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霊媒師リリカの受難  作者: やばくない奴
霊媒師ギルド
11/72

孤児

 リリカたちは自己紹介をする。

「オレは曲乃(きょくの)リリカ。そこの冴えねぇツラした男は荒山(あらやま)ヒロトだ」

「一言、余計だな。というか、むやみに見知らぬ人間に話しかけるなよ」

 その言い分はもっともだ。カムイからすれば、急に声をかけられたことは困惑に値することだ。されどリリカは、非常識を極めた少女だ。

「いやいや。これからオレたちは、カムイを霊媒師ギルドに勧誘するんだ」

 それは紛れもなく、彼女の独断であった。ヒロトは耳を疑い、注意を試みる。

「あのなぁ! 霊媒師ギルドは強さだけじゃなくて、信用も大事にしているんだぞ! 見ず知らずの他人を、易易と……!」

「まぁ良いだろ。こんなに可愛い女の子に噛まれるわけねぇって。むさ苦しいギルドにも、花は欲しいだろ」

「そういう問題じゃない。マスターの了承もなく、お前の独断でむやみな勧誘をするなと言っているんだ!」

 曲がりなりにも、彼は先輩だ。そんな彼が後輩をしつけようとするのも、当然のことではある。しかしリリカは筋金入りの自由人――一筋縄で行く相手ではない。二人が言い争う中、カムイは微笑みを浮かべた。それに気づいたリリカたちは、一斉に彼女の方へと振り向いた。

「ん、なんだ?」

「何笑ってんだよ」

 二人は訊ねた。その質問に対し、カムイはこう答える。

「あなたたちは、仲が良いんですね」

 その一言は、別段リリカの怒りには触れなかった。一方で、それはヒロトの癪には障ったらしい。

「誰がコイツなんかと!」

 これまで、彼はリリカの扱いに手を焼いてきた身だ。そんな彼が彼女に鬱憤を覚えているのも、無理はない話である。そんな中でさえ、リリカ節は留まるところを知らない。

「ははは。良いか、カムイ。年頃の男子はなぁ、女子相手に強く当たれる自分をイケてると思っちまうんだ」

「勉強になります」

「特にヒロトはからかい甲斐がありそうだろ? アイツは素直になれねぇからな!」

 それはあまりにも勝手な言い草だった。ヒロトは呆れ、深いため息をついた。



 リリカたちの会話は、更に弾んでいく。

「ところで、アンタはなんで霊媒師なんかやってるんだ? 腕は確かだが、まだ働くような歳でもなさそうだぞ」

「……昔、僕の故郷はデシヴィラという霊獣に潰されました。その時に、両親が失踪したんです」

「あぁ、アンタ、デシヴィラの被害者か。霊媒師ってことは、両親の生存確認はできたんだろうな」

 元より、霊媒師の仕事の一つに死者との交信がある。カムイもまた霊媒師である以上、両親が亡くなっていれば交信は可能だ。

「はい。霊魂が見つからなかったので、僕の両親は生きているはずです」

「見つかると良いな、アンタの親」

「はい、ありがとうございます」

 少なくとも、カムイは自分の両親が生きていることを確信している。そんな彼女が便利屋として働いているのも、彼女が事実上の孤児であるがゆえのことだろう。そんな彼女の話を傍目に聞いていたヒロトは、リリカに指示を出す。

「行くぞ、リリカ」

「おいおい、今は深刻な話を……」

「お前みたいな無神経な奴が聞き手に回っていい話じゃないから止めてるんだよ」

 確かに、彼の知る限りでは、リリカにデリカシーなどない。さりとて、リリカもまた人の子だ。

「いくらなんでも信用されてなさすぎだろ。流石に傷つくぜ?」

「お前がイカレてるのは嫌というほど知ってる」

「あ? イカしてるの間違いだろ」

 またしても、彼女たちの言い争いが始まった。その様を前にして、カムイは苦笑いを浮かべるばかりであった。


 リリカは提案する。

「なぁ、カムイ。霊媒師ギルドに来いよ」

「良いんですか?」

「話ならオレがつけてやる。責任もオレが取る!」

「……わかりました。よろしくお願いします」

 こうして、カムイが本庁に赴くことが決まった。

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