フェルナンド
その日の昼の休憩時間。
人気のない菜園の木陰で食事を終えたリューリクが休んでいるところに、フェルナンドがやってきた。
「よくわかったね」
笑って顔を上げたリューリクは、フェルナンドを見上げる。
「草木の多いところが昔から好きだろう」
そう答えたリューリクの隣に腰を下ろしたフェルナンドとは、リューリクが離宮で暮らしていたころからの顔見知りだ。
王宮で顔を合わせたことのあるリューリクが家名も名乗らず、身分も明かさぬまま魔術学院にいても何も聞かず、サボりの手伝いもしてくれるいい奴だ。
「踊り子はいつがいいの」
講義での口約束のことをリューリクは尋ねた。
「次の休暇日がいいな」
「3日後じゃん」
「予定あるの?」
「いいよ、3日後。僕の外出許可、取ってきてよね」
外出許可は前日までに申請をすれば取ることができるが、教員から評判の悪いリューリクがそのまま出しても素直に通るとは思えない。
ここは貴族様の権威でフェルナンドに取ってきてもらおうと思ったのだ。
「ん、任せなよ」
フェルナンドは領主を務める公爵家の三男で、高位貴族にあたる。
いくら実力主義の魔術学院とはいえ、身分制度が強くあるアルタリア国においてフェルナンドの持つ貴族という身分は無視できない要素だ。
現在、リューリクの立場は微妙なものとなっている。
アルタリア王が宣戦布告もなく王配である父を殺し、その圧倒的な武力の前で降伏の他に術のなかった故国は属国となった。その国の女王であったリューリクの母は強引に側妃として帝国に連れられ、属国の王家の血を引くリューリクは母が側妃となった際に、なぜかアルタリア国の第7王子としての身分を与えられ、王位継承権のない属国の血を引く王子として離宮に留め置かれた。恐らく、母への質のようなつもりだったのだろう。
一体何がそうさせたのか。
アルタリア国の王の母への執着は、子どものリューリクから見ても恐ろしいものだった。
けれど、母を側妃として迎えて数年後。
壊れた母を王は捨てたのだ。
15になったリューリクは魔術学院へと押し込められ、卒業するまでの3年間が与えられた猶予期間だと悟った。
恐らく、この3年でアルタリア国から逃げ出す算段を立てなければ、母も自分も、命はないだろうと。
ーーーーー
父に連れられた王宮で、僕は美しいものを見た。
お前と歳の近い王子がいるから一度会っておけと、朝食の席で数日後の日程を告げた父に、母が表情を曇らせたのを覚えている。
「この子はまだ9つですよ」
通常、王宮への入城が許可されるのは10を超えてからという慣例があるが、それを気にしてのことではないと幼いフェルナンドにはうっすらとわかっていた。
アルタリア王は正妃の他に側妃を複数娶っており、王子王女も多くいる。
政治の争いにフェルナンドを巻き込みたくないというのが母の本音だったのだろう。
「文官にとお願いしましたのに、アドルフォもエステバンも、軍属にお入れになって」
上二人の兄の名を口にして、キッと母は父を睨みつける。
「本人らの希望だ」
「アドルフォは順調に昇進してしまったではないですかっ!」
「侯爵家の嫡男だ。前線には行かせない」
「当たり前です!」
それから母は、父との会話を拒否している。
今の王は好戦的で、即位してから5つの国を属国化している。
軍属になれば王の号令で他国へ攻め入り、命の危険が高い場面も多くなる。
母は兄二人の行く末を心配しているのだ。
王宮に向かうフェルナンドを見送りに来た母は、フェルナンドをしかと抱きしめ、「あなたはレティス家の者ですからね。たいていのことは許されます。嫌なことがあれば走って逃げて、帰っておいでなさいね」と言い、父のことはまるでいないもののように終始扱っていた。
馬車の中で父が肩を落としていたので、見かねて母が行きたいと言っていた観劇の題材を教えておいた。
王宮への訪問は何事もなく終わり、そのまま父はフェルナンドを連れ帰ろうとしたが、高官たちに父が呼び止められてしまった。
急を要する雰囲気だったため、フェルナンドは気を利かせて王宮の庭が見たいと言ってその場を離れた。
父が呼び止められたのは大きな庭園の近くだったので、フェルナンドはそのまま、その庭園へ足を踏み入れた。
整えられた植木はどれもフェルナンドの背よりも高く、見慣れぬ庭園はフェルナンドの冒険心をくすぐった。奥へ奥へと進んでいく中で、フェルナンドは不思議な魔力を視た。
どうにも気になり、その魔力の方へ向かっていくと、植木の影に隠れるような場所にたどり着く。そこには自分とそう歳の変わらない子がいて、自分と同じく親に連れられて来た貴族の子どもだと思った。
けれど、フェルナンドはその子どもに見覚えがなかった。
子ども同士の交流を目的とした場で、自分と同じ高位の貴族の子は一通り面識がある。フェルナンドが知らない顔となると、下位貴族の子どもだろうか。
肩上で切りそろえられた見慣れぬ銀髪が目を引いた。
フェルナンドの気になった不思議な魔力たちは、その子の周りをクルクルと楽しそうに弾けている。
「それ、どうやるの?僕もしたいな」
家庭教師から教わった魔力操作に、そういうのはなかった。
その子はびくりと肩を震わせ、フェルナンドを振り向いた。
翠玉のような瞳だった。
母が見せてくれた宝石箱のどの宝石たちよりも美しい、深い翠玉の色。
瞬間、魔力がパッと弾けて散ってしまう。
「王宮なんて退屈だよね。隠れたくなっちゃうのもわかるよ」
フェルナンドはその子と少し距離を置いて、腰を下ろした。
「僕、フェルナンド。君は?」
その子は一言も声を発さず、ただじっとこちらを見ている。
「魔術が好きなの?僕も好きだよ!同じ手順で陣を描いて、魔力を注ぐだけなのに、人によって全然違う!描く陣の組み合わせ、流す魔力量、ちょっとの違いで差ができるんだ」
ことりと首を傾げたその子の周りで、魔力が舞った。
美しかった。
これまで見たどんな魔力とも比べられない、そういう輝きを放っていた。
魔力の揺らぎで、その子の銀の髪が揺れていた。
「きれいだ」
焼きついたその光景を、フェルナンドはずっと忘れられないでいる。
ーーーーー
約束の休暇日。
フェルナンドに取ってもらった外出許可で、リューリクは外に出た。
昨日の夜、精霊たちに集めさせた噂を頼りに評判だと聞いた踊り子のいる食事処にフェルナンドを案内した。
精霊たちから噂話を集める中で初めて知ったが、踊り子が昼間見れる場所は少ないらしい。
なぜと聞けば、夜の方が酒の入った客たちが多く銭を投げてくれるから稼げるのだと、人の生活に詳しい精霊が教えてくれた。
「砂の民か、珍しい」
異国の衣装に身を包み、楽器の調べに合わせて舞う褐色の肌の踊り子を見たフェルナンドはそう言った。
「わかるの?」
「彼らの魔力の色は特徴的だからな」
「へぇ」
精霊が見えることを隠しているリューリクは、曖昧な返事をしながら踊り子の周りを漂う大地の色をした精霊たちを見て、なるほどと納得した。
この辺りではあまり見ない属性を持った精霊たちが、踊り子の周囲に漂っている。フェルナンドはその精霊たちの魔力を見ているのだろう。
精霊は歌舞音曲が大好きだ。
リューリクの故国には、精霊たちのための歌や踊りが多くあった。
この踊り子の舞もその類だろう。
精霊たちがひどく楽し気だ。
リューリクの周囲にいた精霊たちも、先ほどからそわそわと落ち着かない様子をしている。
目が合った風の精霊に小さく頷き、踊り子の方へと少し魔力を誘導してやると、わっと他の精霊たちも踊り子の周りへと集まっていく。
「ははっ」
思わずといった様子でこぼれたリューリクの笑みを見たフェルナンドは、驚いた。
驚いて、楽し気に踊り子を目で追うリューリクをじっと見ていた。
魔術学院でよく見る、仮面を張り付けたような笑みではない、ごく自然な笑顔だ。
「綺麗だ」
シャラリと踊り子の装身具が音を立てる。
「そうだな」
リューリクは踊り子へ視線を向けたままフェルナンドの言葉に同意して、高位貴族様のお気に召したようで良かったと胸をなでおろす。
運ばれてきた食事も異国の踊り子に合わせてか、異国風のスパイスの効いたものだったが存外美味で、フェルナンドの空になった皿を見るに口にあったようだった。
踊りの後、踊り子の広げた簡易な布袋の中にフェルナンドは気前よく硬貨を数枚投げ入れていた。
食事が終わり店を出ると、「次はどこだい」とフェルナンドは尋ねた。
「解散だよ。旅の踊り子と上手い食事。借りは返せたはずだからね。どこへなりとも行くといいさ」
「リューリクはどこへ?」
「素行不良の僕に与えられた久しぶりの外出日。そりゃあ、思う存分羽を伸ばすつもりだよ」
「私もついてゆく」
「は?」
予定が狂ったとリューリクは肩を落とす。
食事が終われば、あっさりと別れられると思っていたのに。
貴族様の気まぐれはわからないが、小一時間も街を歩けば飽きて帰るだろうとリューリクは考えた。
賑やかな飲食店街を離れ、静かな住宅街を歩いていくリューリクの傍を歩きながら、フェルナンドは物珍しそうに周囲を見渡す。
「こんなところに、リューリクの行きたいところがあるのか?繁華街から離れてしまっているようだが」
「知る人ぞ知るという店は、繁華街にはないからねー」
ひょいと細い路地に入ったリューリクは、ここだよと扉を開いて中へと消えていく。
その扉の周辺も、これといってわかりやすい目印があるわけではなく、周囲の他の扉とそう違いがないように見えた。
続いて扉を開ければ、独特の香りがフェルナンドの鼻を刺激する。
室内の至る所に乾燥した草花が吊り下げられていて、匂いの原因はそれらからだと考えられた。
「連れか、珍しいな」
涼やかな声が店奥からして、長身の男が姿を現す。
金色の髪をサラリと揺らし、濃い緑色の瞳がひたとフェルナンドを見据えた。
男の長耳が目に入り、エルフかと静かに息を呑む。
特徴的な長耳で広く知られるエルフだが、人の生活圏に現れることは稀で謎多き種族とされている。
「ほら、注文の品だ」
エルフから紙袋を受けとったリューリクは、その場で中身を確認して頷く。
「助かるよ」
「次は?」
リューリクはちらりとフェルナンドを気にするように見てから言った。
「まぁ、そのうちに」
「そうか。連れのお方は、何か薬をお求めかい?」
「えっ!」
突然ふられた話題にフェルナンドは素っ頓狂な声をあげてしまう。
「打ち身や切り傷。そういうのに使える軟膏とかがいいな」
代わりにリューリクが答えれば、エルフはいくつもある薬棚の引き出しから小さな薬入れを一つ取り出した。
リューリクは銀貨一枚を置くと、それを受けとる。
「また頼むよ」
店を出ると、リューリクはその小さな薬入れをフェルナンドに押し渡す。
「エルフの薬だからね。よく効くよ」
「ありがとう」
受けとったフェルナンドが銀貨を取り出すと、いいよとリューリクは首を振った。
そのまま歩き出したリューリクをフェルナンドは慌てて追いかける。
「待てっ!受け取れリューリク‼」
掴んだ肩が思いのほか華奢で、その細さにぎょっとしながらも足を止めたリューリクにフェルナンドは言った。
「俺は金に困っていない‼だが、お前は必要だろう!」
リューリクはわずかに瞳を揺らして、その銀貨を受けとった。
「よく、知ってるね。だけど、食事もおごってもらっただろう」
「上手い街の食事を知りたかっただけだ。異国の踊りも見てみたかった。お前と、一緒に」
知らないと、フェルナンドは思った。
王宮の庭で出会ったリューリクが、平民の編入組として魔術学院に通う理由も。
将来が大きく左右されるというのに、わざと不真面目な態度で成績不振を続けている理由も。
リューリクのことなど、何一つ知らない。
知らないけれど、恐らく彼が。
離宮に捕らえられた側妃の、アルタリア国の王家の血を引かぬ連れ子の第七王子であるのだろうと予測している。
複雑な立場である彼の、自由にできる金額はそう多くないのだろう。
魔術学院での振る舞いを見て、フェルナンドは感じている。
「僕と一緒に?」
リューリクが僅かに首を傾げ、さらりと肩先で切り揃えられた銀の髪が滑り落ちる。
「おかしな奴だな」
ふはっ、と小さく笑うリューリクの姿が、フェルナンドには眩しかった。
次にリューリクが向かったのは、鍛冶職人たちの集まる工房近くの魔石屋だった。
貴族や富裕層向けの、宝飾として加工された装飾品を多く取り扱う魔石屋とは大きく雰囲気が異なり、大きさや属性ごとに種類分けされているのであろう魔石たちがゴロゴロと大きな木箱に積まれて置かれている。
店番をしていた見習いであろう少年はリューリクに気づくと、パッと表情を明るくした。
「リューリクさんっ!いつもの用意できていますよ‼」
タッと店奥に駆けて行った少年が抱えて持ってきたのは、一抱え程の木箱。
少年が蓋を開けると、そこには小さな粒のようなサイズの魔石たちがぎっしりと詰まっている。
「なんだそれは」
使い道のわからないほど小さな魔石にフェルナンドが首を傾げると、少年が答える。
「クズ魔石ですよ。うちでは魔石の加工も行ってるんですが、そうした時にどうしてもこういうものが出来てしまうんです。誰も欲しがる人なんていないんですが、リューリクさんは欲しいとおっしゃって、定期的に引き取って下さるんですよ」
リューリクは銅貨を数枚置いて、蓋を閉めて木箱を受けとる。
「安価な値段で買わせてもらって、助かっている」
店を出たリューリクからひょいとクズ魔石の詰まった木箱を奪い取ったフェルナンドは眉をしかめる。
「重いぞ」
「クズ魔石とはいえ、量があるからね。持ってくれるの?」
フェルナンドは先ほど触れたリューリクの細い肩を思い浮かべた。
「痩せすぎじゃないか?もっと食べろ。それで、次はどこに行く」
ここまできたからには、最後まで付き合ってもらうかとリューリクは腹を決めた。
「花屋」
言葉通りリューリクは、王都の中心に近い通りで花屋に寄って、花を買った。
青い色の花ばかりを揃えた小さな花束を抱えたリューリクを見て、フェルナンドは首を傾げる。
「青が好きなのか?」
「わからない。ただ、瞳の色と同じだから」
そう言うリューリクの瞳の色は翠玉だ。だからきっと、送る相手の瞳のことだろう。
「魔石も、その青い瞳の人に?」
リューリクは少し黙って、首を振った。
「……いや、僕に必要なんだ」
賑やかな通りからまたすこし離れた、小さな家の前でリューリクは足を止めた。
「お茶くらいは出すよ」
そう言って中に入ったリューリクの後に続いて、フェルナンドも中に入る。
「魔石はどこに?」
「そこらに置いといてくれれば助かるよ」
答えたリューリクに、入ってすぐのところのテーブルセットの椅子に促され、フェルナンドは魔石をその近くに置いて腰を掛けた。
お湯を沸かし、手慣れた様子でお茶の準備を進めたリューリクは、フェルナンドの前に琥珀色の液体を注いだカップをコトリと置いた。
フェルナンドの向かいに座り、同じように入れた自分のカップに口をつける。
「安いものだけどね。毒は入れていないよ」
高位貴族である自分に、気を使ってくれたのだとわかった。
カップの水面から漂う魔力の揺らめきに気づいたフェルナンドは、気づいていないのだろうなと思いながら、カップに口をつける。
魔術学院でリューリクの調理した食事を初めて目にした時、その食事に残る魔力の揺らめきにフェルナンドは驚いた。
よほど魔力の扱いに長けた者か、魔力との親和力が高い者でなければ、無機物に魔力を纏わせることは難しい。
調理の様子を何度かじっと観察したり、それとなく探りを入れてみたけれど、どうやら自覚がないようだったため、おそらく後者の、魔力との親和力がとても高いのだろう。
彼の魔力との親和力をもってすれば、きっと杖などなくても魔術を行使できる。
リューリクは謎が多い。
口数が多い方ではないが、他愛のない雑談もし、笑いもする。
だが自分のことは語らず、魔術学院の誰とも一定の距離を保っている。
そんな印象がある。
けれど、フェルナンドに対しては少し距離を許してくれているような気がする。
サボりの手伝いだとか、講義に関する問いだとか。
フェルナンドが一人でいる時を見計らって、声をかけてくる。
リューリクがそうして声をかけてくるたび、フェルナンドは聞いてしまいたくなる。
気になってることを全部、聞いてしまいたくなる。
けれど、そうしてしまえば。
二度とリューリクは自分に声をかけなくなるような気がして。
何も聞かないように。
聞いてしまわないように。
リューリクへの疑問を見つける度にそれから目をそらす癖をつけた。
短く切り落とされた、リューリクの銀の髪がさらりと揺れる。
アルタリア国では珍しい色の髪だ。
魔術学院でリューリクが浮いているのは、なにも彼の不真面目な態度や芳しくない成績のせいだけではない。
―美しすぎるのだ。
細く絹のような銀の髪。
その長く伸びすぎた前髪からちらりと覗く、翠玉の瞳。
整った顔の造形は、まだ幼さを残しながらも物語に出てくる精霊を彷彿とさせるような容貌で、細身の身体から伸びる手足は雪のように白い。
同じように訓練着を着て、汗や泥に汚れようと、数多いる生徒の中でリューリクの周りだけ薄ぼんやりと光って見える。
「ここ、君の家?」
美しい所作でティーカップを口に運ぶリューリクを眺めながら、フェルナンドは尋ねた。
リューリクはゆるりと首を振る。
「とある方が、こっそりと貸してくれたんだ。休暇の時に使えばいいって。ご存知の通り、素行不良の私が得られる休暇は少なくて、あまり使えていないのだけど」
「講師陣は実力を重視するから、魔術の下手なふりをやめればすぐにでも外出許可は取れるようになるさ」
「あらら、バレてた?」
「魔力操作が上手くて魔術が下手なやつはいない」
「えー、魔力操作なんか見せたっけなぁ」
「初めて会った時、それはもう見事な魔力操作をしていただろう」
王宮での話だとリューリクは気づいた。
あれは離宮を抜け出して、精霊たちに道を聞こうとしていた時のことだった。
人に見つかり、随分と焦ったのを覚えている。
「そんな子供の頃の話、もってくるー?」
「数年前の話でしょ」
それほど前ではないとフェルナンドは思った。
「そろそろ寮の門限だけど、その魔石は置いていくのか?」
「あぁ、門限」
リューリクは些細なことだとでもいうようにそう言った。
「僕は明日帰るから、フェルナンドは先に帰っていてよ」
「門限破りは厳罰ものだぞ」
フェルナンドは眉をひそめる。
「今までバレたことは一度もないよ」
悪い顔をして、リューリクは小さく笑った。




