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孤独

 同じころ、三階では、リリカとサダメが対面していた。まともな対話など期待できないとわかっているリリカは、すでに火炎放射器を構えている。

「いい加減、アンタの暴言にもウンザリしてきたところだ。今日は、アンタとのケリをつけにきた」

「マジウケる! アンタは自分を省みるんじゃなくて、不都合なことを言ってくる相手を排除するんだね! 痛みを知るだけで自動的に強くなれるわけじゃないけどさぁ、痛みに対する逃げ癖がついている奴は何者にもなれないんだよ?」

「オレはもう逃げねぇ。だが、命を取るつもりもねぇ。アンタらは、ヒズミの正体を知っている……そうだろ?」

 じりじりと間合いを詰めつつ、彼女は呼吸を整える。宿敵を目の前にすれば、ほんの一瞬でも気を抜くわけにはいかない。そんな彼女を嘲るように笑いつつ、サダメも己の手に骨の刀を生成する。


――戦闘開始だ。


 サダメはいつものように、その場に細胞の粉末を振り撒いた。一方のリリカは、火炎放射器によって粉末を焼き払う。直後、彼女は距離を詰められ、脇腹に切り傷を刻まれた。咄嗟の判断により、リリカは手元に太刀を作り出す。彼女はそれを振り上げたが、その斬撃を難なくかわされてしまう。それから二人は、一心不乱に己の武器を振り回していった。その場には、刀身のぶつかり合う音がしきりに奏でられていく。激しい戦闘を繰り広げつつも、彼女たちは話を続ける。

「ヒズミの正体……ねぇ。アンタ、人の心配をしている場合じゃないよね? アンタが己に求める理想像は曖昧で、それは世間知らずな男児が幼稚な感性で思い描くようなヒーローの真似事で、そのクセ実際のアンタは、脆くて滑稽でただただ要領が悪いんだよ?」

「案ずるな。その『幼稚な感性で思い描かれたヒーロー』は、今からアンタのような捻くれた冷笑女をズタボロにするからな」

「マジウケる! やっぱりアンタは、自分が正しいという考えを相手に押し付けないと気が済まない性分なんだね! 仲間に対しても、ウチらに対してもさぁ、アンタって何かしら『認められること』に飢えてるもんねぇ!」

 相も変わらず、サダメの言動は攻撃的だ。紡がれる言葉の一つ一つが、リリカの心を突き刺していく。それでも、リリカは攻撃の手を止めない。両者ともに、俊敏かつ精密な剣術を繰り出している最中だ。


 やがて二人は、出血と消耗によって息を切らし始めた。無論、先に隙を見せたほうが敗れることとなるのは火を見るよりも明らかだ。依然として嘲笑を浮かべている宿敵に対し、リリカは哀れみの目を向ける。

「サダメ。オレは、アンタにはねぇモンに恵まれている。家族だ。ヒロトも、カムイも、オレの誇りだ」

「それがどうしたの? 弱者にしか相手にされない奴ら同士が、社会の余りもの同士が、成り行きで互いを慰め合っているだけじゃん!」

「アンタにはそう見えるだろうな。だけど……オレも、独りだった。親友が消えちまってから、ずっと、オレは孤独という痛みを誤魔化しながら生きてきた」

 そんな境遇を語った彼女は、陰りのある表情をしていた。しかし彼女の過去は、すでに把握されているものでもある。

「だからなんなの?」

 そう訊ねたサダメは、怪訝な顔で己の肉体を回復させた。



 直後、彼女の足元から、凄まじい爆炎が舞い上がった。



 もちろん、これはリリカが仕掛けた地雷による爆発だ。膝から崩れ落ちたサダメは、眼前の勝者を睨みつける。そんな彼女に対し、リリカは言う。

「サダメ。オレは、アンタを許すことにする」

「……は、はぁ?」

「だって、アンタは孤独じゃねぇか。温もりを知らねぇ奴がいるなら、オレが何度だって教えてやる。温もりの要らねぇ人間なんか、どこにもいねぇ」

 そう囁いたリリカは、サダメの身を抱き寄せた。

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