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デシヴィラ

 翌日、リリカたちは再び荒野に赴き、ゴンゾウと対峙した。この男を倒さなければ、より多くの人間が主体性を失うこととなる。同時に、彼はカムイやヒロトからしてみれば因縁の相手だ。緊迫した空気が張り詰める中、リリカが沈黙を破る。

「オレ、カッコイイところ見せちゃうよ」

 この時、彼女はすでに臨戦態勢だった。その手には機関銃が携えられており、彼女の目は闘志に満ち溢れている。彼女だけではない。ヒロトやカムイも、有り余る闘争心でたぎっている。

「こ、今回こそ、お、お前を……倒す!」

「僕たちの力を、侮らない方がいいですよ!」

 二人も準備万端だ。そんなリリカ一行の悠然たる構えを前にしても、ゴンゾウは動じない。

「……身の程を知れ」

 そう呟いたゴンゾウは、いつものように杖を足元に突きつけた。直後、その場には巨大な竜のような霊獣が現れ、辺りは強風に包まれた。空は黒い雲に覆われ、稲妻が走りだす。この緊張感の中で、カムイはか細い声で呟く。

「デシヴィラ……」

 その瞬間、彼女の脳では、ある記憶が反芻されていた。かつて彼女は、火の海と化していく故郷を目の当たりにした。多くの村民が逃げ遅れ、その命を散らされた。当時はまだ魔術を使えなかったカムイには、逃げ惑うことしかできなかった。彼女の目の前で全てを奪っていった霊獣は、紛れもなくあの竜――デシヴィラなのだ。

「ああ……ああ……」

 その場に崩れ落ちたカムイは、恐怖に震えていた。そして過呼吸になりつつ、彼女は黒い魔力を帯び始める。そこに駆け込んだのは、ヒロトだった。

「ま、まずい……!」

 咄嗟の判断により、彼はカムイの頬に平手打ちをした。しかし理性を取り戻さなかったカムイは、彼の腹に凄まじい威力のボディーブロ―を炸裂する。

「かはぁっ……」

 勢いよく血を吐いたヒロトは、そのまま後方へと飛ばされた。その傍らでは、リリカがデシヴィラと戦っている。彼女は機関銃を乱射し、その敵対者は全身から黒い電流を放っていく。竜の巨体は依然として無傷だが、リリカの身はみるみるうちに重い傷を負っていく。しかし彼女は今、一人で強敵の相手をしなければならない。

「カムイのことは頼んだぞ、ヒロト!」

 その指示に頷いたヒロトは、すぐに立ち上がった。彼の眼前には、すでにカムイのかかとが迫っていた。

「……!」

 彼は瞬時に受け身を取り、同時に己の身を爆発させた。されどカムイは、爆炎をものともせずにかかと落としをお見舞いする。この一撃による衝撃波は、荒野を激しく揺らした。ヒロトは歯を食いしばり、理性を失った仲間を睨みつける。カムイは依然として暴走しており、次から次へと体術を繰り出していく。


 そんな光景を後目に、ゴンゾウは小さなため息をつく。

「ふぅ……とりあえずは、こんなところか」

 そう言い残した彼は、空間転移の魔術によってその場を後にした。


 一方で、リリカは命の危機に瀕していた。機関銃だけでなく、彼女は太刀や斧、弓など――様々な武器を試していた。それでもデシヴィラは、依然として傷を負っていない有り様だ。リリカが生き延びるには、この場から撤退する他ないだろう。それでも彼女には、引き下がれない理由がある。

「こんな化け物を逃がしたら、死人が出る……! ありゃぁ、ただの霊獣なんて生ぬるいモンじゃねぇ……災害そのものだ!」

 元より、デシヴィラはカムイの故郷を更地に変えたような猛者だ。この化け物を生かしておけば、甚大な被害が出ることは想像に難くない。リリカは太刀を構え、前方へと飛び出す。しかしデシヴィラの放つ電撃が、彼女の腹を容赦なく貫く。直後、黒い電流は爆発し、リリカは宙を舞った。


 それから地面に叩きつけられた彼女の目の前には、強敵の巨体が迫っていた。

挿絵(By みてみん)

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