国家機密
次の日、リリカとヒロトは森を歩いていた。二人はカムイのことを気にかけているが、どうすることもできずにいる。
「カムイの奴……立ち直れるかな」
「わ、わからない。だが、今は、ひ、一人にしてやれ」
「……そうだな。ずっと探していた両親があのザマじゃ、そう簡単には切り替えられねぇだろう」
そんな会話を交わしていた彼女たちは、淀んだ表情をしていた。このまま時間が解決するのを待つしかない――二人はそう思っていた。
その時である。
「生まれは貧しい未来は眩しい!」
突如、その場に聞き慣れた声がこだました。リリカは手元に太刀を生み出し、傍らの雑木に鋭い眼光を向ける。
「今はアンタらに構っている場合じゃねぇ」
そう言い放った彼女とは違い、ヒロトは喧嘩腰にならない。
「じ、事情を話せば、お、お前らは、引き下がってくれるよな? お前らは、わ、悪い奴らでは……ないと思うから」
仮にも、彼はエテコー団の三人に助けられたことがある身だ。そんな彼が強気に出られないのも、至極当然のことである。雑木に身を隠していたエテコー団の三人は、すぐに彼の前に姿を現した。彼らはリリカたちのことを心配している。
「何があったのであるか? 話してみるのであぁる!」
「もしかして、カムイさんに聞かれたら困る話ですの?」
「そう言えば、アイツはオイラたちの会話を感知できるんだよな!」
確かに、普段のカムイであれば大抵のことは感知するだろう。しかし今回は、事情が違う。
「アイツは今、魔術を使えねぇ。気が滅入るようなことがあったからな」
壮絶な現実を突きつけられたカムイは今、魂が弱っているのだ。
「実はだな……」
怪訝な顔をするミルシーたちに、リリカは先日の出来事を話すことにした。
リリカの説明を受け、ミルシーたちは憤る。
「それはワガハイたちにも許せない話であぁる!」
「邪悪すぎますわ!」
「先ずは、このことを公表するべきだよ!」
やはりこの三人は、悪党を気取っていながらも正義感を持っている。そんな彼らがマザー・セラフの件を許せないのも、無理はない話だった。一方で、リリカは真実を公表することに消極的である。
「そう焦るな。オレたちが軽く調べたらわかったようなことを、国が知らねぇはずはねぇんだ。だからアンタらは、何も聞かなかったように振る舞え。下手をうてば、取り返しのつかねぇことになるかも知れねぇ」
彼女はそう言ったが、ミルシーは依然として納得しない。
「だからといって、行動を起こさないわけにはいかないのであぁる! 我々エテコー団が、全力でキミたちに手を貸すのであぁる! 一時休戦であぁる!」
この時、彼は熱くなっていた。対照的に、リリカは至って冷静だ。
「アンタの熱意は買う。だがな、情報ってのは、慎重に取り扱うモンだ。かたや国が隠蔽しているかも知れねぇ情報ともなりゃぁ、それを公表することには相応のリスクってモンがあるはずだろ」
その言い分に、ミルシーは何も反論できなかった。国家機密を漏らすことは、確かに安全とは言い難い。今はまだ、目立った動きをする時ではないのだ。
マザー・セラフの件の他にも、リリカたちが抱えている問題はある。
「それより、仲間の心配はしないのであるか?」
「あ?」
「この国で起きていることも重大ではあるが、カムイのことも心配であぁる! そこでキミたちに、耳を貸して欲しいのであぁる!」
カムイが傷心していることは、彼女たちからしてみれば由々しき事態だ。ミルシーは、リリカとヒロトに耳打ちをした。リリカたちは少し考え、深くうなずいた。
「少々荒治療にはなるが、悪くねぇ話だな」
「さ、さっそく、ギルドまで戻ろう。す、すまないな……エテコー団」
二人はエテコー団の三人を連れ、霊媒師ギルドの本庁へと戻った。




