決着をつける時
翌日、リリカ一行はマザー・セラフの前に赴いた。彼女たちがここに来た理由はただ一つだ。
「今の敵は戒場ゴンゾウ一人だけだ。ここで奴を仕留めて、ヒズミに関する情報を聞き出すぞ」
作戦を口にしたリリカは、闘志に満ち溢れた目をしていた。当然、ヒロトとカムイもやる気に満ちている。
「そ、そして、全てに、決着を、つ、つけよう」
「そうですね。今日をもって、マザー・セラフを破壊しましょう」
選民会の幹部たちを倒した三人であれば、あのゴンゾウにも勝てるかも知れない。更にリリカたちには、まだ仲間がいる。
「ワガハイたちのことも忘れてもらったら困るのであぁる!」
突如、その場に聞き慣れた声がこだました。姿を現したのは、エテコー団の三人組だ。彼らも今や、リリカの信頼を買っている身だ。
「忘れてねぇよ。オレたちで、ゴンゾウを倒すぞ」
そう呟いた彼女は、エテコー団の三人に笑みを見せた。
ついに、全ての元凶と決着をつける時がきた。
空は雷雨に覆われ始め、強風が吹き荒れる。その場に姿を現したのは、彼女たちの共通の敵だ。
「……始めようか」
戒場ゴンゾウの登場だ。彼は地面に杖を突き、無数の霊獣を街に振りまいた。そこでリリカは、ミルシーたちに指示を下す。
「エテコー団。アンタらは、街の皆を避難させてくれ。この場は、オレたちに任せろ!」
その指示に、エテコー団の三人は即座に頷く。
「任せたのであぁる!」
「こんな相手に負けてはいけませんわ!」
「必ず、生きて帰って来いよ!」
そう言い残した三人は、その場から走り去っていった。彼らはこれから、霊獣を狩りながら市民を守ることとなる。
残されたリリカたちは、一斉にゴンゾウを睨みつける。リリカは太刀を、カムイは大剣を携えており、ヒロトは爆炎を身にまとっている。
ゴンゾウは言う。
「まだ私に歯向かおうとは、君たちは選民に相応しくない愚か者だな」
相も変わらず、この男は選民思想に取り憑かれていた。一方で、リリカの強気な態度も俄然変わらない。
「誰に選ばれる必要なんかねぇ。オレはオレの生き様を貫く。誰にも縛られず、己の信じる道を突っ走る――それが、主体性を持つということだ!」
声を張り上げた彼女は、太刀を振りながら間合いを詰めた。ゴンゾウは斬撃を杖で受け止め、そして振り払う。直後、カラス型の霊獣が何体も生み出され、リリカの身をめがけて一斉に突進していった。その最中にも、リリカ一行の攻撃の手は止まらない。ヒロトは拳を突き出し、カムイは大剣を振り降ろした。無論、彼らの攻撃も、杖によって受け止められてしまう。それからゴンゾウは黒い電流を放ち、二人の全身を深く傷つけた。その傍らで立ち上がったリリカは、再び太刀を振り回す。一心不乱に繰り出される剣術は、標的を徐々に退けた。されど、ゴンゾウも防戦一方ではない。
「君の主体性など、無価値だ。君は、主体性を持つに値しない人間だ!」
彼は杖を振り下ろし、妖しい光を帯びた魔力を放った。直後、リリカの身には、ノイズが走り始める。
「オレの体に、ファントムを……!」
「曲乃リリカ! 君は正義のために私に打ち勝とうと思っていたようだがね、私にも私の背負う正義があるのだよ! 理想のための礎となれ! 君が君であることを失うのは、世界のためなのだ!」
「ゼェ……ゼェ……マズいな。意識が、遠のいてきやがる……」
このままでは、彼女は主体性を失うこととなる。そうなった場合、ヒロトとカムイは彼女を殺さなければならない。
「リリカ!」
「リリカさん!」
二人は叫んだ。それでも、リリカの体の節々には依然としてノイズが走っている。その上、彼女の目は徐々に虚ろになっているのだ。
「ヒロト、カムイ。ごめんな……」
そう呟いたリリカは、自嘲的な笑みを浮かべていた。




