。本気で逆らえば弟は容赦しない。あなたもわかってるでしょう?」


「もちろん。帝都で処刑される人を何人も見たわ。父の意向によるものも少なくなかったけど、独断で行ったものも少なくはなかった」


「わかってるなら、弟にまとわりつかないで。客間を用意させるから」


「だめ。絶対にだめ」チェルシーも身を傾けて私にしがみつく。顎を肩に乗せ、柔らかな胸を腕に押しつけた。


「ああ、もうたくさんだ。アンシラ、君の提案がいいと思えてきた。君と一緒に——」


「ええええ、伯爵殿下。アンシラが悪うございました。その言葉、お取り消しくださいませ。せめて公の場では仰らないで。セリン殿下がまたこちらを見ておられます、怖い。アンシラは耐えられません。失礼いたします、扉の外におりますので、ご用がございましたらお呼びくださいませ」


アンシラが狼狽しながら駆け出し、扉を閉めた。


「一緒に寝ればいいだろう。戦場では寝間着に着替えずに寝るのに慣れてる。姉さんだって、さっき俺が頭痛だから今日は大目に見ると言ったじゃないか。なら俺の言う通りにしてくれ。さもなければ出ていけ。二人とも。文書をもっと精査したい」


そう言いながら身体を左右にくねらせ、操り人形のように少しずつ書き物机の椅子へと移動していった。チェルシーと姉を両脇に引きずりながら。


「今回だけ弟に譲ってあげる。でも明日は覚悟しておいてね。欲張りはよくないわよ」


姉がそう言いながら、私の耳にふっと息を吹きかけた。温かい吐息が耳殻を伝って脳に届き、神経を刺激する。身体がびくりと震えた。


チェルシーは無言だった。賛成も反対もしない。アンシラが再び呼ばれて戻ってきて、姉とチェルシーを一つの部屋に案内した。壁には私が幼い頃に描いた油絵が掛かっている。寝台は広く、三人が横になれるだけの幅があった。衣服も着替えず、異様な姿勢のまま横になり、そのまま眠りに落ちた。真ん中に挟まれた私に訪れたのは、ただただ窮屈な圧迫感だけだった。


——


「息が……苦しい」


同じくらいの体格の子どもとはいえ、エダの抱擁はあまりに強く、呼吸ができなくなっていた。全身をよじり、声を振り絞って助けを求める。


「もう十分よ、エダ妹。これ以上抱きしめたら、アンビティ弟が窒息しちゃう」


聖女の言葉を聞いて、ようやくエダが腕を解いた。解放された私は、貪るように空気を吸い込んだ。


「お姉ちゃんがむやみに擽ったせいでこうなったんだから、お詫びに霊の話はいったんやめて。ゴシップでもしましょうか」


「ゴシップ?」


「そう。このゴシップっていうのはね——女神様がアンビティ弟のこと、とっても好きなの。ちょっと好きすぎるくらいに」


「僕と女神に何の関係があるんですか。それに女神の話題って、気軽にしていいものなんですか」こんな露骨な話題転換には呆れるしかなかった。首を傾げながら、子ども騙しの作り話と冗談にしか思えなかった。


「いずれわかるわ。とにかくね、話をまとめると——大封印戦も暗黒時代の大崩壊も、霊がある臨界点まで蓄積した結果の爆発なの。霊は蓄積する性質を持つ。でもそれでも、霊は無から生じることはできないし、絶えず消耗もしている。霊がどれほど強かろうと、軍隊には敵わない。アンビティ弟はそれだけ覚えておけばいい。——さて、この後ちょっとだけお姉ちゃんと二人で来てくれる? 一つ誓いを立ててほしいの」


「誓い?」


「女神のお望みよ。お姉ちゃんの意思じゃないから」


「変なことを誓わされたりしないだろうな」


「しないわよ。あなたが何か言う必要すらないの。目を閉じるだけ。女神が導いてくれるから」


「わ、私も一緒に行きたい」聖女が私を連れていこうとするのを見て、エダが小走りで駆け寄ってきた。


「それはだめね。でもお姉ちゃん、すぐに戻ると誓うわ。それにエダ妹、後で絶対気に入るから。じゃないと、教会にいる間にアンビティ弟に子孫ができちゃうかもしれないわよ? 追いつくためにも、ね」


「だからその——僕は唯一の跡継ぎなんです。教会に引きずり込もうとしないでください」


「だから違うって言ってるでしょう。お姉ちゃん、女神の御名に誓って約束するわ。何も言わなくていいの。目を閉じるだけ」


「なら本当に何も言いませんよ」


こうして私は聖女に連れられ、一体の彫像の前に立った。聖女の指示に従い、口と目を閉じて祈る。——その後に何が起きたのか、はっきりとは覚えていない。覚えているのは、まばゆい光が閉じた目の裏を満たしたこと。おぼろげな輪郭。まるで現実の世界から切り離され、もう一つの世界に足を踏み入れたかのような——そんな感覚だけだった。

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