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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
逆襲の始まり

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アンブッシュレディ(3)

 絡め取った脚を振りまわして美女を通りに放りだす。それと同時に正輝は空けた穴から教会の回廊へと入っていった。

 中に残っていた信者や司祭は勝手から逃げだしたか。中には誰もいない。ベンチが数多く並んでいて足元は悪いが、通りで大暴れして一般人に被害を出すより遥かにマシな状況。


「よくもレディを放り投げてくれたわね。紳士としてなってないんじゃなくて?」

「悪いな。田舎者でマナーなんかできてないのさ」


 女性戦士が大股で入ってくる。かなり怒らせてしまったようだ。気迫のみなぎりようがすさまじい。


(今までの装鎧戦士(エルフィンアーマー)となんかタイプ違うんだよな)

(ええ、なんというか、まとう空気が違う感じがします)

(それだけ手練ってことかな?)

(そうなのでしょうか? 違和感の正体がわかりません)


 誰に宛てた言葉かわからなくなるので、強い思念を意識してエメルキアと会話する。疲れるのであまり使わないが、内緒話をするとき用に練習はしていた。


「だったら、私が躾けてあげる」

「遠慮させてくんない?」


 再びキックがビュンビュンと舞いはじめる。非常に足癖の悪い美女であった。普通なら、際立つ彼女のヒップラインや柔らかそうな太ももに目を奪われそうなものである。ただし、普通の男だったら目に焼き付ける前に一撃食らって命があるまい。


「いい蹴りだ。あんた、俺のほうに産まれてたら、超人気アクションスターになれてた」

「なに言ってんのかわかんないわ」

「たわ言さ。聞き流してくれていい」


 正輝はそのキックを捌きながら一歩も引かない構え。冷静になった彼女も意地ではなく、鋭さを増したキックで応じてくる。わりと紙一重な攻防が展開されていた。


(彼女が戦士団に混じってたりしたら、かなりマズいことになってたと思うけど、なんで単独で動いてる?)

(なぜでしょうね。教団の組織ってよくわからないとこあります)

(謎だな。調べればこれからに役立つかもしんないけど、正直取り押さえる自信ないわ、俺)


 おそらく、彼女とは勝つか負けるかになる。どちらが装鎧少女(エルフィン)を失ってただの人間に戻るかの勝負だ。装鎧戦士(エルフィンアーマー)の生命を懸けないと勝利は見えないと感じた。


「上の連中、あなたを嘗めてるわ。本物の実力者じゃない」

「嘗めたままにしといてくれるよう伝言頼める?」

「誰が見逃してあげるって言った?」

「そういうことにしておけない?」

「ふざけた男だこと」


 細い身体を活かしたスピンからのまわし蹴り。手刀で受けて絡め取ろうとするも、あっさりと引いてくる。不審に思っていたら、反対の膝が真下から跳ね跳んできた。

 瞠目しつつ半身で躱し、続いて伸びてきた踵を掌底で突きあげる。片足上げのきれいなIの字に伸びた美女にタックルを仕掛けた。脚ごと包み込む、かなり色っぽい態勢のままで押し倒しにいく。


「ちょ!」

「極めさせてもらう」


 このチャンスに取り押さえて攻撃し弱らせるしかない。そう思っていたら、押し倒されるままに後ろに倒れた彼女が下半身だけ伸ばして首に絡めてきた。両脚で首投げされた正輝は、10m以上も飛んでベンチを粉砕しつつ落下する。


「いちち。めっちゃ激しいじゃん」

「当然だけど、タフだこと」


 首を振りつつ立ちあがると、とうとう美女は剣を抜いてくる。鞘の感じからわかっていたが細身の剣だった。ただし、斬れ味は素晴らしそうだ。


「やっぱ、本領はそっち?」

「そうよ。もう、取り押さえるのはあきらめることにしたの」

「いや、人生あきらめが肝心とか言うけど、ときにはあきらめないほうがよくない?」

 嫌な予感がしてならない。


(長引きすぎた。ここは一度撤退して立て直すべき? 素直に逃がしてくれそうにないな)


 正輝はどう対するべきか困っていた。


   ◇      ◇      ◇


 デレキセント教団戦士レクナク・リリーンは困惑していた。


 目星をつけた教会に司祭として潜入し、件の装鎧戦士(エルフィンアーマー)を誘い込んだところまでは大成功だった。しかし装着以降、これほど長い戦闘になるのは完全に想定外である。圧倒するとは言わないまでも、意表を突けば勝てると踏んでの仕掛けである。


(それなりにデータは揃ってきた。この謎の装鎧戦士(エルフィンアーマー)はたしかに強いわ。でも聞いた話では、どこか力任せな感じがしてた)


 ところが、実際に当たってみると格闘テクニックだけ見れば彼女に勝るとも劣らないものを発揮する。かなりの自信があったのに打ち砕かれる思いだった。


「サイコブレード」


 男の佇まいが変わる。これまでの格闘タイプから剣闘タイプに変じたかのようにも見える。


(これが噂に聞いた光の剣? 丸裸にされて逃げ帰ってきた情けない連中が言ってたやつね)

 男の右手に光る刃が現れた。

(普通の剣とはどう違うの? そのあたりになるとはっきりしないんだもの。負けたうえに、証言もできないとかどれだけ役立たずなわけ?)


 装鎧戦士(エルフィンアーマー)の力を失って戻ってきた飛行隊の面々は事情聴取を受けている。この男の情報を得るためだが、ろくに近づきもできないうちに撃ち落とされていた。教団戦士ともあろうものが、なんという体たらくかと思う。


(お陰で苦戦しちゃってるじゃないの。帰ったらしばき倒す)

 とはいえ、もう破門されて放りだされている。


 レクナクはレイピアを正眼に掲げて男の様子を観察した。

次回『アンブッシュレディ(4)』 「御大層なものを生みだしたのに、それは飾り?」

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