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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
ウフルバ包囲陣

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変わった人間(4)

 最初は力加減に難儀したものの、慣れてくると安定した生地ができるようになってきた。ポリエステルの糸なので服の生地に最適だ。


「肌触りがちょっと変わってます。糸の木で作った生地よりすべすべな感じです」

 テアクルセが頬ずりしながら感想を言う。

「若干の難点はあるけど服にするには悪くないはずだぜ?」

「前におっしゃっていた、燃えやすいという欠点ですか?」

「それ以外にも、織り方次第だが通気性はそんなに良くない。汚れはちょっと取れにくいってものある。ただ、糸の木の生地と比べて、洗濯をくり返しても毛羽立ってきにくいってメリットもある。それと、君たちの場合、接着加工しやすいんだよな?」

 妖精種(エルフィン)たちは縫い付けなくても能力で融着させてしまう。

「はい、なんだかきれいにくっついてくれます」

「元が油の化学繊維の特長なんだろうな。この調子で、伸縮糸の生地も作ってみようぜ?」

「ええ、いい感じ」


 糸を張り替えてやってみる。伸縮しやすいのでテンションの掛け方に苦労をするものの、試行錯誤して悪くない風合いの生地に仕上がった。スパッツはもちろん、着圧系の衣類までできそうな仕上がりだ。


「いいね。これでスパッツを量産して皆に履かせてくれ。あと、チューブトップ的なものを作ってブラ代わりに頼む」

 チューブトップのイメージを共有して作ってもらう。

「なるほど、便利そうです」

「言っとくが、あまり薄い生地はやめて。意味ない。それと、できるだけ暗めの色に染められるとベスト」

「マサキ様はどうしてそこにこだわるのでしょう」

 不思議がられる。

「俺にしてみれば、テアたちの倫理観に不安を覚えてるんだって。チューブトップだって、かなり妥協した肌露出なのに」

「わかりました。マサキ様のお望みなのでしたら、できるだけ統一しましょう」

「俺の趣味って言わんばかりのところが若干引っ掛かる」


 露出を好んでいるように受け取られるのは心外だ。まあ、メンバー以外を外の人間に見せるつもりはないので、女性の非難を浴びる心配はないと思う。


「さて、金属化できるパーツなんだが、浮かすことを考えれば、まずはやっぱりシャトルからだよな?」

 一番動かす部品である。

「ええ、滑りという意味でもよろしいかと」

「相当軽くないと駄目だな。アルミが順当。最低でもチタンクラスってとこか」

「金属の種類ですね」


 比重の軽い金属の代表格がアルミニウムである。ただし、特殊な形で産出されるので、妖精種(エルフィン)たちに精製できるかどうか微妙なところ。


「ボーキサイトはあると思う」

 アルミ原料である。

「どうやって集めるかだけど、とりあえず試してみるか」

「考えがあるのですか?」

「ああ、織り機を手に入れたあたりからいろいろと」


 木材を変形させるのは妖精種(エルフィン)たちとて苦手にしている。繊維の塊の形を変えるのは大変らしい。なので、もっとも効率的なのは流体金属(メタル)と混合できる金属類なのだ。


「ニッケル鉄の砂鉄を水に浸して、と」

 桶の中で掻き混ぜる。

「しばらく放置して、普段は捨てるこの上澄みを」


 大した量ではないが泥が堆積する。そこにニッケル鉄以外の成分が集中しているのだ。そこから精製できないかと試みる。


「駄目だったか」

 がっくりと項垂れる。

「ほとんどケイ素系の鉱物にレアメタルがほんのちょっと。ボーキサイトも含まれてるかもしれないけど抽出して使えるような量じゃない。俺程度の浅い知識じゃ無理ってもんだったか」

「そういうこともあります。そんな気落ちしないでください」

「でもな、相応量を扱えるのが重たい金属ばかりだってのが泣ける」

 それなら木材で複製したほうがマシだ。

「また考えましょう」

「そうする。ちょっと顔洗ってくるわ」

「はい、さっぱりなさってください」


 スピリットシャフトのところまで行けばきれいな水が湧きだしている。流れ出しの清水の水路で顔を洗った。気づくと、周囲にいた小妖精(リトルエルフィン)が真似して洗顔している。


「おーい、遊んでるんじゃないぜ?」

「違うよ。この水で顔洗うとシャキッとするの」

「冷たいもんな。ん、シャキッと?」


 確かに肌が引き締まるような感覚。流れを凝視する。目を凝らすと、底のほうに白い粒が堆積しているのが見えた。比較的大きなものを拾いあげてみる。


「まさか」

 濁りのある結晶のようなもの。

「これ、ミョウバン石じゃないか。ここから湧出してるのか。溶けてたものが、地表に出る前に冷えて結晶化してる」


 ミョウバンはアルミ化合物である。しかも、ボーキサイトより比較的抽出しやすい形で保存されている。


「頼む。この白い粒々をみんなで集めてくれ。これ、すごく大事な物かもしれない」

「集めるの?」

「わかった」

「いっぱい集めたらマサキ様に褒めてもらえる」

「ああ、いくらでも褒めてやるから」


 川に続く水路には大量に白濁の結晶が堆積していた。それはそうだろう。ここで、何百年にも渡って湧出し堆積してきたものなのだから。


(しめた。こいつはとんでもない拾い物だったぜ)


 正輝は大量に手に入れたミョウバン石をエメルキアたちのところに持っていった。

次回『変わった人間(5)』 「どうして、そんなに、頑張るの?」

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