最高の伝説
瘴気をまとったゴンゾウは、もはやかつての彼ではない。目に映るもの全てが、彼にとっての破壊の対象だ。さっそく、彼はヒロトとカムイを軽々と振り払い、衝撃波のような瘴気を放った。それを一身に浴びたリリカたちは、後方へと飛ばされてしまう。そればかりか、瘴気は彼女たちに巻き付き、その身を著しく蝕んでいく。吐血したリリカは三点着地し、それから勢いよく飛び出した。彼女の右手に生み出されたモーニングスターは、凄まじい勢いで眼前の宿敵に鉄球を叩きつけた。それに続き、カムイもゴンゾウに取り憑いたファントムに俊敏な斬撃を浴びせる。その傍らで、ヒロトも次々と大爆発を起こしていく。それでもなお、三人の力はファントムに通用していない有り様だった。
「ゴンゾウと同化しただけのことはある。このファントム……強すぎる!」
「だ、だけど、コイツを倒せば、全てに、決着がつく!」
「僕たちの未来は目の前ですよ、リリカさん!」
少なくとも、彼女たちはやる気に満ち溢れている。高ぶる感情により、彼女たちの魔力もかなり強力なものとなっている。されど相手は、あのゴンゾウの主体性から生まれたファントムだ。それは決して、そう容易に倒せる相手ではない。
「そこだ!」
隙を見いだしたと感じたリリカは、己の手元に巨大なハンマーを生み出した。そのハンマーを思い切り叩きつけられたゴンゾウは、更なる瘴気の衝撃波を起こす。一発、二発、そして三発――その衝撃波は、リリカたちの身を着実に削っていった。このままでは、彼女たちに勝算はない。さりとて、三人は退路を断たれた状況である。
「せっかくここまで来たんだ! 後はもう、突っ走るしかねぇだろうよぉ!」
叫び声をあげたリリカは機関銃を生み出し、一心不乱に乱射した。
「お、俺たちは、退かない!」
ヒロトは何発もの爆発を起こし、ゴンゾウを退けた。
「僕たちは、あなたを倒して、生きて帰るんです!」
そう叫んだカムイは、稲妻の如し剣術を繰り出した。
リリカたちの攻撃を受け、ゴンゾウの動きは着実に鈍り始めている。今の三人は、まだ弱かった頃の三人ではない。数多の修羅場を潜り抜け、デシヴィラに仇を成し、選民会の幹部すらも打ち破った彼女たちは、百戦錬磨の戦士たちだ。
「見てるか、ライム! オレは今、最っ高に楽しんでるぜ! 最高の仲間に囲まれて、最高の自分になって、そして最高の伝説を残そうとしてるんだ!」
この喧騒の中でも、リリカは親友の名を口にした。それほどまでに、譜割ライムという少女は彼女にとって思い入れのある人物であった。その横で、ヒロトも声を荒げる。
「お、親父! 俺は今、う、宇宙一カッコイイ連中と、一緒に、戦っている! 親父の想いは、俺の中で、生きている!」
思えば、彼もまた、選民会のせいで実父を失った身の上であった。そんな彼に続いて大声をあげるのは、カムイだ。
「お母さん! お父さん! 故郷の皆さん! 僕たちは、必ず、あなたたちの無念を晴らします!」
この三人のうちのそれぞれが、各々の想いを背負って戦っている。同時に、彼女たち自身も結束しているのだ。
カムイは閃光のような斬撃により、ゴンゾウの動きを止めた。その隙に、ヒロトは彼の顔面に飛び蹴りを食らわせた。そうして生まれた隙を突き、リリカは太刀を構えながら跳躍する。
「やっぱカッケェじゃん、オレたち!」
得意気にそう言い放った彼女は、太刀を勢いよく振り降ろした。ゴンゾウの体は眩い光を放ち、そして勢いよく爆発した。そして砂煙が宙に消え去った時、そこには瘴気を失ったゴンゾウの姿があった。
今度こそ、リリカ一行の勝利である。
その場に、何者かの拍手が響き渡った。リリカたちが目を遣った先にいたのは、ヒズミであった。




