マサキ対ウフルバ(6)
ウフルバもマサキの使っている光る剣の正体に関しては薄々気づいている。理屈的には誰にでも可能ではないかと思えるものだ。ただし、魔法的なものなのでかなりの消耗を覚悟しなくてはならない。
それを両手に持つどころか、一時的にとはいえ引き伸ばすのは正直あり得ないことだと思った。想像していた理屈が間違っていたかと勘繰るほど。もし、そのままの状態を維持できていたならば考え直すしかないが彼はすぐに解除した。
「あんなの、手出しできないし」
「そうだな。突きだされたら飛び道具と変わらない。重さを伴ってるだけ弓矢よりタチが悪い」
「どうする?」
戦士団メンバーは困惑している。不用意に踏み込めなくなった。装着のメリットはパワー含め身体能力アップの一面が強い。魔法力も上がるが、単純に制御力がアップするだけなので近接戦闘のほうに大きく偏る。なので、剣を用いた戦法がマッチするとされている。
「聞け。勘違いでなければ、あれはごく短時間しか維持できんはずだ」
ウフルバは告げる。
「そうでしたか。ずっと使えるのでなくばやりようがあります。初撃だけ外せば踏み込めますね?」
「っと、そんな早合点していいのかなぁ? 誰も使いつづけられないなんて言ってないじゃん」
「ブラフだ。臆するな」
マサキがキーワードとともに振りまわした光の刃をイソポとボダハがジャンプして躱す。反対にいたシュミクがテノコトの号令とともに駆け寄ろうとした。
「ヒートミサイル」
剣を向けられた瞬間、彼女の足元の地面が爆発する。土くれと衝撃に吹き飛ばされたシュミクはどうにか上空で体勢を立て直して足から着地した。しかし、出鼻を殴られた経験は痛い。
「なんなの。こっちは伸びないけど魔法を同時展開できるじゃないさ。どうしろってのよ」
「む、それは使わせてみないことにはわからないことだ」
「自分の身体で実験しなさいよ、テノコト。結構痛かったんだから」
メンバーカラーのオレンジのボディが埃まみれになっている。払う仕草をしつつ参謀役の男に文句を言っている。仕方なく、一人だけ紫のボディをしているウフルバも前に出た。
「いがみ合っている暇はない。強敵なのだ」
「でもさ、ウフルバ様」
「マサキは我らを遠ざけたがっている。要するに、連携の取れた連撃を受けつづけるのは厳しいと思ったからに他なるまい? ならば、どうすればいいかは自明の理」
マサキの攻撃を縫って間合いに入るのが順当と言っている。それも、連携の取れた形で。つまり、敵の攻撃を見切らなければいけないと、テノコトと同じことを言っているにすぎない。
「うへえ、難儀なこと」
「我慢しろよ。大将がいいこと言ってくれてんだからさ」
「敵のあんたに言われる筋合いはないわよ!」
忠告してやったのに怒られていた。
いつの間にか周囲に包囲陣を作っていた戦士や魔法師団の車が集まってきつつある。彼ら戦士団が攻撃中なので遠隔攻撃は控えているようだ。
「あまり時間はないってか」
マサキも気にしている。
「言っとくが、車に手を出したら俺もキレっからな? ちゃんと言っとけよ。あれには小妖精しか乗ってないんだから」
「約束しよう。貴殿が逃げようと乗り込まないかぎり、車には手出しさせない」
「人質にもなるってか? 上等じゃん」
戦士を一人呼び寄せて徹底させる。
事実、シュラウナを下したときの勢いで、今の多彩な攻撃をくり出されると手に負えない。彼らはもちろん、魔法師団にも無差別に攻撃しはじめ、甚大な被害が出るのは試すまでもない。
「来いよ。聞いてくれた分、きっちり相手してやるからさ」
「よかろう。今日はとことん付き合ってもらうぞ」
ウフルバは今日このときしかないと思っていた。実は先刻から感じていたのだが、すこぶる調子がいいのである。いつもよりずいぶんとボディが軽い。何割増しかで思いどおりに動けている気がする。
ただ、その原因がなにかわからない。いつもと違うことはしていないのだ。ゆえに体調がいいとしか思うしかない状態なのである。
(原因さえわかればキープできるものを)
思い返すも、特に変わったことをした覚えがない。
(しかし、この軽さは惜しい。調子がいいで語るにはかなり上乗せされすぎていると思える。まるで、初めて装着したときの全能感に近いものを感じている)
だとすれば、装着によるバフ効果が上がっていると考えてもいいかもしれない。調子がいいのは彼ではなく装鎧少女の可能性も浮上する。エノカリスになにか違う様子はあっただろうか?
(そういえば、出立のときから妙に甘えていたな)
バイクに乗せてやり、彼にすがってきても許してやった記憶がよみがえる。
(あれがエノカリスの機嫌を良くしたのか? 装鎧少女の機嫌がいいと装着後の能力に変動が出るだと? ならば、これは大きな要因だ)
もしそうなら、極めて手軽な手段で強化が可能なのだ。思い起こせばマサキはずっと装鎧少女や小妖精に優しく大切にしている。それが彼の強さの素因であるならば納得できる。
(しかし、それはマサキの思うツボではないか)
そうも感じる。
(装鎧少女に優しくするほど強くなる。いや、そんな考えを広めようとしても誰も受け入れるまい。最悪、教団に異端の怖れありと断じられる可能性も。私だけで少しずつ確認がてら試してみるくらいか)
ウフルバは新たな思いつきを意識の隅に置いた。
次回『マサキ対ウフルバ(7)』 「でも、こうも粒揃いじゃな!」




