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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
ウフルバ包囲陣

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マサキ対ウフルバ(4)

「戦公様!」


 メンバーの警告がシュラウナの耳に届いたときには手遅れだった。コマ落としのように若き戦公の前に移動していたマサキが彼の顔面を掴み、地面に叩きつけている。「がぼぁ!」と悲鳴が聞こえたのみ。


「ふざけたことするじゃん」

 マサキの声は怖ろしく低い。

「別に剥ぎ取らなくたって、ここであんたを殺せば経路は閉じるんだろ? じゃあ、死ね」

「ひぅ」

「自身の愚かを呪えよ?」

 指が皮膚に食い込む。

「痛い! やめろ! 装着!」

「あくまで肩代わりさせようって?」

「悪手を」


 ウフルバが落胆の声を投げ掛けたとて手遅れも甚だしい。装着者であるシュラウナの傷は癒やされただろうが、マサキの前に無防備なボディをさらしているにすぎない。「サイコブレード」と唱えるとともに、その手に光る剣が現れると胸の真ん中に突き立てられて終わった。


「あぎゃあぁ!」


 長い悲鳴が響いただけで、シュラウナの装着は解かれ光が小妖精(リトルエルフィン)を形作る。マサキはもう一度光の剣を突きおろすだけでよかった。


「ふぐぎゃ! ……あ……あ」

 今度こそ事切れる。


 呆然としていた戦士団メンバーも光が二つの円弧を描いただけで装鎧戦士(エルフィンアーマー)でいられなくなってしまった。デゼン戦士団は全滅だ。


「こいつに馬鹿を吹き込んだのはあんたか、ウフルバ?」

 掬い取った小妖精を後ろに飛び立たせたマサキがゆっくりと振り向いてくる。

「そんなことをさせるつもりは……、いや、軽挙だったのは詫びよう」

「今度同じことやってみろ。死体も残してやんないからな?」

「わかっている。義にもとる行為だったのは認める。気をつけさせるから無茶はよせ」


 仮面の戦士から放たれる怒気は凄まじいものだった。鍛え抜かれた彼の戦士団メンバーさえも凍りつかせるほどの威圧感がある。

 互いに作戦を講じて戦っているとはいえ道義に反する行為は謹んでいた。マサキだとて、王国戦士団の猛攻から身を防ぎたくば、どこかから市井の民を連れてきて盾にすれば彼らが手を出しにくいと知っている。


(それをしないのは、マサキが手段を選ばず王国や教団を撃滅しようとしているのではないからだ。シュラウナはレッドラインを踏み越えた。致し方あるまい)


 死を憐れむ気持ちはあれど同情はできない。戦闘中でも、やっていいことと悪いことは厳然と存在する。破ればエスカレートするだけのレッドラインが。


「二度と言わない。容赦なく報いを与えるから忘れるな」

 マサキは息を吐いて仕切り直す空気を醸しだしている。

「やはりこいつは危険です、閣下。サポートいたしますのでこの場で決着を」

「珍しいな、テノコト。お前が弱音を吐くとは」

「弱音というわけでは。確実に任務を遂げるのならばという提案でございます」

 言い訳とは思わない。

「うむ、その判断は正しい。いつも正確で助かる」

「では」

「じゃあ、本気出していいってことですよね、戦公殿?」


 傍観していたのはイソポ・ゴルサである。戦士団メンバー四人目のこの優男は、戦闘においても野暮を嫌う。彼が戦えと命じないかぎりは、他の戦士団の戦いに手出しはしない。


(女には甘いし、義にも厚いのだが、どうにも扱いにくい男だな)

 それがウフルバのイソポに対する感想である。


「閣下を中心に我ら四人が揃えば他の戦士団のようにはいかないぞ、マサキ・コーノギ?」

「わかったわかった。空気が悪いからってもう逃げたりしないからさ」

 仮面の奥で気持ちは切り替えられたようだ。

「でもな、真っ当に戦うにはちょっとヤバそうだから試させてもらう」

「なにをする気だ?」

「いや、全然使えないってわけじゃないんだが、こっちの流儀に合うかどうかわからなくってな。ま、今のパワーなら打ち負けないだろ。サイコブレード」


 マサキの左手に二本目の光る剣が現れた。これまで確認できていなかった戦法である。


「貴殿、双剣使いであったか」


 ウフルバは本気を引きだせたことを内心で喜んでいた。


   ◇      ◇      ◇


 スポーツチャンバラ選手だった頃の正輝は二刀流だった。それもオーソドックスな、利き手の右手に長剣と左手に防御の小太刀を使うものではなく、両手ともに長剣を握るもの。

 一般には、重さに引きずられてスピードに劣る流儀とされていたが、彼は好んで使っていた。しっかりと鍛えていれば、左右の両スタンスで十分な間合いを実現できるのだ。


(そんなこともできたのですか?)

「まあね」

(興味深いかも)

 ランゼッタは好奇心に駆られている。


 使ってこなかったのは、ジノグラフの剣技が本格的なゆえに片手で受け止めるのに不安があったからである。やはり、真剣の一撃で防御を突破されるのは怖ろしいものだ。スポーツチャンバラのように当てればいいというものではない。

 しかし、ランゼッタと二重変身をしたパワーフォームは四肢の膂力が格段に上がっている。こちらの剣技相手でも攻守ともに十分なパフォーマンスが発揮できるのではないかとチャンスを窺っていた。


「ウフルバたちならどれだけ通用するか試すに十分な相手じゃね?」

(実戦では遠慮していただきたかったですけど)

(でも、試せる相手もいないしねー)

「面白い。受けて立とう」


 エメルキアやランゼッタの意識は伝わっていないが、誤解はないので正輝はそのまま受け取ってもらうことにした。

次回『マサキ対ウフルバ(5)』 「俺の心情を汲んでくれる愛はないのか?」

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