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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
ジノグラフの常識

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99/123

決断のとき(3)

「なん……と」

「これは、まさか……」

 ウフルバは絶句する。


 メタルビーストとの戦闘に備えて装鎧戦士(エルフィンアーマー)をまとった五人が森の中心部に達する。しかし、そこに残っていたのは流体金属(メタル)の溜まりだけであった。ターゲットのメタル飛びオオトカゲはすでに討伐されている。


「マサキってこっちの方向に行っちゃったわよね?」

 シュミクも気がついた。

「昨夜のうちにあいつが? これほどの溜まりになってしまうほどの大物を一人で?」

「にわかには信じられませんぞ」

「……しかし、このあたりにメタルビーストを倒せる装鎧戦士(エルフィンアーマー)は我らの他にはマサキしかいなかった」


(だとすれば、彼は我らより遥かに強い)

 ウフルバの背筋が凍る。


「戦公様では敵いません」

 エノカリスの言葉がよみがえる。


「なにか勘違いでは? 彼は剣も持ってなかったんですよ?」

「実は……、貴官らに公開されている報告書は制限されている」

 彼は思いだす。

「そうなんですか?」

「村人からの聞き取りで、マサキが光の剣を用いて賊の装鎧戦士(エルフィンアーマー)を下したとあった。しかし、あまりに荒唐無稽で、証言者が幻覚でも見たのではないかと結論付けられたのだが」

「それが事実かもしれないと」


(だとすれば、マサキは本当に強い。そして、私は彼を怒らせてしまっている。なにを怒ったのかは未だにはっきりしないが機嫌を損ねたのは間違いない)

 嫌な予感がした。


「王都に戻って事の顛末を報告せねばならん。流体金属(メタル)の回収、急げ」

「御意に」


 指示をして装鎧戦士(エルフィンアーマー)を解除する。なにかを感じて振り向いた先にはエノカリスが立っていた。その口元にかすかな微笑を掃いて。


(笑っている)


 ウフルバは戦慄した。


   ◇      ◇      ◇


 王国戦士団は流体金属(メタル)の溜まりを回収すると撤収していく。


「あーあ、もったいないわ」

「仕方ないさ。これ以上バイクに乗せて持ち運ぶのは無理」

 正輝たちはすでに回収済み。


 万が一に備えて変身したまま遠くから監視していた。変身中の彼の視力は、相手から見えない距離からでもその様子を見て取れた。会話までは無理だが、昨夜なにが行われたかくらいは予想していよう。


(放っておきましょう。これ以上関わっても良いことはありません)

「ああ、上手に姿をくらますという当初の作戦は成功したしな」


 ここまでは予定の範囲内。これからのことはまだ妖精種(エルフィン)たちには話していない。が、彼はもう決めていた。

 ちゃんと話すために変身を解除する。エメルキアに倒木に座ってもらい、ロナタルテやティナレルザを前に仁王立ちした。


「どうなさいますか?」

 少女が判断を求めてくる。

「もう決めた」

「そう。どうするの?」

「大陸の君たち妖精種(エルフィン)すべてを解放するのさ、ルーザ」


 さすがのエメルキアも固まってしまう。ティナレルザは眉根を寄せ、ロナタルテは理解しかねる感じで首をかしげている。


「それは……無茶です」

 少女は宥めてくる。

「無茶でもなんでもやる。正直言って大陸の人類が滅亡しようがどうでもいい。勝手にしやがれって感じ」

「そう思われても仕方がないかもしれませんが」

「でも、それと同時に妖精種(エルフィン)が苦しむのは嫌だ。だから、メタル進化種も狩るし、妖精種はすべて助けてまわる。邪魔する者には容赦はしない」

 覚悟を決めた。

「でも、それは……」

「ああ、わかってる。ジノグラフの常識を根本から転覆させるものだ。人間社会を崩壊に導くかもしれない。そう。そうだ」


 閃きがあった。ようやく自分の立ち位置が定まったように思える。これまでは妖精種(エルフィン)に味方する人間くらいのつもりでいたがそうではなかった。


「おーおー、そうかそうか。わかったよ。この世界も俺に悪役(ヴィラン)をやれってんだな。ライダーじゃなくゼネラルアビスに立ち戻れって言ってるようなもんじゃん」

 そこにたどり着いた。

「人類にとっては天敵。そして、妖精種(エルフィン)にとってはライダー。現実社会に明確な正義と悪の区別がない以上当然じゃないか。こうなるのは最初から決まっていたようなもんだ」


 正輝は笑う。単純明快な図式が一番彼を納得させた。あれこれと思い悩む必要なんて微塵もない。


「いいか?」

 指を立てる。

「ここの人間は典型的な確信犯だ」

「確信犯、そうですね」

「自分がしていることが悪いなんて欠片も思っちゃいない。むしろ、正義の行いだって思ってる。とんでもない勘違いだ。それを俺が思い知らせてやる。すると、どうなるか? 連中にとってはとんでもない悪人に見えるだろうな」

 楽しくなって笑顔になる。

「すべてが敵になりますよ、妖精種(エルフィン)以外は」

「それでいい。そのほうがいい。俺はもうジノグラフの人間が信用ならないんだから」

「無茶だって言ってるじゃない。いくらマサキが無尽蔵の精気を持ってるからって、どれほどの人がいると思ってるの?」


 ティナレルザも反対する。一応は自身でも無茶を言っていると思っている。しかし、それ以外にないとも思っている。


「俺を信じて力を貸してくれ。ルキが信じてくれれば、ロナやルーザが頼ってくれれば、いくらでも強くなってみせる。ジノグラフの常識を破壊してやる」

「マサキ……」

「言っても無駄っぽい」

「かっこいいかもー」


 不安など一つとしてなかった。無茶は承知。行けるとこまで駆け抜けるまで。その先に望む未来があるのだとしたら彼の正義に価値はある。


「お供させてください」

「うん、マサキの馬鹿に付き合ってみる」

「ロナはずっと一緒だって決めてるもん」


 正輝は三人を抱きしめて新たな道へと踏みだした。

次はエピソード『謎の破壊者』『嘘で固めた(1)』 「まさか、ご存知ではないとでも?」

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