巡り合いレディ(5)
一目見れば異世界人の正輝からでもとびきり美しいと思えるのに、装鎧少女たちの反応で一喜一憂しているレクナクは幼ささえ感じさせる。なぜ、彼女が装鎧戦士となり、なにを目指しているのか想像もつかなかった。
「そういや手柄が欲しいとか言ってたが、教団で偉くなりたい欲なんてあるのか? そんなふうには見えないぜ?」
答えを期待せず問い掛けてみる。
「決まってる。教団にはいっぱい妖精種がいるの。愛すべき私の可愛い子がいっぱい」
「お、おう」
「すべての可愛い子が私を見て、愛してくれるようになるには偉くなければ駄目でしょ? だったら、最強の教団戦士を目指すわ」
当然のように言い放つ。
「そして、いつかは世界中の妖精種が私を囲んで愛してくれるの。天にも昇る気持ちになれるじゃない」
「違う意味で昇天してね?」
「なによ。馬鹿にするの?」
並外れた奇人だった。妖精種を愛でるあまりになにもかもかなぐり捨てている。職も生き方もすべてがレクナクにとっては手段でしかないらしい。
「いや、別に止めはしないけどさ」
なにを言っても無駄なタイプである。
「あんただって同じじゃない。可愛い子を集めてるんでしょ?」
「一緒にすんな。俺は妖精種に本来の在り方に戻ってほしいだけで、別に集めてるわけじゃない。便宜上、解放して保護するのが目的で、なにかを望んでるつもりもない」
「感性、大丈夫? この子たちを愛でない理由が思い当たらないわ」
心配したいのはこっちのほうだ。
「俺はあんたの将来のほうが不安で仕方ない。変人扱いされたくなけりゃ自重すべきじゃね?」
「誰にも彼にも言うわけないじゃないの。同好の士だと思ったから打ち明けたのに」
「一応分別はあったのか。ちょっと安心した」
鼻を鳴らされるが、そうしていると少しは可愛らしいところもあると感じた。相手が本来は敵対している教団戦士とも思えなくなっている。
「見て、スパッツ」
ランゼッタが正輝のシャツを引く。
「ん、どうした? ヒオルシアだっけ。それ、どこで手に入れた?」
「レクナクが買ってくれた。とってもいい。エメルキアやランゼッタも履いてるからびっくり」
「そうか。職人ギルドに試供品で渡したやつか」
それしか出した覚えがない。
「マサキが作ったの?」
「原案だけな。そんなにいいか? じゃあ」
クロスカントリー車の荷台を探る。装鎧少女サイズのスパッツはそれなりの数用意してあった。
「やる。洗い替えはいるだろ?」
何着か渡す。
「え、それもあんたが作ったものなの?」
「おい、あんたも履いてんのかよ。待ってな」
「まだ持ってるわけ?」
「売ろうと思って作ったのが不評だったんだよ。余ってるから成人女性用フリーサイズのもやる。持ってけ」
レクナクが履けるサイズのスパッツもありったけ渡した。積んでいても荷物になるだけだったのである。
「なんでまた」
いろいろと持ってるのかと言いたいのだろう。
「保護した子に粗末な格好させられないじゃん。着せるもんは常時持ち歩いてる」
「そういうこと。でも、結構高値だったわ」
「吹っかけたからな。妖精種たちに物資を買って帰るにも元手がいる。それを稼いでんだよ」
事情を明かす。
「まさか、集めた妖精種に労働させて金にしてるんじゃないでしょうね?」
「違う違う。とりあえず身の周りの品だけでも作って自活できるようにしたかったから織り機を持ち帰ったのさ。そしたら、流行って遊び感覚でいろいろ作るもんだから余ってきてる」
「じゃあ、これはあんたのとこの子のお手製なのね? ああ、素晴らしいわ」
スパッツに頬ずりしはじめたのでちょっと引いた。じっと見てると、さすがにヤバいと思ったか取り繕っている。
「代金を払ってもいいくらいよ」
「いらね。教団から出た金なんぞ欲しくもない」
醜い教義で民衆を騙して吸いあげた金だ。
「ありがたくいただいておくわ。あまりに良すぎて、今後どうやって仕入れるか悩んでたくらいだもの」
「バイクに乗るにはちょうどいいかもな」
「そうなの! これがあったから少しは可愛い格好してもバイクに乗れるのよ」
スパッツが見えるか見えないかという、丈の短いスカートを履いてるのもどうかと思ったが理由があった。彼女なりにおしゃれをしたいのだろう。
「で、どうすんの?」
この巡り合いの終着点が見えなくなってきた。
「どうでもよくなっちゃった。なんか、あんたと戦いたくないし、コタカッタは可愛い子が少なくなってきたからつまんないし」
「あくまでそれ基準か」
「予定どおり、コドアドネに行くことにする。王宮が戦争する気になったら戦士を引きあげるわ。そしたら、地方でメタルビーストを狩る手がなくなる。ちょっと働いてがっつり手柄にする材料はありそうだもの」
わりと現金だった。
「そうしてくれ。俺はもうちょっと王国に揺さぶりかけてみるぜ。教団のほうはもう死に体だろ。大して怖くもない」
「私がいなきゃ、でしょ。感謝なさい」
「はいはい、この場を収めてくれて感謝します。また、縁があったら会おう。せいぜい出世して、立場を利用できるくらいになったら例の子たちにも会わせてあげられるかもしんないからさ」
「それまで預けとくから大事にしなさいよね!」
(まったく、面白い人間、しかも装鎧戦士がいたもんだ)
少し考えを改めるべきかと思う。
嵐のように走り去っていくレクナクを正輝は手を振って見送った。
次はエピソード『王都ウダマン』『街壁の中(1)』 「当時の裏側もなんか臭ってきたな」




