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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
ウフルバ包囲陣

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ラツッパの歓喜(2)

 ウフルバの思惑と派遣された王国戦士団の意図の相違を察した正輝は仕組まれた襲撃だったと覚る。状況は良くないのだと理解した。


「つまりは、逃がす気はないってことさ」

「包囲されてるわね」


 ティナレルザの意見も容れて慎重な移動、可能なら脱出が望まれる。今の位置では圧倒的に王国側が有利な環境なのだ。


「ただし、連携が上手くいっているとも言い難そうなんだよな」

「付け入る隙になるわけね」


 ロナタルテに上空に上がってもらって見渡すと、包囲陣が敷かれ狭められつつあるのがわかった。突破は可能だろうが、戦闘中に戦公に背後を狙われるのは避けられないだろう。


「となれば、包囲の輪に引っ掛からないのが得策じゃね?」

「ええ、運任せになるけど各個撃破も望めるわ」


 避けるべきは戦公三人を一度に相手取ること。そこに包囲の戦力まで加われば受け止めきれなくなるのは自明の理。


「逆に言うと?」

「王国の戦公を効果的に削れるタイミングとも言えます」


 最後をエメルキアに締めてもらって移動を開始する。彼が遭遇したウフルバ以外のもう一人も飛行タイプではなかった。加味すれば、戦闘力重視で来ている可能性が高いが警戒は怠れない。偵察は真上に飛ばすだけにして、敵の手中に落ちるのだけは避ける。


「お世辞にも効率的とは言えないけど」

「敵のペースで戦うよりマシ。代わってくるわ」


 ティナレルザが上昇する。交代したロナタルテが戻ってきてすぐに彼のシャツに潜ってぬくぬくする。


「どんなだった?」

「えーとね、並んだままこっち来てたー」

「バイクとか走りトカゲとかいなかったか?」

「いない。人の列に車がくっついてたー」


 長期維持できる体制を整えつつ、包囲を安定させるのが目的だとわかる。車に乗っているのは食料などの物資と魔法師だと思っていい。


「この感触だと、戦士団はバイク利用だと思っても良さそうだな。ウフルバももう一人もそうだったし」

「いよいよって感じ?」

「おう、ランゼ。たぶん、本格的実戦投入だろう。前の教訓が活かされてるかはまだ不明だけどさ」


 以前バイク部隊で襲撃されたときは、乗っているのがやっとの状態。今回はそれなりに乗れていると思ったほうがいいか、あるいはバイクに乗ったままでの戦闘は避けてくるかどちらか。


「誰かルーザまで飛んでくんない? バイクの一団の捕捉が優先だって」

「行ってくるー」

「あ、ズルーい」

「騒ぐな騒ぐな。一人だけでいいから」


 小妖精(リトルエルフィン)たちがまだかまだかと自分の出番を窺っている。ありがたいが、制御が効きにくいのはいただけない。せっかく解き放たれたのだから、のんびりしていてくれればいいのにと思う。しかし、エメルキアに「マサキの歓心を買いたいのです」と諭されたので無下にもできない。


「土埃、見えるって」

「そうか。構成まで見えたらまた報告頼むって」

「はーい」


 小妖精たちは交代で偵察役の補助をすると話し合いで決着したようだ。入れ替わり立ち替わりティナレルザのところまで飛んでいるので情報が密になった。


「こんな動き方もあるのですね」

「いや、動員過多だろ。こんな贅沢はそうそうできない。大変じゃないか」

「そう思ってくれるから彼女たちは働きたがるのですよ?」


 エメルキアのポジションが妖精種(エルフィン)全体の面倒見役みたいになってきている。彼女がゼアネルヒを尊敬し、その背中を追っているからだろう。


(バランス良くなってきたじゃん)


 正輝は強大な王国を相手取るのも難儀ではないかもと思えてきていた。


   ◇      ◇      ◇


 戦公ラツッパ・コージャレは六人の装鎧戦士(エルフィンアーマー)を率い、移動している。それぞれの戦公が率いる戦士団の人数は決まっていないが、だいたいが五人から八人というところ。統制しやすく、運用難易度の低い人数に収斂してきた結果だ。


「突然の接敵あるわよ」

 ラツッパは周知する。

「いつもみたいに偵察の報告があると思わないことね。下手に小妖精を使えば偽情報を掴まされるのもありな敵よ」

「難しくありませんか?」

「そのほうが面白くはなくて?」


 彼女の戦士団は半数超えの四人が女性戦士である。戦闘力よりは、使いやすさと連携を重視した構成として発足した。しかし、使い込んだ今は戦闘力でも劣るものなしと断じるまでに成長している。


「またですか、閣下。今回は合同作戦なのですから控えるべきと申し上げたはずです」

 リーダー格の戦士が諌めてくる。

「いいのですわ。わたくしがわたくしであることがコージャレ戦士団の誉れにして最適の運用法。忘れてはなりません」

「否定はしませんけど。まあ、捕捉は難しくはないと思われます。敵は、最新型とはいえ車も随伴しているのですから」

「バイク構成となったわたくしの戦士団に機動力でも敵うものなしですわ」

 先手を打てるのは間違いないはず。

「あら、あれは?」

「包囲陣からの伝令みたいですね。聞いてみましょう」


 リーダーが向かってくれる。走りトカゲの伝令からの報告を受けて帰ってきた。


「包囲部隊が敵影を確認したそうです。やや北寄りの方向になります」

「向かうわよ」

「魔法師団の車がサポートに入るとのことでした」

「来るの? 賑わい程度にしかならないのにね」


 ラツッパはまだ先に捕捉でき、有利なポジション取りができるものと思い込んでいた。

次回『ラツッパの歓喜(3)』 「角まで生えてます。なにを思ってあんな威圧的な」

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