結成
その昔、ミルシーは決して裕福ではなかった。彼は不格好な武器を作ってはそれを売り、日銭を稼いでいた。そんな彼が毎日訪れていたのは、とある霊園だ。そこで彼がいつも目にしていたのは、墓前に花を添えるユウセイの姿であった。いつしか二人は、よく語らい合う仲となった。
「この墓には、ワガハイの妹が眠っているのであぁる! 金のないワガハイには、妹を疫病から救うことができなかったのであぁる!」
「オイラは、友達が亡くなったんだ。オイラがいつも花を供えている墓には、その友達が眠っているんだ」
「やはり親しい人間の死は、つらいものであるな……」
そんな会話を弾ませてきた彼らは、やがて友人と呼べる関係にまでなった。そんな彼らが通っていた場所は、この霊園だけではない。
ミルシーとユウセイは、よく寂れたバーで酒を酌み交わしていた。そのバーで働いていた歌姫は、後に二人の仲間になる女――キクヒュアであった。彼女は決して飛びぬけた歌唱力を持っていたわけではないが、その歌声は貧しかったミルシーたちにとっての癒しであった。
「乾杯であぁる!」
「乾杯!」
「今日も武器は売れなかったのであぁる……」
キクヒュアの歌に聞き入りながら、二人はこの日も酒を飲んでいた。やがてその生活に変化が訪れることは、彼らからしてみれば知る由もないことだ。そんな人生が、死ぬまで続く――ミルシーたちはそう信じて疑わなかった。
ある日、ミルシーはいつものように、バーの近くを横切った。しかしこの日は、いつもと様子が違った。
「お願いしますわ! アタクシにもっと、歌を歌わせて欲しいですわ!」
「お前はもう用済みだ! すでに後釜もいる! これ以上、お前の声に出す金なんかないんだよ!」
「そ、そこをなんとか!」
バーの前では、キクヒュアが店主に懇願していた。彼女は地に膝をつき、何度も頭を下げていた。それでも、店主の考えは変わらない。
「お前を養う義理は、こちらにはないんだ! さぁ、行った行った!」
店主は店内に戻り、扉を閉めた。歌姫として生計を立てていたキクヒュアは、一筋の涙をこぼしている。そんな彼女を励ますのは、ミルシーだ。
「ワガハイは好きだったであぁる! キミの歌が!」
無論、今更たった一人の人間に評価されたところで、キクヒュアが生業を失ったことに変わりはない。
「もう何もかも遅いですわ。アタクシに未来なんてありませんの」
そう呟いた彼女は、陰りのある愛想笑いを浮かべていた。しかしその頬には、涙が伝っている。その有り様を見れば、彼女が傷心していることは火を見るよりも明らかだ。そこでミルシーは、彼女に手を差し伸べる。
「だったら、ワガハイが未来を築き上げるのであぁる! こんな貧しい生活とはおさらばであぁる!」
「……どうすればいいのかしら」
「それを一緒に考える仲間もいるのであぁる!」
思い立ったが吉日だ。彼はキクヒュアを連れ、いつもの霊園へと足を運んだ。
霊園で彼を待っていたのは、ユウセイだ。
「あ、いつもバーで歌ってる人だ!」
事情を知らないユウセイは、真っ先にそう言った。当然、キクヒュアは苦い愛想笑いを浮かべるばかりである。
「……もう、あの店で歌うことはありませんわ」
これから、どのように日銭を稼いでいくか――三人はそれを考えなければならない。そこでミルシーは、二人を鼓舞する。
「今日ここに、エテコー団を結成するのであぁる! ワガハイたちは、笑うも一緒、泣くも一緒、そして墓場も一緒であぁる!」
もちろん、それが気休め程度の提案であったことに変わりはない。それでもキクヒュアには、選択の余地などない。
「……わかりましたわ。アタクシは、アナタがたにお供しますわ」
この瞬間、エテコー団が結成された。




