マサキ対ウフルバ(3)
シュラウナは将来有望な新鋭戦公と謳われるだけはある。戦士団メンバーを卒なく指揮しつつ、自身の鋭い攻撃も織り交ぜていた。しかし、マサキも危険と思う攻撃は確実に弾きに来てるのをウフルバは察している。
「鍛えられている。いや、鍛えてしまったか、王国と教団の刺客が」
初めて会ったときの黒髪の男に戦士のギラギラしたものは感じなかった。人間相手での戦闘も生業とする人種の空気ではなく、狩人のそれに近かったと思う。
しかし、今のマサキは人間相手でも腰が引けているところは微塵も感じられない。クレバーに対処し、勝機を見定めているような気配さえある。
「あいかわらずギラついた欲は見せてこないが」
戦士二人が両サイドをすり抜けるように横薙ぎを放っていく。背後には体勢を崩したところへ致命的な突きを狙う一人。上か下かに躱すしかない状況でマサキはショートジャンプを選択した。
そして、両側の横薙ぎの刃に踵を合わせて背後に跳びながら後ろの戦士に肘打ちを食らわせる。面食らったメンバーは味方の勢いで加速された一撃でブレストを大きく破損させられていた。
「無茶苦茶を!」
マサキは勢いのまま肘打ちした戦士の背後に後転して着地。追い打ちを防ぐと、背中からトドメのパンチを打ち込む。脊椎を損傷するような攻撃を食らったメンバーは宙を飛ぶと倒れ伏し、光を放って装鎧戦士の資格まで剥奪されている。
「く、怖れるな。まだ一人やられただけ」
シュラウナは発破を掛けているものの、わずかに浮足立った空気が流れる。メンバーは仲間を失う経験をあまりしてこなかったのだろう。戦公が使いやすさゆえに若い戦士を集めたのが裏目に出ている。
「引くな! 踏ん張れ!」
ボダハの覇気のほうが彼らを動かす。
一斉に突き掛かる戦士たち。しかも、やや斜め下に向けた切っ先がジャンプ以外の選択肢を与えないように。跳べば、本命の一人が斬り掛かる作戦だ。
「サイコブラスト」
しかし、マサキはしゃがみつつ衝撃波を放つ。押されて仰け反った身体が放つ突きは上に逸れてしまって彼の身体に届かない。逆に大きな隙を作り、前後に放たれたパンチとキックでプロテクタの破片を撒き散らしつつ飛んでいく。転がった身体からは小妖精が生みだされていた。
「つ、強い。これが二重装着者なのか」
「臆すな! 敵を休ませてどうする!」
そうは言うも、デゼン戦士団は残り四名となってしまっている。連携するにもあまりに強敵相手では厳しい数字が近づいていた。
「畳み掛けるの!」
こういうときに思いきりのいいシュミクが先陣を切る。ジーギラ戦士団メンバーが加勢してくれたのに背中を押されたデゼン戦士団の四名は再び足を動かしはじめた。
「ほんとにあの色男が中身なわけ? 坊やだと思ったのに」
「あんたはあのときの女戦士だな。まあ、大人げない態度を見せたからそう思ったんだろうが、とうに吹っ切れてるぜ? まとめて潰してやるしかないんだろうってね」
「可愛げのない!」
シュミクの勢いが増す。デゼンの戦士は追いつくのもままならないほど。連撃が二人の間で火花を散らし、弾けた剣と拳の残像が見えるのみ。ひと際大きな激突のあとに、互いにかざした手が魔法衝撃を放って両者とも跳ね飛ばされる。
「出すぎるな、シュミク」
「手に負えてないじゃないの、テノコト」
「加勢はありがたいが、我が戦士団の獲物を奪わないでもらいたい!」
シュラウナまでも参戦すればマサキを中心に混沌としてくる。息の合わない連携が互いの足を引っ張るのだ。
「乱すな。引け、シュミク」
ウフルバが命じれば下がるしかないだろう。
「それはないんじゃない、戦公殿?」
「お前なら相手できようが、デゼン戦士団を動きにくくさせてるだけでしかない。立て直したなら援護に徹せよ」
「無理よ、あれ。やられちゃう」
手応えを報告してくる。
「デゼン公も素人ではない。全滅が見えてきたら救援を求めてくる。そのときに前面に立つのがお前たちなのだ」
「まあね。デゼンのは最初っから引っ張られて崩されてたから、もう完全には持ち直せないでしょ」
「このまま攻めてもらえばいい」
彼は半ばあきらめていた。デゼン戦士団はすでに総崩れ寸前だ。ここで下手に入り混じっても、むしろ彼の戦士団の枷になるだけだろう。頃合いで退かせればいいと思っていた。
しかし、見計らっていたのはマサキも同様であったようだ。シュミクが引くと同時に押してでる。瞬く間にまた二人が剥ぎ取られ、残る二人もシュラウナのサポートをするので手一杯という感じである。
「この! 馬鹿にしているのか!?」
シュラウナが吠える。
「それだけの実力があるならどうして奇襲を掛けなかった? 俺の戦士団相手なら正面からでも十分だとでも思ったか」
「つまらない遠慮なんかしてないって」
「待て。貴様は装鎧少女に直接攻撃できないんだったな? 出征前に戦公ウフルバが申されていたぞ? ならば、こうすればいいのではないか」
仕掛けようとするマサキの前に、シュラウナは装着解除して立つ。装鎧少女の頭を掴んで盾にするかのように。
「やれ!」
立ち止まったマサキへ、残り二人に攻撃を命じる。
「よせ、シュラウナ! それだけは駄目だ!」
「は?」
ウフルバの警告にシュラウナはなにを言われたのかわからない様子でこちらを見てきた。
次回『マサキ対ウフルバ(4)』 「あくまで肩代わりさせようって?」




