マサキ対ウフルバ(7)
戦闘開始当初の激しさのない戦士団に正輝はほくそ笑んでいた。サイコブレードエクステンドにせよヒートミサイルにせよ、装鎧戦士相手では決め手にはならない。しかし、ダメージにはなる。いつ来るかと思わせればいいのだ。
(このへんは試合の感覚と同じ。手札を隠しておくのもいいけど、多くをさらして迷わせるのも手。相手により多くを考えさせたほうがいい)
よくないのはセオリーを踏みつづけること。相手に読まれやすく、ひっくり返すポイントを作りやすい。逸れようのない道に入ってからの最後の詰めであればいいが、序盤から中盤で多用するものでない。
(知り尽くした相手じゃそうはいかないけど、幸いジーギラ戦士団とはバトル初顔合わせ。しかも、俺はこっちの剣技のセオリーなんて知らないときてる。利用しない手はないじゃん)
そういう意味では最初から手のうちをさらしすぎるのはよくないとも言えるが、目の前の一戦一戦を負けられない状態では小出しにもできない。次に当たるまでは成長している自分を信じて戦う。
「ヒートミサイル」
焦点を絞るのに意識の集中を要する念動力は白兵戦中には避けたいものの多用しても消耗が少ない。比してエクステンドは使いやすいが一時的な消耗が大きくて多用すべきでない。
「バランスバランス」
(ターゲッティングも早くなってきましたし)
(威力調節も)
「だろ?」
近くで使うには、離れた位置の車を吹き飛ばすような威力はいらない。敵を跳ね除ける、あるいは出足をくじく程度の爆発でいい。自分に被害が及ぶのなど論外だ。
「どういう理屈で爆発してんだ」
「こんな土魔法見たことないんだけど」
戦士たちは苦慮している。
双剣で弾き反撃も来るうえに、いつ足元が爆発するかわからないでは踏み込みも浅くなろうというもの。斬撃の威力が弱まれば逸らすも避けるも容易になる。
通り過ぎた一撃の背を押すように小さく叩く。剣に引かれて泳ぐボディにわざとテイクバックの大きい斬撃を見せる。相手は跳んで避けるしかない。
「あたしたちがこんな手数を掛けさせられる奴なんている?」
「屈辱です」
「ちっとは食らうつもりでいかねえと打開策ねえぞ」
(迷えまよえ。苦しむほど俺が有利になる)
正輝はできるだけ多彩なパターンを駆使する。
「ふん!」
「げ!」
ただし、要注意なのはウフルバである。名だたる戦公だけあって、これまでの手練れとも比較にならない攻撃力だった。
こちらの重心を正確に狙う一閃は避けるだけでは足りない。斬線にサイコブレードを飛ばして逸らす。変化して跳ねてくる攻撃にももう一方の剣を用いねばならないほどだ。
(この嫌なプレッシャーはなんだ? いつぞやの教団戦士に通じるもんがある)
アンブッシュを仕掛けてきた女性に似たような怖ろしさを感じる。
彼を相手にするには片手では足りない感じだ。ならば、他のメンバーに対処する手数が使えなくなる。ウフルバの間合いにいるのは最低限にして、他の戦士から片づけるのが得策だ。
「でも、こうも粒揃いじゃな!」
「それ、褒めてんの?」
「集団リンチに苦言を呈してるの」
「その言い方よくない。真剣勝負でしょ?」
真っ当な方法で打開策がないのは彼も同様。
ウフルバから遠ざかりつつシュミクの連撃を小さく弾きつづける。決して突き放したりはしない。誘いに乗ってくれねば困る。
勢いのついたところで剣を絡める。重心を前に出す感覚で踏み込むと、そこから足を跳ねさせた。キックが来ると思った彼女はバックステップ。
「なあ!?」
キックはフェイクで、振りあげる足についてきたのは土壁である。念動力を足先に宿し、持ちあげて形成したのだ。
接触している面のほうが念動の効きはいい。瞬時にそれなりのサイズの物も作れる。できたのは土の盾だ。
「こんなもの!」
防ぎたかったのは攻撃ではない。シュミクの視界である。一撃で打ち砕かれる盾の裏に正輝はひそんでいた。砕けた土を浴びるのも厭わず、彼女の懐に入る。
「うそっ!」
「もらい」
素晴らしい反射神経で回避しようとするが彼の踏み込みのほうが速い。腰から肩までのラインを斬撃が行き過ぎる。まずは悲鳴と、ワンテンポ遅れて血が舞う。
「致命傷ってほどじゃないか。エクステンド」
救援しようと突っ込んできたイソポはあまりに無防備だった。遠間からの斬撃を重さ任せに落とす。どうにか剣で受けたが、押されて肩口から鎖骨を断って肺あたりまでのダメージ。
「引いて癒やせ」
ウフルバが即座に指示を飛ばしている。
装着時のメリットで肉体の急速回復は行われるものの、プロテクタは回復しないし失われた血も戻らない。しかも、装鎧少女はダメージに応じて消耗する。戦闘復帰は難しいレベルの損傷のはずだ。
「曲芸みたいな真似を。戦士として恥じろ」
「知らないね。あんたのお目に適う敵でいるより今勝つ方法を選ぶ立場じゃね? ま、それくらい追い込んでると思えよ。サイコブラストシュート」
身体の重い大柄なボダハと、俯瞰で指示出しをしていたテノコトは遅れている。ボダハと斬り結んだところで真正面に収束したサイコブラストを浴びせた。威力調節と同時に焦点集中も上手になっている。
収斂された衝撃波は年配戦士のブレストから周辺のプロテクタまで砕いて破片にした。装鎧少女の制御から外れた欠片は光の粒となって飛散してしまう。
「遅い。エクステンド」
「ぬう!」
カウンターでサイコブレードエクステンドを突き刺す。咄嗟に剣を放りだして切っ先を両手で掴んだまではテノコトの好判断だ。しかし、切っ先は背中近くまで貫いている。
「かはっ!」
血の筋を引きながら倒れた団員は放ってブレードを消す。立て直す時間も与えずウフルバが肉薄していた。
「味方を思いやってやれよ」
「致命傷でないのは見定めている」
正輝は紫髪紫装の戦公と斬り結んでいた。
次回『マサキ対ウフルバ(8)』 「強欲じゃん」




