機材更新(1)
ついでに流体金属も大量ゲットして妖精種の里に戻ってきた正輝たち。ようやく寿司詰め車内から解放された小妖精は、あまりに多くの同胞が住まう里に目を丸くしていた。
「お帰りなさいませ、マサキ様」
「お疲れさま」
テアクルセとピトレスカが迎えてくれる。
「そっちこそお疲れさん。大事なさそうじゃん」
「はい、特に問題はございません」
「滞りなく進んでる。集団生活なんでいろいろとあったりするけど」
どすんと体当たり気味に抱きついてきたのはルイゼトネである。ちょっと瞳が潤んでいるのは、慣れない生活に不安を抱えていたからか。日々馴染んでいくところへ、彼の顔を見て少し以前の不安を思いだしてしまったようだ。
「ただいま、イーゼ」
「お帰り、マサキ」
頭を撫でてやると晴れた面持ちになる。
「調子はどうだ?」
「油断すると、ぼーっと、しちゃう。テアに、教えてもらって、憶えてる」
「イーゼさんは器用ではありませんが、やることが丁寧です。頼りになるようになってきましたよ」
自分のペースで居場所を作っているようだ。元はテアクルセが生みだした空気だった里も少しずつ変化はしている。
「今回は特に土産はないんだけどさ。王国の子がたくさんと、元装鎧少女が一部だな。労ってやってくれ」
連れ帰った小妖精は早くも里の子に手を引かれてほうぼうへ。
「教団出身の子に比べると少し自由な性格ですのですぐに馴染んでしまうでしょう」
「教団や民間にいた子は心が傷ついてたりしたもんな」
「一番残酷な扱いを受けてきた子たちですので」
個々の性格はもちろんあるが、傾向として王国管理の子、民間の子、教団にいた子の順番で奔放さが高い。元から里にいた子がその上にいるが別格だ。里の子が変にエリート意識を持つかとも懸念した正輝だったが、まったくそんな感じはなく仲良く暮らしているふうだ。メンタルの在り方が人間とは違うのだろう。
「こら、慣れてない子をあんまり引っ張りまわさないの!」
メルメシルが叫んでいる。
「一番苦労してるのはメルかもな」
「あの子は心配性で面倒見がいいですから。わたくしたちで愚痴を聞いてあげれば満足します」
「いろいろ、ごめんな」
苦労がないとは言わない。
「とんでもない。どこの子だって、なんの心配もないここでの暮らしは楽園です。すべてマサキ様が作ってくださったんですよ?」
「俺にどうにかできたのは場所だけさ。みんなで幸せになるのはそれぞれの努力の結果だろ?」
「それでも、皆が一番頼りにして慕っているのはあなた様なのをお忘れなきよう」
彼の充填したスピリットシャフトに大勢がたかっているのを見ると、慕われているのは自身なのか精気なのかは考えものな気もするが振り払う。帰ったばかりで疲れている正輝への気遣いなのだろう。
「ちょっと休む。今回は王国と派手にやらかしちったから、さすがに疲れた」
「ええ、お休みください。あまりベッドでとはいきませんでしたでしょう?」
「そうだな」
我が家で風呂に浸かってベッドに身を横たえたと思ったら気を失うように眠っていた。目覚めると、いつの間にかエメルキアにランゼッタ、ルイゼトネが添い寝している。ロナタルテとティナレルザも胸の上で大の字になっていた。
「ふう、この感じは久しぶりな気がするな」
水色の長い髪に指を通すと気持ちよさそうな寝息が伝わってくる。同道メンバーは常に緊張感にさらされていたようなものだ。意識せずとも疲労は蓄積していたのが、家に帰って気が緩んでいる。
「マサキ、起きたのです?」
エメルキアが目をこすりながら身を起こす。
「腹が減って目が覚めた。エネルギーが足りない」
「お食事、頼んできましょう」
「準備できておりますわ」
テアクルセが気遣いしてくれている。小妖精を抱えてダイニングに移動すると、テーブルを埋め尽くさんばかりの料理が並べてあった。
「ありがと。いただくよ」
「はい、たんと召しあがってください。見るのを楽しみに待っておりましたので」
「ひとが食ってるの見て満足するだけじゃなく楽しもうぜ」
正輝はなんの遠慮もいらない食卓を楽しんだ。
◇ ◇ ◇
「今回はちょっと長居する」
改めて正輝は宣言する。
「というのも、機材の更新をしたいから。具体的には、クロスカントリー車を造りなおす」
「不足なく動いてくれている気がしますけど」
「ラゲッジスペースが狭い。その所為でずいぶんとランゼには苦労を掛けた。他の理由もあって、改造するよりもう一台造るほうが早いと思ってさ」
構想がある。
「他の理由って?」
「良い質問だ、ランゼ。この前、ミョウバン石からアルミができただろう? アルミと鉄、他諸々もあるからジュラルミンが作れる」
「じゅらるみん?」
アルミ系合金の最たるものといっていい。軽量高強度の合金は、身近なところだとトランクケースから航空機材の素材として広く活用されてきた。
日用品となると近年は強化プラスチックに押されているが、高強度を必要とする車両などにはまだまだ用いられる。コスト面の高さを無視すれば、金属材料としては最適解なのだ。
「つまり、軽くてもっと強いボディ他もろもろのクロスカントリー車が造れる。仕組みもちょっと変えるから、より便利な車になるぞ」
「面白そう。やる」
真っ先に賛成してくれるランゼッタと正輝は手を合わせて明日からの予定を語った。
次回『機材更新(2)』 「失敗できないもんね」




