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我らエテコー団、ただいま参上!

 そして現在――自らの過去を語り終えたミルシーは、半ば息が上がりかけていた。彼らにとって、過去の痛みとは自己同一性に等しいものなのだ。

「……ゆえに、ワガハイは心の傷を軽んじないのであぁる! それがリリカどもの過去であっても、弄ぶわけにはいかないのであぁる!」

 声を張り上げたミルシーは、真剣な顔つきをしていた。その真っ直ぐな眼差しには、一切の曇りがない。見上げた信念を前にして、ゴンゾウは拍手を送る。しかしその仕草には、まるで感情がこもっていなかった。

「見事だな。確かに、君は痛みを背負い、そして他者が心に負っている傷を重んじることができる」

「当然であぁる! 我々エテコー団は、キミには屈しないのであぁる!」

「だが、痛みなど感じない方が幸福だ。そこに疑いの余地はない。今ここで、私が君たちを楽にしてやろう」

 その場に、不穏な空気が立ち込めた。ゴンゾウが杖で地面を突くや否や、エテコー団の三人は苦しみ始めた。そして彼らは、何かに抗っている様子だ。

「何をしたのであるか! 戒場ゴンゾウ!」

「気が遠のきそうですわ!」

「オミャーは一体、オイラたちに何を……!」

 正体不明の力に対し、三人は必死に抵抗の意思を見せる。そんな彼らに背を向け、ゴンゾウは笑う。

「君たちが暴走しても、他の霊媒師がファントムを倒してくれるだろう」

 そう――彼はエテコー団の三人から、主体性を奪うつもりなのだ。

「魔術を解除するのであぁる! 我らのアイデンティティは、そう簡単に奪われていいものではないのであぁる!」

「そうですわ! 痛みを背負ってでも、アタクシたちは己を貫くと決めましたの!」

「そうだ、そうだ! なんの権限があって、オミャーはこんなことをするんだ!」

 三人は口々に反発した。されど、ゴンゾウの心は揺るがない。彼からすれば、この三人は選民に相応しい人材ではないようだ。

「……喧しいな。やはり、弱者が主体性を持つべきではないようだ」

 そんな言葉を吐き捨てた彼は、黒い宝玉を取り出した。そして怒り狂う三人組に構うことなく、彼は煙のようにその場を去った。


 残されたミルシーたちは、意識を集中させた。このままファントムに取り憑かれれば、彼らは主体性を失うこととなる。無論、どんな痛みを背負っていようと、彼らは依り代になることなど望んでいない。

「ワガハイたちが何者であるか! 思い出すのであぁる!」

「アタクシたちは、こんなところで負けるわけにはいきませんわ!」

「オイラたちには……富を勝ち取る権利があるんだ!」

 三人は、円を描くように手をつないだ。この時、彼らの想いは一つだった。さりとて、マザー・セラフの魔力に抗うことは、常人の芸当ではない。当然、三人もそれを理解している。


 ミルシーは声を張り上げる。

「生まれは貧しい未来は眩しい!」

 その後に続き、キクヒュアも叫ぶ。

「明日を信じて今日もゆく!」

 それに続くのは、息を切らしかけているユウセイだ。

「三人揃えば負け知らず!」

 この時、三人の体にはノイズが走り始めていた。そんな状況下でもなお、ミルシーは微笑みを浮かべた。彼は決して、眼前の困難を乗り越えられると確信していたわけではない。ここで笑わなければ、彼は仲間を安心させられないのだ。

「ワガハイはミルシー!」

「アタクシはキクヒュア!」

「オイラ、ユウセイ!」

 ノイズは音を立て、更に勢いを増していく。それでも、この三人は気合いをもってして抵抗する。

「我らエテコー団、ただいま参上!」

 辺り一面に、ミルシーの叫び声が響き渡った。その場は眩い光に包まれ、爆風が吹き抜けた。


 やがて砂嵐が止んだ時、そこには三つの人影が立っていた。

「無事であるか?」

「な、なんとか……耐え抜きましたわ」

「オイラたち、助かったんだ!」

 エテコー団の三人は、無事に自分たちの主体性を守り抜いた。

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