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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
すれ違いレディ

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機材更新(3)

 バイクの新調はよりやりやすい。なにせ、基本構造としては特に手を入れる部分がない。まったくのコピーを新素材で造るのは芸がないので、今回はタイプをオフローダー寄りにする。


「こっちのほうがバイクアタックとかするのに便利なのさ」

「あの曲芸みたいな乗り方でバイク同士で戦うのをですか?」

「そう。ちょっと頑丈にもできるし」


 素材が軽くなった分フレームを太くする。それでも前のよりは軽い車体になるはず。贅沢にジュラルミンでパワーユニットから組み上げていくと、拍子抜けするほど軽い。これで鉄パーツより強度が高いのだから笑える。


「マサキの世界ではこちらが当たり前なのです?」

「いや、純ジュラルミン製はないな。いろいろ問題あって」

 特にコスト面でデメリットの多い素材なのだ。

「問題?」

「素材として高価いのさ。それに硬い分加工性が低い。さらに溶接がしにくいってのもある」

「多いですね」

 列挙すると考えものと思えてくる。

「ところが、ジノグラフだと大丈夫なんだ。このとおり、流体金属(メタル)を加えてルキたちに成形してもらえば加工性はクリア。しかも、金属単一素材だと溶接しなくとも溶着してくれるじゃん。材料は当面ふんだんにあるから気にしなくていいし」

「なるほど。わたしたちがとっても役に立てていると」

「ほんと、感謝感激」


 ルイゼトネが再びベアリング製作という単調作業を頑張ってくれるのもありがたい。そこに、経験者のエメルキアと製造に手慣れたランゼッタが加わると鬼に金棒だ。


「いいけど、どうやってルキを懐柔したの?」

 ティナレルザに睨まれる。

「昨日、仲良ししたってロナが言ってたし、なんか身体全体でウキウキしてるし、なにかあった?」

「なにもないよな? 一緒にゆっくり身体を休めたからじゃね?」

「内緒です」

 口に指を当てている。

「なによそれ」

「ルキさん、意味深なことしない。誤解を招くだろ?」

「誤解じゃないです。愛を告白されました」


 思わず仰け反る。小妖精(リトルエルフィン)の目が疑いに染まった。


「うわ、最低。バイク欲しさにルキを口説いたの? クズっぽい」

 当然こうなる。

「やめろ、違う。意見の相違を解く努力をしただけで」

「嘘の愛を囁いたわけ?」

「いやいや、ロナも仲良しって言ったろ? 額面どおり、君たちに惚れ込んでるって言っただけだって」

 さらに目が細められる。

「そうやって私まで懐柔する気?」

「しないしない。本気でルーザも愛してる。もう君たち抜きじゃいられないから、俺から離れるなって話」

「ほんと、女殺しだこと。よくそれが通用するって思ったわね。私たち妖精種(エルフィン)に性差はないんだから、恋だの愛だのって感度低いと思わなかった?」


 言われてみるともっともだ。妖精種(エルフィン)はすべて女性体だといってもいい。生物の基本形態ではあるが。


「確かに。でも、精神的には君たちのほうが成熟してる感じがする。性差どころか、種の壁さえそれほど高いとは感じてなさそうな気がして」

 結果として取り払うのは難しくなかった。

「意外と的を射ていること。精神的な壁は低いわ。だからこそ、近づきすぎて自我侵食なんてことも起きちゃう」

「だったか。俺は精神的な壁が高いから、変身しても話せる距離なんだな」

「ジノグラフの人間も壁は低めなのよ。感応力を要する魔法を使うためかも。マサキが魔法を苦手なのはその所為なんじゃないかって私は予想してるの」


 物理現象に作用するのがこちらの世界の魔法、つまり念動力(サイコキネシス)である。干渉力を用いるのに、人間や妖精種(エルフィン)も高い感応力を持っているという。


「面白い分析ですね」

 エメルキアも感心している。

「思いもしなかった。ルーザ、すごい」

「そんなでもないわよ。こんなに気持ちが傾いてもマサキはどうして反応しないのかって考えてたら……、あ!」

「いやー、モテる男はつらいなー。ごめんな、わかってやれなくって」

 飛んできたティナレルザに「謝るな!」とキックされた。

「精神障壁は強固なのに、精気は際限なしの泉みたいに湧いてくる。マサキは本当にわたしたち向きにできてますね。ズルいです」

「ほら、すっごくお仲間向きだろ? 言ってるじゃん」

「そうやって口説いたわけ」


 ティナレルザには呆れられるが、作業は順調に進んでいる。パワーユニットの部品とかは白銀の地金のままにしたが、フレームやボディパーツは流体金属(メタル)の特性を活かして発色させてもらう。ベースカラーは緑だが、要所に変身後のボディカラーみたいに黄色や赤などを入れた。


「本体はだいたい仕上がりだな。あとは乗用としてのパーツだけど」


 シートは撥水処理した革製にするしかない。クロスカントリー車のように車内に収まってない以上は、水濡れはどうしようもないからだ。


「それとカウルか。また木ヤニ樹脂ってのも芸が無いな。せっかく、プラスチック系の材料が扱えるようになったのに」

 考えどころである。

「ぷらすちっく?」

「ああ、ポリエステルな。広い意味でプラスチックって分類なんだ。これには硬いのも、とても硬いのもある。そっちに振れないかなって」

「硬く作るんですか。やってみます?」

 協力的なエメルキアに頼りきりになってしまう。

「できれば。どうイメージすればいいかな? ポリエステルやスパンデックスみたいに連なり方が違うんじゃなくて、ぎゅって繋がってる感じじゃね?」

「繋がってる……」

「金属みたいな繋がり方してるイメージじゃないかな?」

 ランゼッタの提案に皆が頷く。


 マサキは期待を込めて彼女たちの作業を見守った。

次回『機材更新(4)』 「こんな森の中に……か?」

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