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仲間

 リリカは話を切り出す。

「オレがアンタの立場だったら、言葉なんか選べなかったと思う。それに、死ねって言われて本当に死ぬなんて妙なんだ。それこそ、ファントムと分離した人間が軒並み馬鹿みたいに素直なくらいにな」

 曲がりなりにも、彼女には仲間を思いやる心があった。当然、そんな言葉だけでは気休めにもならない。

「……何が、い、言いたい?」

 そう訊ねたヒロトは涙を拭い、彼女を睨みつけた。リリカはネックレスを拾い、それを彼に手渡す。そこで唖然とする彼に構わず、彼女はこう続ける。

「今まで見てきた通り、ファントムに憑依された人間には、絶対に何らかの後遺症が残っているんだ」

「こ、後遺……症……」

「まあ、そんなことは、今はどうでもいい。オレとカムイの気持ちは同じだ」

 真剣な顔つきのまま、リリカはカムイに目を遣った。カムイは少しうつむきながら、ヒロトの顔を覗き込む。

「一人で、背負わないでほしいです。ヒロトさんは、今、誰よりも苦しくて、心が痛くて……それが伝わってきます」

 ファントムの正体よりも、今はヒロトの精神状態の方が大事だ。それは彼女たちにとって、共通の認識であった。それでもヒロトは、二人の想いを不意にする。

「お、俺の、俺の何が、わ、わかるんだよ! 俺は、ひ、人の、命をっ……奪ったんだぞ! 俺の、き、気持ちなんか、お、お前らには、わからないだろ!」

 もっとも、彼が荒れるのも無理はない話だ。そんな彼を刺激しないよう、カムイは必死に言葉を考える。その傍らで、リリカは臆することなく発言する。

「何もわかんねぇよ。何もわからなかったら、心配しちゃダメなのか? わかろうとしちゃ、いけねぇのか?」

 その言葉に、ヒロトは目を丸くした。それがどんな不器用な言葉であれ、今目の前にいる後輩は彼のことを本気で気にかけているのだ。彼女の後に続き、カムイも想いを伝える。

「僕、覚えています。僕が『僕たちのことが嫌いなんですか?』って聞いた時、ヒロトさんは僕たちのクエストに同行してくれました。これはきっと、ヒロトさん自身の人のよさなんだと思います」

「カムイ……」

「だから、僕は……ヒロトさんが傷ついているのなら、側にいたいです」

 彼女の眼差しに曇りはない。彼女は本心から、ヒロトの側にいたいと願っていた。それは、リリカの感じていたことでもある。

「あぁ、同感だ。オレも、今はアンタの側にいたい。オレもカムイもずっと独りだったからな……ちょっとした友情に希望を見いだしても罰は当たらねぇだろ?」

 元より、彼女は親友と死別し、カムイは両親を失った身の上だ。そんな二人が、もう二度と誰かを失いたくないと願うことは、至極当然のことである。


 ヒロトは再び涙ぐみ、言葉を紡ごうとする。

「リリ……カ……カム……イ……お、お前らは、俺の……俺の……」

 相変わらず、その口調は拙く、それでいてぎこちなかった。

「……なんだよ」

 リリカは訊ねた。ヒロトは泣き崩れ、今までの彼からは想像もつかないようなことを口にする。

「お前らは、俺の仲間だ」

 この瞬間、彼は初めて二人を仲間と認めた。リリカは笑みを零し、彼の肩を軽く叩く。

「ようやくわかったんだな? この曲乃(きょくの)リリカの偉大さがよぉ!」

「あ、ああ、わ、わかったよ。お、お前は、す、凄い奴だ」

「またまたご冗談を……って、あれ? 今、オレ、褒められたのか? やっぱ、オレってスゲェんだな!」

 思わぬ出来事に、彼女は歓喜した。ヒロトは涙を浮かべたまま苦笑いを浮かべ、付け加える。

「ま、まあ、こ、こういうところは、ば、馬鹿だけど、な」

「一言余計だろ」

「お、俺のこと、冴えないって、い、言っただろ。お、お返し、だ」

 少しばかり、彼は元気を取り戻した様子だ。リリカとヒロトは数瞬ほど黙り込み、それから思い切り笑い声をあげた。

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