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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
偏屈な細工職人

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誰の敵?(1)

 ペンセがバイクの仕上がり確認を済ませて対価を支払いにやってきた。それなりの金額が懐に入った正輝は満足する。ただし、ついでの世間話が余計だったが。


「やっぱり、やってるんだな、世直し戦士」

 秘密を知る者としての優越感を匂わせながら言ってくる。

「目障りだから潰してるだけ。特に誰かを救いだしてるわけじゃないし、もう色街に売られていた女性を解放したりしてないだろ? してるのは警備隊だ。真っ当な活動してるんだから評価してやれ」

「でも、抗争は収められなかった。君にやられたから下火になってきてるんだぞ」

「違うって。抗争原因そのものが間違いだったって気づいたのさ。連中だって、好きでぶつかってたんじゃないだろうし」


 軋轢とは簡単に解消できるものでもなく、あのあとも二度ほど衝突に介入し両者とも牢送りにしている。魔法師の中に、新陳代謝の活性化で治癒促進を働きかけられる念動力(サイコキネシス)使い、一般には治癒魔法師と呼ばれる能力者がいなければ全員病院送りだったろうが。


「それにしても、ずいぶんと風通しが良くなったって評判だ。ギャングの活動が減って、浮いた金をうちの車購入に当ててくれたお客が君を絶賛してたって聞いたよ?」

 正輝はそのうちペンセが口を滑らせそうで苦い表情になる。

「もうじき収まる。連中の矛先が向いて、ここが狙われないうちに逃げるぜ。近々オリネキを出る。世話になったな」

「まさか。君は外で顔をさらしてないんだからバレる心配ないいんじゃないか?」

「あのな、連中の情報網は使用人とかの買収でここらへんの上流ブロックまで入り込んでると思っとけ。嘗めてたら痛い目見るぜ」

 ペンセのお坊ちゃんぶりにも辟易する。

「親父さんに聞いてみろ。妙な手出しをしてこないよう、月に幾らかとか渡して話をつけてるはずさ」

「冗談きついよ」

「冗談なもんか。あんな働いてもいない輩がどうして大金を得てでかい顔していられると思ってる。有力者にも幅を利かせてるからに決まってんじゃん」


 これだから箱入りの坊っちゃんは困る。なので、クルカイゼン邸からの出入りを制限して、最近は午前中に街にくり出すのも控えていたというのに。


(日本じゃ、昔は当然みたいに横行していた『しのぎ』の一つじゃん)

 世界各国の事情までは知らないが。


「厄介事になる前にとんずらするさ。用が済んだしな」

「そうか。スイリンも君のこと頼りになるって言ってるのに」

「それこそ冗談」


 どうせ愛する男の頼れる用心棒くらいのつもりで言ったのだろう。心からの言葉だったら、最低でも事前調査に向かったティナレルザやロナタルテにくらいは「ありがとう」のひと言があってもいい。


(所詮は便利な道具と、便利な道具使い程度にしか思ってないんだぜ)


 正輝は適当に相手してペンセを本宅に追いかえした。


   ◇      ◇      ◇


「なあ、ノズハの。このままで済ませたら裏社会の笑いものだろう?」

「当たり前だ、デンヤの。きっちり落とし前つけさせないと顔に泥塗られたままで終わっちまう」

 裏社会の両巨頭が会談している。

「どうやら上流街あたりから出てきてるのまでは当たりをつけてあるんだがな」

「あんまり悠長なことをしてられるか。さっさと片づけないと俺たちの顔が効かなくなる」

「だがよ、あの妙な仮面の所為で身元は割れてない」

 目元さえ見えないのだから。

「そんなんどうでもいい。要はやつを引っ張りだせればいいんだろう?」

「なるほど。衝突があったら覿面に顔を突っ込んできやがるからな。やつなりの情報網を持ってると見える。そいつを逆利用か?」

「そういうことよ。話が早いな、デンヤの」

「当然だろう、ノズハの」


 話はすぐにまとまった。


   ◇      ◇      ◇


 抗争は収束の兆しを見せている。偵察に飛んでくれているロナタルテとティナレルザも衝突現場の報告に戻ってくることもなくなった。そろそろ潮時かと思う。


「これで目立たず移動できるか。そろそろバイクのほうから足がつきそうな頃合いじゃね?」

 正輝の懸念はそれだ。

「際どい感じよね。今日一日様子見で十分じゃないかしら?」

「わたしもそう思います」

「ぼくもそろそろだと思う」


 現在偵察中のロナタルテを除いて意見は一致する。戻ってきて様子を聞き、賛同を得たら明日にはオリネキを発つタイミングだとした。


「マサキー! また始まっちゃった!」

 ところが、そのロナタルテが悪い報せを持ってきた。

「どこ?」

「下町の奥のほう。大通りから離れてて警備隊もすぐには来れなさそうー」

「わかった。ありがと」

 彼は目配せする。

「じゃあ、行くぞ、ルキ、ランゼ(・・・)」

「わかった」

「まいりましょうか」


 クルカイゼン邸を出発した正輝は下町に入る直前くらいで変身する。上空を飛ぶロナタルテの先導で現場にと向かった。

 近くに来ただけで剣戟の音が激しい。血を流しているギャングの構成員がところどころにへたり込んでいる状態だ。かなり大きな衝突だと感じる。


「すぐ突っ込むぜ」

(どうぞ)


 バイクを停めてスタンドを立てる。降車してそのまま衝突現場の真ん中に向かって走っていった。


「来たぞ! 例のやつだ!」

 警告が発せられる。


 そこまではいつもどおり。数人を殴り倒して激突の中心にまで踏み込むと、驚いたことに一斉に剣戟が止んだ。


「待ってたぜ、このやろう」

「ただで帰れると思うなよ。ばらばらに刻んでやる」


 正輝はギャングたちに囲まれて孤立した状態になった。

次回『誰の敵?(2)』 「あんたらな、俺相手にあんな下手くそな芝居が通用すると思ってんの?」

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