敵の敵も敵(2)
スカウティングチームの小妖精からコドアドネ軍の先陣部隊がコタカッタに対して侵攻中の情報を察知した正輝は即時迎撃作戦の実行に移る。ルートが判明すると、手前で準備してアンブッシュ作戦を敢行した。
「ほぼパーフェクトだったじゃん。最初にロナとルーザに行ってもらって小妖精の説得に当たってもらったのが正解だったな」
「だから言ったでしょ? いきなり行って逃げろって言っても通じないって」
「うんうん、ルーザの言うこと聞いて良かった。脱出に手間取ってたら、車から出てもらえるよう言い聞かせながら戦わなきゃならなかったぜ」
前もって二人に接触してもらい、逃げだせば妖精種だけで生活できる場所があると知らせて脱出を促してからの襲撃だった。なので、スムーズに事が運んだのである。
「あれだけ痛めつけとけば戻るしかないだろ」
結構派手にやったイメージだ。
「ちょっとやりすぎたかもしれません。破壊された車が多くて全員乗れないとなると立ち往生。一部は徒歩で戻るとなると全体のスピードはガタ落ちです」
「小妖精も全部逃がしてここにいるから本国にも連絡できないわ。あの連絡路、しばらく通行困難かも」
「まあいい。人間社会の産業活動なんぞ気にしだしたらキリないんじゃね?」
今は山裾の連絡路から見えない位置にクロスカントリー車とバイクを乗り入れさせている。状況によってはすぐに撤収しないといけないかと思ったが、思った以上のダメージを与えられたので逆襲の心配はないだろう。
それに、彼の身体は数十人の小妖精で覆われた状態。しばらくは精気吸引をさせて休息を取らせないといけない。このまま野営したほうがいい。
「君たちも明日朝飛べばいいから」
トレース班の小妖精もいる。
「途中で交代と行き違うとき、この先に誰がいるか確認しながら来てもらえるように伝えてくれる? 相手によっちゃ、身を隠したほうがいいかもしれないし」
「はーい」
「じゃ、メシ食って寝よ」
たっぷりと持ちだしてきた可燃オイルがあるのでほとんど煙を出さずに調理できるのが助かる。化学繊維の副産物なのに、これも売り物になるんじゃないかと思うくらい重宝する。あまり量ができないし、高価に設定できるものでもないので自分たちで使うくらいだが。
「俺は干し肉炙って我慢しよ。君たちには豪勢に燻製魚を一匹提供しよう」
「食べていいんですか?」
新入りは遠慮がち。
「食べてたべて。体力つけてくれないと困る。十分な距離飛べるくらい回復したら、話したとおり妖精種の里まで飛んでもらうからさ」
「うちのスカウティング班が先導するから迷うことないわ」
「場所が不安……、そうか、コドアドネの子は君たちが初めてだった。ようこそコタカッタの里に」
フランクに話し掛ける正輝にまだ戸惑い気味の新人一同。最初こそ彼の精気を吸うのに夢中になっていたが我に返った様子である。
「マサキはこういう方ですので、他の人間とはまったく違うと思って接してください」
エメルキアが促している。
「里に着いて身の振りようを考えることになったらスカウティングチームに組み込まれることもあります。わたしたち作戦チームとも接点ができますので慣れてくださいね」
「わかりました、青の方」
「うーん、最初は俺よりルキのほうが信用あるか。気後れすんなっても無理だよな、人間不信は深刻だろ? ゆったり過ごしてから考えりゃ十分だからさ」
あまり詰め込むのも良くない。
「マサキったら、すぐ甘やかすんだから。テアたちが気に病んでたのもう忘れた?」
「そうだった。でもな、心の病ってのは、身体の傷みたいに簡単に治ってくれないもんじゃん」
「そうね。ま、身の振りようはおいおい考えればいいことよ」
コドアドネの妖精種の状態がどんなのかは知らない。しかし、コタカッタとは全然違うとも思えない。少しマシか、あるいはずいぶん悪いか、そのあたりだろう。時間が必要なのは必至である。
「お魚美味しいよー」
空気を読まない声があがる。
「ロナが一番食べてどうする。ちゃんと分け合って食べなさい」
「あーい」
「ほら、取り分けてあげるから」
(なんだかんだ言いつつ、ルーザは優しくて面倒見がいいんだからな)
正輝は干し肉と平パンを詰め込みながら見守っていた。
◇ ◇ ◇
「斥候隊からの報告です」
御前会議の席に伝令兵が連れてこられた。
「国境付近で南下するバイクと金属車が確認されましたので連絡路を確認したところ、コドアドネ軍と思われる車列を認めたとのことです」
「仕掛けてきたか」
臣公ダファクリは脈絡のおかしさに気づいていたが指摘は避ける。最近の国王ポストカは情緒不安定気味なのだ。あまり刺激したくはない。
「ですが、かの軍は帰国途中の様子とのことです」
「撤退途中とは?」
妙な話だ。
「それが途中、破壊され放棄された車両を多数確認。コドアドネ軍は半数が徒歩で、車列を追うように進んでいたと」
「つまり、何者かに攻撃されて撤退に追い込まれたと。その前提としてバイクと金属箱車を視認したということで相違ないな?」
「はい、あまり接近ははばかられましたので被害状況などは確認できませんでしたがおそらくはそうかと」
「事実は以上か? では、下がってよし」
北の領地を治める戦公からの伝令に退出を命じたダファクリは出席者の面々に向き直った。
次回『敵の敵も敵(3)』 「論じるまでもないことをいつまで続けるつもりなのかと思いまして」




