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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
撃発のライダー

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正輝、アウトバースト(3)

「たいへん申し訳ございませんでしたぁ!」

 正輝はランゼッタに土下座している。


 デレキセント教団の戦士団と魔公ウズナル率いる魔法師団を撃退後、解放した元装鎧少女(エルフィン)の小妖精(リトルエルフィン)たちを集め、そそくさと離脱した彼らは現在中央森林帯の人目のない場所に潜り込んでいる。そこで、すぐさま彼は少女に謝罪を開始した。


「頭にきていたとはいえ、あんな強引に契りを交わしてしまいました! どんな罰でも受ける所存にございますので、なんでも申し付けください!」

 平謝りである。

「ぼく、いいって言ったつもりだったけど」

「それでも駄目は駄目だ。君たちを虐待するジノグラフの人間をあれだけ許さないって言っておいて、俺が同じことを強制するなんてあってはならない。ほんとはちゃんとお願いしなくちゃならなかった」

「困った」


 頭は上げられない。彼はランゼッタにやってはならないことをした。困らせようがどうしようが、助けだした小妖精にどんな目で見られていようが、なにも関係ない。少女が許してくれるまで謝り倒すしかない。


「ぼく、今、すごく嬉しいんだ」

 下げた頭が持ちあげられてランゼッタの膝に乗せられる。

「ようやく本当にマサキの役に立てた気がする。ずっと欲しかった役目をもらえた気がする。一緒にいていいんだって心から思えてる気がする。だから、ね? マサキはもう謝らないで。言ってほしいなら許すって言うから」

「いいのか? 縛られた感じしない?」

「しない。契りを交わしてもらって幸せだから」

 正輝は「ありがとう」としか言えない。

「これでぼくもマサキの装鎧少女(エルフィン)だね」

「ええ、わたしと同じマサキの装鎧少女です。ともに頑張りましょうね、ランゼ?」

「改めてよろしく、ルキ」


 なぜか少女二人が意気投合している。恐るおそる顔を上げ、ドン引きしている小妖精たちに愛想笑いを送りながら立ちあがった。


「マサキ、格好悪いー」

 ロナタルテに指摘される。

「格好悪くともなんでもいい。悪いことをしたら謝る。基本中の基本だからな」

「ほどほどにしてほしいわ。なんで、私があの子たちに弁明しなきゃなんないわけ?」

「あ、ごめん、ルーザ。君たちも落ち着いて車の中で休んでくれたらいい。ちょっと、このとんでもない腹ペコ状態をどうにかしたら精気をあげるからさ」


 空腹が半端ではない。当然といえばそれまで。使った分の力はどこかから失われている。彼はエメルキアが用意してくれた食事を猛然と平らげた。


「ふう。で、どこまで話したっけ?」

 やっとひと心地である。

「なにも決まってないから。これからどうするの? あの変身フォームならそんじょそこらの装鎧戦士(エルフィンアーマー)なんて敵じゃないから首都まで喧嘩売りにいく?」

「それは無茶ってもんですよ、ルーザさん。段取りってもんがあるだろ?」

「勢いで、あまりにも簡単にデュアルビルドなんてしてくれた人に言われたくない」

 ちくりと言われる。


 小妖精(リトルエルフィン)を呼び寄せて膝の上で休んでもらう。空腹は満たされたばかりだが、精気はまだ充実しているので問題ない。最近は、ともあれ精気に変換するのが最優先されるよう身体が慣れてしまっているように感じる。


「返す言葉もない」

 顔を伏せる。

「そんなにいじめちゃ駄目、ルーザ」

「わかってるわよ、ランゼ。今のはちょっとした軽口」

「マサキは今、傷つきやすいお年頃なの」

 ギョッとして「どんなお年頃?」とツッコんでおく。

「いっぺん帰るんじゃなかったのー?」

「そうだったな。今日のところはここで休んで、明日夜が明けたら東に抜けて里に帰ろう」

「テアたちを安心させてあげないとー」

「なんか、ロナが一番まともなこと言ってね?」


 憤慨したロナタルテにぽかぽか叩かれたあとに、齧っていた干し肉まで奪われた。腹いせに噛みついている。


「なんか、いろいろやらないといけないことが山積してる気がする。整理して一つひとつ片づけていこう」

「それがよろしいです」

「明日からドライブ」


 とりあえず身体を休める正輝たちであった。


   ◇      ◇      ◇


「魔公ウズナル・トリクタンが重症ですか?」

 その報告に戦公ウフルバ・ジーギラは瞠目する。

「それだけではない。教団もかなりの装鎧戦士(エルフィンアーマー)が剥ぎ取られて再起不能だそうだ。戦死者も出ている。この事態を見過ごしていいものかという状況だ」

「ですが、魔公ウズナルは独断専行ではありませんか。陛下よりマサキ討伐の御命はまだくだされていないはず」

「そのとおりだ。しかし、聞き捨てならない報告が彼の魔法師団から上がってきている」


 戦公会議での議題である。議長のデラハル・モルケトー戦公が重々しく告げてくる。


「当該の装鎧戦士(エルフィンアーマー)、マサキが二重装着者だと判明した」

「なんですと! まさか!」

「しっかりとした報告書が上がってきている。ウズナル公はまだ重篤な状態であるものの、配下の魔法師に戦死者は少数。生存者は口を揃えて二重装着者だったと証言したそうだ」

「信じられない。だが、教団の戦士二十名あまりが撃破されたと思えば辻褄は合いますな」


 普通の装鎧戦士(エルフィンアーマー)ではあまりに分が悪い状況を切り抜けたというのは確かである。失態の言い訳と考えられなくもないが。


「早急に確認すべきかと思われます。もし、彼が王国へと牙を剥くようであれば相応の体制を取らねば」

「それが、消息が不明だ。忽然と姿を消している」


 ウフルバはあまりに気まぐれな行動をどう受け取ったものか悩ましく思った。

次回『正輝、アウトバースト(4)』 「ただい……、わっぷ!」

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