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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
すれ違いレディ

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西部周遊(3)

 正輝たちが東へ向かう道すがら、通り掛かった街で不穏な情報に触れる。それは獣肉の仕入れ状態が良いという話から出てきた。


「なんで獣肉が入りやすいと困るんだ?」

「ハンターが狩りやすいってことは、獣たち、特に肉食獣なんかも森の浅いとこまで出てきてるってことだろう? つまり森の奥でろくでもないことが起きてる予兆なんだ。昔から凶暴な大型肉食獣なんかが流れてくるとこういう事態になる。最近だと、メタルビーストがいるんじゃないかって、まことしやかに噂されてる」

 事象は絡み合っている。

「なるほど。で、ここは流体金属(メタル)の流通具合はどうなんだ?」

「察しのとおりだ。メタルハンターもいるし、狩り場もあるらしい。あっしら、街の商店主の寄り合いで長殿に討伐隊の派遣を頼んでもらえるよう打診してみたんだが」

「首尾はよくないと。そりゃそうだな。起きてもいないことに人手は割けない」

「でもな、起きてからじゃ遅いんだよ」


 気前よく買い込んだので口もよく滑る。彼にとっては非常に有益な情報をくれたので買い足しもして店主を喜ばせておいた。


「行ってみるか」

 エメルキアが窺ってくるので期待に応える。

「狩り場を荒らすわけにはいかないけど、メタル進化種は横取りしてもいいよな。どうせ手に負えないじゃん」

「もちろんです。ここの方々にも喜ばしいことでしょうし」

「ついでにルキも喜ばしいから一石二鳥な」

「意地悪です」


 そんな話があって一行は直接妖精種(エルフィン)の里に向かわず寄り道をしている。森の近くに着いたらロナタルテとティナレルザに飛んでもらおうかと考えながらバイクを走らせていた。


「時間掛かるかもな。なんたって獣が多い噂だけで狩り場がどこかもわからない。メタルハンターを探して尾ける暇もないし」

「みんな調子いいですし、何人か飛ばせて手分けして捜索もいいかもしれません」

「そんな感じでやってみるか」


 エメルキアと相談していると予想外のことが起きてしまった。問題が向こうから転がり込んできたのである。


「なんだ? でかい……、ってメタル進化種じゃんか! 走ってくるぜ?」

「冗談みたいです。イノシシ形態ですね。とっても速い」


 と言っているうちにバイクとすれ違った。慌ててスピンターンすると、イノシシのメタル進化種は方向を変えてランゼッタたちの乗るクロスカントリー車に向かう。


「いけません。車に乗ってる流体金属(メタル)に反応してます」

「ヤッベ、気持ちの準備もないままにかよ。ビルドイン!」


 車に逃げろと合図しつつ変身する。U ターンして逃げに掛かるランゼッタだが、メタルイノシシの突進力の前に追いつかれて体当たりをされた。


「このやろ」

 小妖精(リトルエルフィン)満載の車内から悲鳴が聞こえる。

「こっちだ! 釣られろ」

(精気に反応しました。来ます)


 鼻先でもう一度スピンターン。タイヤを当てて牽制すると、前足を掻いて威嚇を始めた。すぐにバイクを降りて攻撃に入る。


「ボリュームあるな。かなり重たそうじゃん」

(ええ、とってもいっぱい流体金属(メタル)が穫れそうです。わくわく)

「ご機嫌ですね、ルキさん」


 突進してきたメタルイノシシの鼻面にフックを入れようとしたら、予想以上にスピードがあって撥ねられてしまう。いつの間にか宙を飛んでると気づいた正輝はわりとショックだった。


「マジか。シングルでいけると思ったのに」

(獣のメタルは魔法力にこそ劣りますが、パワーとスピードには優れてますよ?)

「余計な痛い思いをしちまった。デュアルビルド」


 ランゼッタの増援も受けて二段階目の変身。宙返りをして着地する。


(マサキ、飛んでるからびっくり)

「ごめん。嘗めてた」

(いいよ。痛くない?)

「めっちゃ痛い。肋やられた。治してもらったけど」


 脇腹の激痛は本物だった。このところ装鎧戦士(エルフィンアーマー)ばかり相手していたから油断していたようだ。本能的なパワフルアタックに圧倒されてしまう。


「痛いじゃんかよ。お前は俺の栄養にはならないんだから、ちっとは遠慮しろよ」

「ぶるる!」

(通じませんよ。彼らは流体金属(メタル)と精気にしか見向きもしません)

「頭のほうはあまり進化してるとは言えないって?」


 再び突進してくる。感覚を思いだしつつ迎撃。パンチをくり出すと見せかけて、激突寸前に前脚を払って転ばせる。横転してゴロゴロと転がっていった。


「工夫しないと俺には勝てないぜ?」

「ぶるるん!」


 今度も突進してきたが、直前になって首を振って牙で突こうという構え。全身にもトゲが生えてきて、突き飛ばしたところを一気に串刺しにするつもりのなのだろう。


「そうは問屋が卸さないってな!」


 牙を躱してから意表を突いてしゃがみ込む。顎の下に肩を入れると気合を入れた。


「うおおりゃあ!」


 担ぎ上げつつ、そのまま後ろ倒しに。メタルイノシシを頭から地面に突き刺す。ひしゃげた頭が抜けなくなってジタバタと暴れる。体重が重いのがマイナスに働いた。


「気づくのがちょっと遅かったな」

 地面にトゲを飛ばして頭を抜こうとするイノシシ。

「サイコブレードエクステンド」


 コアを貫き退治する。サイコブレードを消すとその場で形を失って溶け崩れていった。


(早く解除(リムーブ)してください。一滴たりとも地面に吸い込まれてはいけません)

「はいはい、お待ちを」

(ルキ、せっかち)


 意見をされながら正輝は変身を解除した。

次回『西部周遊(4)』 「それ以前の値段じゃない」

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