感知
やがて霊媒師ギルド本庁に到着したリリカたちは、エントランスを潜り抜けた。そこで彼女たちを待っていたのは、ギルドのマスターであるゴンゾウだ。
「おや? そちらのお嬢さんは?」
彼は訊ねた。そこでリリカは、事情を説明する。
「この子は泡沫カムイ……本日のMVPだ。コイツがいなかったら、今回の霊獣を仕留めることはできなかったよ」
「それは凄いな。それで、どんな魔術を使うんだ?」
「魔術なんか、使ってなかったように見えたが……」
確かに、彼女の見た限りでは、カムイは剣術だけで霊獣と戦っていた。しかしカムイもまた、魔術を扱う霊媒師である。
「僕は感知したいものを感知する魔術を使います。熱、匂い、動きに超音波……思い当たるものは大体感知できます」
そう――彼女が霊獣の動きを読んでいたのは、魔術で感知していたからだったのだ。ゴンゾウは微笑み、彼女に提案する。
「素晴らしい。それでは、君の魔術を見せてもらえないか? リリカ、訓練場で相手をしてあげなさい」
リリカがここに初めて来た時と同じだ。ゴンゾウは、霊媒師を戦わせることで見極める性分らしい。その指示を、リリカは快く引き受ける。
「あぁ、了解だ」
こうして彼女たちは、訓練場に移動することとなった。
訓練場にて、ゴンゾウが合図を出す。
「始め!」
その合図に従い、リリカとカムイは一斉に駆け出した。二人の剣は火花を散らしながらぶつかり合い、金属音をかき鳴らしていく。その闘争に、他者の介入する隙はなさそうだ。そんな中、リリカはある事実を確認する。
「オレが仕掛けた地雷を全て避けながら戦っているな。どうやら、なんでも感知できるのは本当らしい」
一見、この戦いは彼女にとって分の悪いものだ。何しろ彼女は、あらゆる挙動を相手に「感知」されているのだ。そんな彼女も、押されるばかりではない。カムイの動きが、徐々に鈍り始める。それは決して、疲労によるものではない。
「……なるほど、僕を地雷で包囲しましたか」
あくまでも、彼女は感知できるだけだ。同時に、霊媒師による攻撃は、指定した対象にしか当たらない。つまるところ、無数の地雷に囲まれてしまえば、彼女にも打つ手はないのだ。
これにはリリカも得意気だ。
「へへっ。オレ、天才じゃね?」
その驕った一言に対し、カムイは冷静に受け答える。
「い、いや……流石に天才というほどでは……」
「え、そうなの?」
「いい発想ではありますけど、凡人の域というか……いえ、すみません」
何やらこの少女は、正直者らしい。さりとて、その凡人の発想によって彼女が袋の鼠になったこともまた事実だ。
「さぁ、逃げられるかな?」
この好機を逃さなかったリリカは、いつものように機関銃を生み出した。放たれていく無数の弾丸を前に、カムイはひたすら大剣を振り続ける。その動きには一切の無駄がなく、彼女は全ての銃弾を切り落としていく。
そして、彼女は活路を見いだす。
カムイは高く跳躍し、大剣を真下に投げ飛ばした。その刀身は地面に突き刺さり、地雷を爆破する。その爆炎に触発され、周囲の地雷も次々と爆発していく。そしてほとんどの地雷が爆発し終えた直後、彼女は着地した。
対人地雷は触接信管を使っている。簡単に言えば、一瞬で爆発するということだ。
逆説的には、その一瞬の間だけでも宙に留まれれば、爆発を直に受けずには済む。そしてリリカが煙に視界を塞がれている一方で、カムイは彼女のことを感知できる。
「今ですね……!」
カムイは大剣を手に取り、前方へと飛び出した。その刀身は、一瞬にしてリリカの腹に切り傷を刻む。
「そこだ!」
リリカがそう叫んだ直後、カムイの腹部にも切り傷が刻まれた。いくら相手の動きを感知できるカムイでも、自らのつけた勢いを急に止めることはできなかった。




