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霊媒師リリカの受難  作者: やばくない奴
霊媒師ギルド
13/72

新入り

 その時である。

「そこまでだ」

 ゴンゾウの一声により、リリカとカムイは手を止めた。カムイの強さを知るには、あの戦いは十分に勢いのあるものだった。二人は一斉に、彼に目を遣る。


 ゴンゾウは告げる。

「合格だ、泡沫(うたかた)カムイ。今日から君は、霊媒師ギルドの正式なメンバーだ」

 こうしてまた一人、ギルドに霊媒師が加わった。そこで真っ先に笑みを零すのは、カムイ本人ではない。

「よっしゃぁ! これからもっと賑やかになるぜ!」

――リリカだった。彼女の反応は、ヒロトには理解できない。

「目立ちたがり屋のお前が、目立つ強さの仲間ができて喜ぶのか」

「ははは。目立ちたがり屋の中じゃ常識だぜ? 目立ちたがる奴ほど、孤独を恐れるってなぁ」

「……そういうものなのか」

 話を聞いた後でもなお、彼にはリリカの気持ちがわからなかった。しかし同時に、彼は妙な感覚を覚える。この時になって、ヒロトは初めてリリカが一人の人間なのだと確信した。


 カムイは深々と頭を下げる。

「あの! これから、よろしくお願いします!」

 あの破天荒な霊媒師とは違い、この新人にはそれなりの礼儀が備わっていそうだ。さりとて、それはリリカの望む人物像ではない。

「マニュアル通りの礼儀だな。だが、人生にマニュアルは通用しねぇ」

 そう言い放った彼女は、カムイの目の前にした拳を突き出してみせた。当然、カムイにはその意味がわからない。

「……どういうことでしょうか」

「アンタも握り拳を差し出せ。それをオレの拳に軽く当てるんだ」

「は、はい!」

 とりあえず、彼女は言われるままに拳を返した。その挙動はぎこちなかったが、リリカは再び笑みを零した。

「これでアンタもオレたちの仲間だな。おっと、だからと言ってオレに一切の暴言を吐かない……なんてのは、ナシだ」

「え、なぜですか?」

「憎まれ口を叩き合える仲じゃねぇと、面白くねぇからだよ」

 それが彼女の考える――仲間というものであった。続いて、リリカはヒロトの方にも目を向ける。

「そうだよな、ヒロト!」

「俺はまだ、お前を仲間だと認めていない」

「まだ、認めてねぇか。まだ、な」

「お前のそういうところが嫌いだよ」

「そりゃどうも」

 何を言われようと、彼女の態度は依然として飄々としていた。その様を前にして、カムイは微笑む。

「ヒロトさんは、リリカさんを信頼しているんですね」

 無論、それを素直に認めるヒロトではない。

「俺が? 馬鹿を言うな」

 彼はそう言ったが、カムイは話を続ける。

「ヒロトさん、なんだかんだでリリカさんとよく話すじゃないですか。他に、話し相手はいるんですか?」

「……お前、大人しそうに見えて、わりと鋭いところを突いてくるんだな」

「ふふっ……僕は、ヒロトさんは悪い人ではないと思います」

 そう語った彼女は、屈託のない笑顔をしていた。


 リリカは言う。

「いやぁしかし、これでオレにも後輩ができたわけだ! オレのこと、先輩って呼んでもいいぜ!」

 その一言に、ヒロトは眉をひそめる。

「少しでもお前を認めようと思った俺がバカだったな。先輩風を吹かせたいだけかよ」

「先輩風? そんな風なんかじゃ甘ぇよ。この時代には、オレの風が吹くんだよ!」

「お前は本当に自信過剰だな。もはや何も言えないぞ……」

「おう。自分を好きでいることは、人間にとって何よりも上等だからな!」

――やはり、この女は色々な意味で強者だ。無論、彼女は特別に弁が立つというわけでもない。ただ、リリカは自己愛が強く、それに正直すぎるだけなのだ。


 そんな彼女の自己肯定感を、カムイは評価する。

「羨ましいと思います」

「ん?」

「僕もそんな風に、自分に胸を張れる人間になりたいです。自分を心から誇れるリリカさんは、強い人だと思います」

 そんなことを言われたのが意外だったのか、リリカは目を丸くした。

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