マサキ対ウフルバ(2)
ウフルバが初めて見るマサキの仮面は情報どおり奇抜なものだった。しかし、ボディはごてごてしたハリボテではなく、理に適った洗練されたものに見える。
王国戦士のそれに比べて黒い柔軟スキン部分が多く、むしろ格闘アクションに向いていると思える。プロテクタも重要な部分は重厚に配置されていて、見せかけではない。
「よう、ウフルバ。直接対決は初めてだな?」
マサキは油断なく構えながら言ってくる。
「私としては、とうとうこのときがやってきてしまったかと思っている」
「いずれはって感じだったぜ? 初めて俺を見つけたときに、ひと思いにやっておかなかったのを後悔してもらうしかない状況になったな」
「あれに関しては悔いてない。貴殿というものを知っていたからこそ、今の状況が作れている」
そうでなければシュラウナ同然突進していた可能性もある。
「なるほどな。すべて神様の思し召しとでも言うか?」
「貴殿はそれが最も忌み嫌うものだろうがな」
「よくわかってんじゃん。やりにくいぜ」
普通は相手を知るほどに有利に働く場を作れるものだ。しかし、マサキに関しては常にそれを上まわってくる感触がある。怖れ、警戒するのはそんな部分なのだ。
「貴様、なにを偉そうに戦公ウフルバに対し口舌を垂れている。我が戦士団も一人も欠けていないし、王国最強の誉れも高いジーギラ戦士団を前にしているのだぞ? 降伏するなら今のうちだ」
シュラウナは睨みつけている。
「それを言うなら、今コタカッタ王国に俺以外の二重変身できるやつはいないんじゃね? そっちこそ降参するなら今のうちだぜ?」
「よく吠える。それでこそ剥ぎ取り甲斐があるというもの」
「でっかく出たな」
首を鳴らす仕草をしている。
「あの女戦士は堂々としてたぜ。真正面から打ち掛かってきた。最強の戦士団とやらの余勢を借りて脅してくる小物に怯える俺だと思う?」
「よくも! 愚弄したこと悔いても遅いぞ!」
「実力で示せって。俺は最強の戦士団どころか、王国ごと相手してやるって言ってんだよ」
来い来いと指で招く。戦公として年季の浅い若者には耐えられない挑発だっただろう。配下に合図するとともに、自身も打ち掛かっていく。
「加勢しますか、戦公殿?」
彼の戦士団のボダハ・タイデンが助勢を持ち掛けてくる。
「デゼン戦士団の邪魔にならない程度にしておけ。あまり手出しすればデゼン公を余計に興奮させるだけだ」
「ですな。テノコト、加減は任せる」
「自分から言いだしておいてですか? まったく、いい加減なのですから」
副官は文句をつける。
「いいじゃねえか。お前、俺やシュミクが出すぎたら怒るだろう? だったら、最初から任すってんだよ」
「仕方ない。閣下、自分にお任せいただけますか?」
「当初の作戦どおりにな」
ウフルバは機が来るのを見定めるつもりだ。それまではデゼン戦士団と彼の戦士団五名の戦いぶりを眺めることにする。
(マサキの強さも見極めたい)
計算もしている。
(包囲陣が失敗した以上、退きどころも考えねばならん。陛下は落胆なされるだろうが、これ以上王国の疲弊を見せれば隣国がどう動いてくるかもわからぬ状況だ)
マサキの動きは気になるが、それだけを見てはいられない。国王は国内を危険視しているようだが、臣公会議はきちんと周辺各国の動向までチェックしてくれているだろう。
「欠けてはいないが勢いは削がれている、か」
デゼン戦士団は敵はたった一人と侮っていた部分があったのだろう。それが、戦闘の幕開けから全員がバイクから叩き落されている。
パワーで勝ると事前情報にあった相手が、スピードとテクニックで翻弄してきたのだ。どう対処すべきなのか迷いが生じているのが見て取れる。
「が、練れてはいるぞ。どうする、マサキ?」
ばらばらに仕掛ける迂闊さはない。常に敵の死角を意識し、フェイントを仕掛けるメンバーと本命を狙うメンバーに役割分担されている。
正面からの斬撃を捌いたマサキは、踏み込んで反撃に出るが相手は即座に引く。その代わりに背後を取ったメンバーが瞬時に踏み込んで一撃を浴びせていた。
「浅くはない、のに!」
大きく火花が散った。長剣の刃は確実にボディを斬ったはずなのに、マサキの動きに変化はない。見れば、背中のプロテクタに傷が付いているだけであった。しかも、彼が「レストア」と唱えれば傷さえ復元されてしまう。
「そんな馬鹿な! ノーダメージだって?」
「現実を受け入れろ。そういう敵だって思って行かないと負けるぜ」
狼狽えたデゼン戦士団のメンバーがボダハの助言を受けて無闇な突入をやめて立て直しを図る。どうにか勝負にはなりそうな空気であった。
「強さはあるが、少々精神面の弱さがあるか。それでは装鎧戦士の集団戦では厳しい局面が出てくるかもしれないぞ」
シュラウナへの忠告を記憶に綴っておく。ただし、この戦闘を若き戦公が切り抜けられねば活きることはない。テノコト以下の戦士団メンバーは上手に立ちまわっているように思えた。
「しかしだ、貴殿もまだ様子見しているな、マサキ」
完全に取り囲まれた状態で危機感をにじませてもいないターゲットにウフルバは呆れを覚えていた。
次回『マサキ対ウフルバ(3)』 「臆すな! 敵を休ませてどうする!」




