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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
撃発のライダー

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魔公接近(1)

「こいつはしくじったな」

 正輝は顔をしかめる。


 これまでなら、身をひそめると警戒網は薄まってきていた。彼らが捕捉されるのを怖れて、連続して同じ地域で騒動を起こすことがなかったからだ。相手もそれを見越して行動していた。

 ところが、今回は警戒の度が増す一方である。街道の検問こそ控えめになってきているが、次に現れたのはデレキセント教団の旗を立てた車列であった。走りトカゲも多数見られ、教団戦士が派遣されてきたのが確認できる。


「狙ってきたな。ここで決着つけてやろうって感じの動員をしてきてる」

 ティナレルザからの情報を聞きつつ手書き地図に印を置いていく。

「ええ、タンルンの警備隊も動員されてるけど、派手に動いてるのは教団のほう。これ以上、顔を潰されて堪るかって勢いだわ」

「キャッチできてないから厚めに警戒網を敷いて逃さないようにしてるか」

「これでは抜けだすのも容易ではありませんね」

 隙を見て里に戻るつもりだったのに実行できないでいる。

「そう思わされてるっぽい。たぶん、俺の手のうちにロナやルーザがいるのも見越して、見せ球として動かしてそうだ」

「そこまでしないと駄目?」

「そうさ、ランゼ。向こうは偵察を出したくとも小妖精(リトルエルフィン)の手が足りてない。こっちは偵察を出してるだろうから露骨に動いて警戒させる作戦だな」


 今はティナレルザが戻ってきたところ。ロナタルテも別方面に偵察に出ている。正輝としては警戒地点を地図にポイントして、縫ってでるルートを模索していたが、それを潰された格好である。


「陽動展開されるとは。急に教団が戦略的になった気がしてならないんだが」

 こっちが少人数グループなのを逆利用されている。

「おかしいですよね? わたしの知ってる教団も、装鎧戦士(エルフィンアーマー)の質を誇ることはあっても、軍隊的な行動はしないと思ってました」

「それが、ここにきて組織的に動いてる。らしくないことをさせるほど頭にきてるのかしら?」

「一気にやり過ぎたか。情報撹乱を仕掛けられたのが面白くなかったって?」


 小妖精(リトルエルフィン)を解放するのと並行して教団の目と通信網を潰した。相当な危機感を抱いたのかもしれない。彼が思っているより組織として脆さがあるのか。


「あるいは、支庁を中心とした方面ごとになんかあるとか?」

 今の強硬姿勢が語っているものとは。

「なにかとは?」

「例えばだな、ルキ。コタカッタ支庁として運営が安定したり拡大したりすると、現責任者が次に教団の本部的なとこでいい地位に着けるとか」

「あるかもしれません。ランゼもそこまで深く知る機会はありませんでしたよね?」

 教団の出身者はランゼッタのみ。

「ない。でも、ぼくが繁殖形態まで成長したとき、ずいぶんと賑やかだったの憶えてる。そういうのも手柄になる?」

「あり得るな。総合的に評価される。もちろん、マイナスポイントもあって、それが悪い具合に作用してそう」

「ぼくが抜けたのもかなりマイナスだったかも」


 失点に失点を重ねた今の責任者が、正輝を追い詰めてランゼッタを取り返したり成敗しないと失点を取り戻せないと焦っている可能性がある。となると、事態は相当厄介になったといえる。


「こっちの組織力のなさが見透かされてるの痛いわ。ちょっと、体制を考え直したほうがいいかも」

 ティナレルザが考え込む。

「テアやトーレスを動員するとまで言わなくても、小妖精の集団くらい備えて情報収集から撹乱までさせるとか」

「できればしたくない。せっかく、里でゆったりとした暮らしができるようになった子たちを俺の都合で招集するとかさ」

「きっと、本人たちは喜んで手伝ってくれるわ。選抜しないといけないほど。でも、マサキが危惧してるみたいに、敵の手に落ちる子が出てこないとも限らない方策なのも確か」

 難しいところである。

「ここで一戦交えないと終わらないっていうならいっそ、こてんぱんにしてやるくらいのつもりでいきたいな。おいそれと手を出せないくらいにダメージを与えたい。そんな作戦を考えないと駄目そうだ」

「そんなのある?」

「簡単じゃないよな、ランゼ。一緒に考えてくれ」


 しかし、事態は正輝が思ったより悪い方向に進行していた。


   ◇      ◇      ◇


 ロナタルテは高空から敵情を監視している。状況は朝からほとんど変わっていない。教団の戦士団が車列を中心に流動的に動きまわっていて、彼女が報告で戻った時点でどこにいるか明言できない。


(ルキは巡回ルートにパターンみたいなのがないか注意してっていうけど、そんなのなさそうだしー)


 じっと見ているが、決まった模様を描いていたりはしない。車列を基点に考えても適当に動きまわっているように見える。


(いるってしか教えらんないよー)

 頭を抱える。

(ん? あれって、なあにー?)


 遠くに別の車列が見えた気がした。ようやく報告できそうなものを見つけて彼女は小躍りする。ただし、少し高度を下げないとどこの誰だかまで判別はできない。教団の別班までいるのであれば、想定したより広範囲を探られていることになる。


(あー、違ったー。どこのか知らないけど、教団のじゃない紋章の旗だったー)


 ロナタルテはそれを確認したところで攻撃を受けた。

次回『魔公接近(2)』 「やられたか。捕捉された。すぐ移動する」

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