裁判
後日、リリカたちはあの少女を連れ、法廷に立った。被告席には、四人の霊媒師がいる。事件の真相が公に明かされるか否かは、この裁判にかかっていると言っても過言ではない。裁判官がガベルを鳴らし、開廷を告げる。
「ただいまより、白澤一家謀殺事件の審理を開廷します」
いよいよ正義を知らしめる時だ。さっそく、裁判官は質問する。
「共同被告人、起訴内容に対してどう答えますか? 有罪か無罪かでお答えください」
格式ばった言葉選びだ。もっとも、それが裁判というものであることに相違はないだろう。四人の霊媒師は、口々に無罪を主張する。
「もちろん無罪です」
「ええ、我々は無罪ですよ」
「原告の言いがかりです」
「金目当てだと思いますよ、原告は」
実際、リリカたちからしてみても、あの少女の言い分を一方的に信じる理由などない。確固たる証拠がない限り、真相は常に闇の中だ。無論、リリカとて、彼女のことを妄信しているわけではない。そこで裁判官は、その真意に迫る。
「証人。何か、被告の有罪を確信した理由はありますか?」
「いや? オレにはただ、知りてぇことがあるだけだ」
「知りたいこと……?」
何やらリリカには、別の目的がある様子だった。ヒロトやカムイが唖然とする傍らで、彼女は本音を語る。
「オレが見る限り、ファントムに取り憑かれた人間には何らかの後遺症が遺る。そしてオレは霊媒師で、謀殺の被害者と交信できるんだ。まぁオレが知りてぇことは、原告がそもそも嘘をつけるのかどうかってところだな」
確かに、この裁判を介せば、ファントムのことを更に掘り下げられるだろう。しかしこの霊媒師は先日、義憤のような素振りを見せていた身の上だ。これには、ヒロトも反感を覚えるばかりである。
「リリカ、お前……そのためだけに俺たちの正義感を焚きつけたのか?」
「当たり前だろ。あの話を無条件で鵜呑みにする道理なんか、オレにはねぇんだからさ。まぁ、熱くなるのは、あれが事実だと確定してからだな」
「なんだかお前を信用していいのか、わからなくなってきたぞ……」
言うならば、リリカの行動は合理的ではある。一方で、その行為が褒められたものではないことも否定はできない。それを差し引いてもなお、少女の話が本当であれば、霊媒師である彼女が心強い証人であることは揺るぎない事実だ。
裁判官は指示を下す。
「では、事実確認のため、事件の被害者方と交信してください」
死人に口なし――そう言われていたのも、霊媒師が市民権を得る前までの話だ。被告席の霊媒師たちは、青ざめた顔をしている。そんな彼らを嘲るように笑い、リリカは指を鳴らした。
法廷に、白澤婦人の魂が降り立った。
怪訝な表情で、婦人は周囲を見渡した。今その場で起きていることは、彼女にはわからない。しかし被告席に立つ男たちが視界に飛び込むや否や、彼女は酷く怯え始めた。そこでリリカは、婦人に問う。
「ご婦人。アンタを殺したのは、その男たちで間違いねぇんだな?」
「はい! わ、私は……あの男たちに殺されました!」
「ククッ……ご苦労。やはり面倒事は、速やかに片付けるに限る」
――こうなればもはや、被告も言い逃れができない。それからも、法廷では問答が繰り広げられたが、婦人本人の証言よりも説得力のある弁論は出なかった。何しろ、あの証言は殺された本人の主張だったのだ。その効力が絶大であることは、至極当然のことである。
裁判官は再びガベルを鳴らし、裁判を締めくくる。
「静粛に。本件において、裁判所は慎重に審議した結果、共同被告人に対して終身刑を言い渡します」
絶対的な証人の存在もあり、司法は権力に屈しなかった。
「良かったな、これで親父も報われるんじゃねぇか?」
リリカはそう言ったが、少女は依然として無表情のままだった。




