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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
逆襲の始まり

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アンブッシュレディ(2)

「破壊しに……きた?」

「マサキ!」

 エメルキアから彼への強い警告。


 本当に美しい女性司祭であった。しかし、急に空気が変わる。


 この国に多い赤い目が鋭く貫き、司祭服のベールから流れ落ちるピンク色の髪がふわりと浮きあがってくる。冷たい殺気に射抜かれる。そして、司祭服の影から覗く目。美女の裾の後ろに、サイズダウンした同じ司祭服をまとった少女が隠れていた。


(しまった! この色!)


 その少女の瞳は緑色。見るからに装鎧少女(エルフィン)の雰囲気を宿した子である。一気に寒気が正輝の背筋を駆けあがった。


「ヒオルシア、装着」

「ビルドイン!」

 キーワードは同時。


 少女のベールが光となって消えるとくるくるの茶色い髪が現れる。司祭服も消えて全裸となると、すぐに全身がほどけるように光の粒子へと変じた。

 美女にまといつく光の帯。彼女の司祭服を巻き込みながらプロテクタが形成される。豊かなバストラインをピッタリと覆うような成形になると、張りつくように装着され胸元を揺らす。各所のプロテクタも次々と形成されると張りついて継ぎ目がなくなっていく。


「ふうん。噂どおり」

「く……」


 ヘルメットパーツが美しい顔を覆い、最後まで浮いていたバイザーパーツが接着されると変身が完了する。それと同時のタイミングで彼の変身も完了していた。


「恐れ入るわね。青なんて」

「知ってるだって?」


 装鎧少女(エルフィン)の瞳の色の秘密はデレキセント教団でも高位聖職者しか通じていないと聞いている。すると、彼女は高位なのか。そもそも、司祭であるのさえ本当なのかわからない。


「でも、装鎧少女の能力と装鎧戦士(エルフィンアーマー)としての強さはイコールではないの。さあ、あなたはどっち?」

「試してみれば?」


 女性司祭の口調まで変わっている。これが地なのだろう。彼女にたかっていた若い男たちは目を丸くして飛び退って震えている。どうやら、装鎧戦士(エルフィンアーマー)であるのも知らなかったらしい。


「偽装して入り込んでたか」

(待ち伏せされたみたいです)

「それなりの実力の教団戦士と見るべき」


 目にも留まらぬスピードのパンチが飛んでくる。見えてはいなかったが知覚はしていた。左手で受け止めたつもりだが押し込まれて体勢が崩れる。乱れた足元を払われると、その足が舞って正面から突き刺さってきた。


「っぷわ!」


 跳ね飛ばされたボディはそのまま教会の扉に激突、粉砕して外まで飛びだしてしまう。凄まじい威力であった。


「ランゼ、退避!」

「うわひゃい!」


 しかし、ただやられたのではない。外に出て、ランゼッタに逃げだすよう告げるためでもある。なので、身体を浮かせてキックの衝撃は逃がしてあった。

 通りに転がって石畳に叩きつけられるのは回避。手を突いて足をグリップさせると、そのまま流れで構えに移った。車が走り去るのは確認してある。


「逃げおおせたらロナを飛ばしてくるはず。合流は難しくない」

(打ち合わせどおりですね)


 万が一奇襲を受けたときの手筈も整えてある。人間社会にいるときは、いつ如何なるときも襲われる危険性を考慮しておかなくてはならない立ち位置になった。


「仲間を逃がした? 面白いことしてくれるわね」

「当然じゃね? ちゃんと、おっかないお姉さんがいるからって伝えてあるぜ」

「心外だわ」


 風鳴りまで伴ってキックが襲い掛かってくる。これまでの戦闘パターンとはまったく異なる戦い方をしてきた。腰に下がっている剣をすぐさま抜いてこない。


「とどめを刺すのは弱らせてから、か」

(マサキに似たタイプです)

「もちろん、あなたみたいにすばしっこいタイプは一撃じゃ当てさせてくれないもの」


 台詞が被る。今の言葉を彼女に宛てたものだと勘違いしたのだろう。


「あなた、何者? 教団は装鎧戦士(エルフィンアーマー)の恨みを買うようなことはしないはずよ? どちらかっていうと、装鎧戦士のほうが教団に目をつけられないよう行動するはずなのに」

「いくら考えてもわかりゃしないさ。恨みじゃないんだから」

「面白いことを言うわね。ここで剥ぎ取って口を割らせてあげる」


 正輝は捌きに転じる。通りに出てしまった以上、あまり戦闘範囲を広げたくない。人的被害が出やすくなってしまう。

 大怪我しようがどうなろうがあまり気にはならない。ただし、民衆の反感を買うのはできるだけ避けたい。変身したとて、一般人に取り囲まれれば行動しにくい。見境なしという悪い噂が立つのはよろしくない。


「こいつは厄介だ」

(教団戦士では一番強いと感じます)

「褒め言葉として受け取ってあげるわ」


 キックの芯を手首で受けて逸らす。それだけでもプロテクタ同士がこすれて火花が走った。どんどんと押し下げられてしまっている。

 一時はパニックで逃げ去った人も、遠巻きに見物人として戻ってきている。非常に面白くない状況になりつつあった。


「もう、引っ込みつかないってな」

「観念するの?」

「いいや、ちょっとばかし勘弁な。まあ、どうせ壊すんだし」


 立ちあがって全力のスイッチを入れる。捌きにも力を込めると逸れ幅も大きくなり、次の一撃までの間隔は伸びていった。反転攻勢で前に出る。

 それが相手の焦りとなって不用意な一撃を呼び込む。的が怪しく、鋭さに欠けたキックを絡め取るとパンチを放った。それを彼女は軸足の力を抜いて倒れ込み回避する。


「とぅわ!」


 正輝のパンチは教会の壁を大きく粉砕していた。

次回『アンブッシュレディ(3)』 「だったら、私が躾けてあげる」

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