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残酷な真実

 あれからファントムを殲滅したリリカは、塔の破壊を試みた。しかし彼女が何度爆撃しても、塔はすぐに再生してしまう。何やらマザー・セラフの魔力の拡散を止めるには、特殊な手順が要るらしい。

「ちっ……対策済みか」

 このままでは、何の成果も得られない。されど、これ以上無駄な労力を費やすべきでもない。彼女は北の塔に背を向け、その場を去ろうとした。


 その時、リリカの目に、一人の少女の姿が飛び込んできた。

「マジウケる! 屋敷の件で正面突破が通用しなかったから、今度は中継機から壊そうと思ったの? アプローチを変えたところで、アンタ自身が弱いままだったら何にもならないじゃん!」

 サダメの登場だ。今度こそ、この少女の言葉に屈しない――リリカはそう心に決める。

「ご挨拶だな。オレがいつまでも弱いままだと思うなよ?」

 そう切り返した彼女は、睨みを利かせた目をしながら太刀を突き立てた。一方で、サダメは依然として挑発的な笑みを浮かべている。

「アンタは過去に縛られている。今アンタが家族と呼んでいる二人も、所詮は過去に空いた穴の埋め合わせでしかないんだよ!」

「違う! 確かにオレはアイツらを家族だと思っているけどなぁ! だからといって、アイツらをライムの代わりだと思ったことは一度もねぇ! ライムも、アイツらも、替えの効く存在じゃねぇんだよ!」

「そうやって己を欺いたところで、真実は何も変わらないよ。アンタの自己愛も、アンタらの絆も、そしてウチらに対する敵対心も、全部が全部、アンタの痛みを誤魔化すためにあるんだよ!」

 相も変わらず、彼女はリリカを嘲っていた。やはりこの少女と分かり合うことはままならないだろう。リリカは間合いを詰め、太刀を勢いよく振り上げた。サダメの身には深い切り傷が刻まれたが、すぐに回復してしまう。サダメは人体錬成の魔術により、骨の刀を作り出す。彼女がそれを振るや否や、今度はリリカの身に切り傷が刻まれた。そしてその切り傷には、サダメの放った細胞の粉末が侵入していく。当然、体の拒絶反応により発熱したリリカは、息を荒げるばかりである。それでも、彼女に立ち止まっている暇などない。

「オレのことはいいなんて、そんな弱気なことは言わねぇ。オレのことも、オレの家族のことも馬鹿にするんじゃねぇ!」

 それが彼女の叫びだった。彼女は一定の間合いを保ちつつ、一心不乱に太刀を振り回す。彼女の太刀と標的の骨の刀は、火花を散らしながら勢いよくぶつかり合う。無論、先程細胞の粉末を散布されたリリカは、徐々にその意識が薄れている現状にある。そんな彼女の心を、サダメの言葉が揺さぶる。

「ライムがどこにいるか……ウチらは、それを知ってるんだよねぇ」

「なっ……なんだと……!」

「だけど、アンタには教えてあげない! ウチは優しいからね……残酷な真実でアンタを傷つけたくはないんだ!」

 当然、その発言は、リリカの逆鱗に触れる。

「残酷な真実でオレを傷つけたくねぇだと? どの口で言ってんだ! この性悪女!」

「あはは! マジウケる! アンタ、今、ウチの言葉で自分が傷ついたことを認めたね! 傷つけちゃってごめんねぇ! あははは!」

「ああ、傷ついたさ! だけどオレは、その傷を乗り越える!」

 少なくとも、彼女はもう己の弱さを否定しない。相手に何を言われようと、彼女は決して折れはしないのだ。


 しかし口論の内容がどうであれ、戦闘能力の格差は段違いだ。サダメが依然として無傷であるのに対し、リリカはもう満身創痍の有り様だ。

「ここは一旦、退くしかねぇな。アイツらは、オレの帰りを待っている!」

 ここで撤退しなければ、彼女は命を散らすこととなるだろう。それを理解していた彼女は発煙筒を生み出し、煙に身を隠しながらその場を去った。

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