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四つの塔

 東の塔に赴いたのは、リリカだ。彼女を待ち受けていたのは、瘴気をまとった集団だ。無論、今回の戦いは今までとは違う。

「コイツらも……主体性を失うのか……!」

 そう――今までの彼女は、ファントムの正体を知らないまま戦ってきた身の上だ。一方で、今の彼女は、眼前の大群と戦うことの意味を知っている。それでも、人的被害を最小限に抑えるには、戦うしかないだろう。

「ためらうな……オレ! コイツらは……どのみち助からねぇんだ!」

 そう叫んだリリカは、手元に太刀を生み出した。彼女はそれを振り回し、次々と依り代たちを抜け殻に変えていく。当然、他者の主体性を破壊することは、彼女自身の望んでいることではない。されど、彼女に選択権などないのだ。この時、彼女は親友のライムのことを考えていた。否、彼女は気を紛らわそうとしていた。望まぬ闘争にその身を投じなければならない彼女は、太刀を振り回しながらあの歌を歌う。

「空がなぜ青いのかを知りたがっていた僕は今、人がなぜ生きるのかを知りたがっている。星がなぜ光るのかを知りたがっていた僕は今、命が産まれる意味を知りたがっている」

 言うまでもなく、その歌が気休めになるはずはない。リリカ自身も、それをよく理解している。さりとて、彼女に退路などない。



 一方で、西の塔に向かったのは、ヒロトだ。彼の目の前にも、例のごとく依り代が集っていた。

「お、俺は……俺は今から、こ、コイツらから、奪わなければ、ならない。人間を、人間、たらしめるものを!」

 この時、彼はあの出来事を思い出していた。


「お前なんか、死ねばいい!」


 あの一言で、彼は元依り代の命を奪った。その過去は、決して変えることのできないものだ。そんな十字架を背負いながらも、ヒロトは戦闘を迫られている。

「こ、こうなれば、や、ヤケクソだ!」

 覚悟を決めた彼は、一心不乱に体術を繰り出した。その拳や爪先は勢いよく爆発し、眼前の標的たちを次々と退けていく。無論、その最中にも、ヒロトは葛藤から逃れることができない。

「ああ、クソッ……! せ、選民会の、せいで! 俺の、人生は、め、めちゃくちゃだ!」

 彼の言葉は切実だった。事実、彼の味わってきたあらゆる苦難の背景は、選民会の存在があった。そんな彼の体術により、依り代たちは次々とその場に崩れ落ちていった。当然、彼らはファントムから解放されるや否や、主体性を喪失する。その光景を前にして、ヒロトは固唾を呑むばかりであった。



 その頃、南の塔では、カムイが依り代の大群の相手をしていた。当然ながら、彼女の心にも迷いはある。

「残酷すぎます。選民会が直接手を下すのではなく、僕たちが彼らを壊さなければならないなんて……!」

 そうは言ったものの、彼女も理解している。ここでファントムを倒す以外に、選択肢などない。カムイは集団の動きを感知し、いつものように俊敏な動きを見せた。彼女の剣術により、標的は次々と切り倒されていく。同時に、それは彼女自身の心にも深い傷を負わせるものであった。



 残る北の塔にいるのは、エテコー団の三人だ。彼らは連携を取り、標的の五感を欺きながら体術を繰り出していく。もちろん、彼らも今やファントムの正体を知っている。だからこそ、彼らは戦わなければならない。

「依り代になってしまったものはどうしようもないのであぁる! だから、せめて楽にしてやるしかないのであぁる!」

 覚悟は決まった。ミルシーは胴回し回転蹴りをお見舞いし、標的たちを一網打尽にしていく。その傍らで、キクヒュアとユウセイも大群を相手にしている。

「悲しいことですわ! 奪わなければ、守れないものがあるなんて!」

「オミャーらに罪はないけど、だけど……!」

 この二人もまた、自らの行いに疑問を抱くばかりであった。

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