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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
すれ違いレディ

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巡り合いレディ(4)

「ありがとな、休戦に応じてくれて」

「なんか、気が削がれちゃってたし、いいわ」

 正輝はホッと息をついた。


 互いに視線を外さないよう移動し、バイクに身体を持たれ掛けさせている。レクナクのほうは油断してないが、装鎧少女(エルフィン)は一人で彼の近くまで歩いてきた。『ヒオルシア』と呼ばれていたはず。


「どうした?」

 小首をかしげた少女に問い掛ける。

「こんな人いるんだ。びっくり」

「変わってる?」

「駄目よ、ヒオルシア。あんまり近づくといかがわしいことされちゃう」

 ひどい言われようだ。

「するか! 誰一人手出してないって」

「え、大丈夫なの? こんなに可愛らしいのに?」

「どっちだよ!」


 ツッコミが不可欠だ。男を十把一絡げに性欲の権化みたいな言い方されるのは心外である。装鎧少女(エルフィン)がそういう扱いされているのも事実ではあるが。


(ま、口では辛辣なこというけど戦意は消えたな。そうじゃないと困る)


 感触でいくとレクナクはウフルバより強敵だと感じている。装鎧少女の緑の瞳を見ればかなりのバフレベルだと推察できるが、装鎧戦士(エルフィンアーマー)としてそれ以上のスペックを示している。

 彼らふうに言えば通常装着(シングルキャスト)とは思えない。理由はわからないが鋭さもパワーも他とは比べものにならない。


「あの子たち、元気してる?」

 心配げに言う。

「ぶっちゃけると、もうどの子がそうなのかわからないけど、みんなで幸せそうにしてるぜ」

「なんて無情なの。やっぱり、あんたなんかに任せておけない」

「無茶言わんでくれ。もう、小妖精(リトルエルフィン)だけで三千人越えなんだ。一人ひとりの顔憶えてらんない」

 名前も知らない子が多い。

「三千! あんた……、なんてことを」

「だから、飢えさせちゃいないって」

「そんな楽園に浸かってるとかうらやましい」


 ヨダレを垂らさんばかりに顔が蕩けている。ヤバい感じだ。前に装鎧少女(エルフィン)性愛者みたいな用語を耳にした気がするが、それの女性版なのかと思う。


「やっぱり連れていきなさい」

 女戦士は目を剥いて言う。

「無理だっつってんじゃん。ちょっとでも場所が漏れたら終わりなんだよ。すでに王国内がまわらなくなりはじめてんの肌で感じてるだろ? バレたら一気に攻められる」

「認めるわ。ここの支庁なんてもうぼろぼろ。情報網を走りトカゲで代用なんて話だったけど、トカゲも乗り手ももつわけないわ。とうに機能してない」

「どれだけ妖精種(エルフィン)に依存してたんだっていう。連中の情報撹乱のためにも先行して保護したってのもあるけどさ」

 レクナクの訝しげな面持ちは変わらない。

「まるで、妖精種(エルフィン)を保護するために動いてるって口振りじゃない」

「そっちが主旨に決まってんじゃん。人間たちのやり口は我慢ならない」

「へえ、それで」


 ようやく得心がいったという面持ちに変わった。どうやら、彼が王国や教団を攻撃するために小妖精(リトルエルフィン)を奪って放りだしていると思っていたらしい。そういえば、そんな口振りだった。


「彼女とは敵対すべきではなさそうですよ、マサキ。この子はかなり大事にされてます」

 エメルキアも忠告してきた。

「幸せだって」

「そうなのか、ランゼ? まあ、そんな雰囲気だよな」

「わたし、連れてかれたくない」


 横で装鎧少女(エルフィン)同士なにか話していると思ったら、里にと誘っていたようだ。ところが、ヒオルシアはレクナクと別れたくはないからと拒まれたという。


「なんてことを! う……、でも可愛い」

 ヒオルシアを引き止めに近づいたレクナクだったが、エメルキアにもやられている。

「絶世の可愛さ。透き通るような青い瞳。信じらんない。まるで伝説の『碧玉』」

「あなたに言われると悪い気はいたしませんね」

「ああ、この子をちょうだい。なんでもするから」

 伸ばす指が震えている。

「無理。そもそも、もう俺と契りを交わしてる」

「死んで」

「おい、無茶もいいとこだぜ!?」


 重症も重症のようだ。性的な意味は別として、妖精種(エルフィン)の、主に造形を愛してやまないタイプなのだ。そういう人間がいるとは思ってもいなかった。


「その『碧玉』ってなんだ? 青の子の総称?」

 初めて聞いたと思う。

「そう言うってことは、あんたもこの子たちの瞳の色の意味を知ってるってわけね。昔、伝説に謳われるほどだった青い瞳を持つ装鎧少女(エルフィン)のこと。全部口伝で、人によって言うこと違うから詳しいことはっきりしないけど、そういう子がいたらしいわ」

「相当珍しいとは聞いてたが伝説とかになるほどか。確かに優秀なのは間違いないと思う。よく気が利いて性格もいいのは間違いないけどさ」

「うう、うらやまし。なんか、殺したくなってきた」

 物騒なことを言う。

「おやめになってくださいね。マサキに手出しするようなら攻撃いたしますよ?」

「うん、二人掛かりなら吹っ飛ばせるし」

「うちの子はみんな性格いいからやめとけ。どっちが保護されてるのかわからなくなるじゃん」


 レクナクは涙を流さんばかりに悔しがっている。せっかくの美貌を惜しげもなく崩しているのだから、なんと言ったものかわからない。


(いつの間にか距離が近くなっているしな。エメルキアたちにやられて警戒心なんてどこかにすっ飛んでる。こいつ、こんなんで戦士やれてるのか?)


 レクナクのことがやや心配になってしまった正輝であった。

次回『巡り合いレディ(5)』 「違う意味で昇天してね?」

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