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秘匿

 ゴンゾウは言う。

「君たちは何も知らなくていい。ただ、霊獣とファントムを狩り続けることだけに集中するんだ」

 無論、それで納得できるリリカではない。

「明らかに、異常だろうが! ファントムに取り憑かれたことのある人間は皆、どっかおかしくなってんだよ! 説明しろよ! 一体、ファントムってなんなんだよ!」

「世の中には、知るべきでないこともある」

「知らなきゃ納得できねぇだろうが! 答えろ! オレの質問に答えろよ!」

 この時、彼女は今までファントムと関わって目にしてきたことを思い返していた。元依り代は皆、決して取り乱さなかった。そして何より、ヒロトの目の前で自らの命を絶った男は、その中でもとりわけ異常だった。そういった光景を目の当たりにしてきた彼女からしてみれば、真相を知るまで納得できないのは当然のことである。

「口を割らねぇつもりなら、割らせるだけだ」

 そう呟いた彼女は、自らの手元に太刀を生成した。ゴンゾウは深いため息をつき、杖の先で床を突く。


 直後、彼の周囲には、数体の霊獣が生み出された。


 その傍らで、カムイは数瞬ほど目を疑った。それから彼女は怒りに震え、大声を張り上げる。

「あなたが、霊獣を生み出し、使役しているのですね……!」

 元より、彼女は霊獣に故郷を滅ぼされた身だ。そして彼女の悲劇をもたらした者が、ゴンゾウである可能性が高くなったのだ。気づけば、カムイはその場から飛び出していた。この時、彼女は何も考えていなかった。彼女の振り下ろした大剣は、今まさに眼前の標的の脳天に迫っていた。


 しかしカムイは、横から現れたゴーレム型の霊獣に殴り飛ばされた。


 もはや話し合いでは片付かない。リリカは太刀を振り回し、ヒロトは爆発を起こしていった。カムイも即座に立ち上がり、再び大剣を駆使していく。無論、彼女たちがいくら戦い続けようと、ゴンゾウは次々と霊獣を生み出していくだけだ。リリカたちだけが消耗している一方で、彼は息一つ切らしていなかった。


 ゴンゾウは彼女たちに背を向け、こう言い残す。

「後は、私の部下に任せるとしよう」

 何やら彼と共にリリカたちを待ち受けていた者たちは、彼の部下だったようだ。ゴンゾウは鳥型の霊獣を生み出し、その背中にまたがった。

「待て!」

 リリカはそう叫んだが、彼を乗せた霊獣は、壁を突き破って飛び去った。


 その場に残されたのはリリカ一行と、見知らぬ三人組だ。そのうちの一人は、サイドテールに黒いリボンを着けた厚化粧の少女である。

「マジウケる! アンタたちは、ただ仲間を信頼できるというだけで、自分たちに勝算があると思うんだね!」

 それが彼女の第一声だった。当然、リリカはそれに反感を覚える。

「信頼がねぇと、勝算もねぇだろ」

「だけどアンタたちの信頼は、強さへの信頼じゃないじゃん! ただただエモーショナルなだけの信頼を賛美する連中なんて、世の中に向いていない自分たちを許す口実が欲しいだけなんだよ!」

「アンタに……オレたちの何がわかる!」

 相手の言い分に、リリカの堪忍袋の緒が切れた。その傍らでは、筋肉質な男がヒロトと話している。

「まあ難しく考えるな。俺様が絶対なんだから」

「は、はあ?」

「俺様の気分が基準じゃないルールは、例外なく無価値なんだぞ」

 何やらこの男も、なかなかの曲者らしい。一方で、残る一人の部下は、十代前半と思しき少年だ。少年は、カムイに声をかける。

「きみ、後でボスに謝った方がいいと思うよ」

「な、何故ですか! あの男は、僕の故郷を……!」

「潰されたのが故郷じゃなかったら、怒ってないでしょ? 悪いことだから怒ったんじゃなくて、他人事じゃないから怒ったんでしょ?」

 彼の感性は、常人の理解を逸脱したものであった。


 これからリリカたちは、この三人組と戦うことになる。

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