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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
妖精拠点と幻惑作戦

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目立たなくするには(6)

 メタル大鹿から飛んできたトゲを掴み取る。受け止められたと察した途端、胴体から多数のトゲが発射された。正輝は掛け声とともに錐揉みジャンプして反対側へ降り立ち並走をつづける。


「あいにくだが、その攻撃は見飽きてきた。工夫はないのか?」

(それで人を襲ってきたばかりですもの)


 そちら側にも発射されたトゲを今度はしゃがんで躱しつつシットスピンする。前脚を引っ掛けて大鹿をまくれさせた。

 彼も慣性で姿勢が崩れたので肩から転がって何回転もしてから立ちあがる。転倒したメタル大鹿も立ちあがって向き直ってくる。


「振り払うつもりだったんだろうがそうは問屋が卸さないぜ?」

「ピー!」

 鋭く鳴いて威嚇してくる。


 首を下げると、立派な角に頭が隠れて急所は見えなくなる。しかし、メタル生物の場合、頭は急所ではない。単なる攻撃姿勢である。


「プレッシャーすごいな」

(枝分かれした鋭い先端があんなにあると怖いですね)


 突進してきて角が正輝を貫こうとした瞬間ダッキングで回避。左の手刀で角を押しあげれば頭もついてくる。スピンして右の肘打ちを顎に突き刺した。

 首が跳ねたところでコアの場所を見極めようとする。ところが、大鹿もその場で後ろ脚立ちになり反転。反対側に前脚が着地すると同時に後ろ脚蹴りがとんでもないスピードで迫る。


「わぷっ!」


 すさまじいパワーが込められた後ろ脚蹴りを両手でどうにかブロックするも、宙を飛んで転がった場所は10m以上も離れている。


「なんてこった。レストア」

(プロテクタが割れるとか信じられないです)


 強度の高い腕の甲側ではなく内側だったとはいえ、剣の斬撃でも跳ね返すようなプロテクタが罅(ひび)だらけになっていた。即座に精気を流して回復させる。


「あれが最強パワーの攻撃だな。他の生物と違って背後は弱点じゃないときた」

(元が草食獣だからこそ、追いかけられる後ろ側への攻撃が一番力が強いのですね)

「だからって正面が弱いわけでもなく、側面はトゲの槍衾が飛んでくると。意外と攻略ポイント少なくない?」


 加えて機敏でスピードもある。トカゲとはひと味違う難敵具合だった。強いていえば大型化には難点があるようで、体長は2m半くらいのもの。

 おそらく、獣の機敏さを再現するにはサイズ的に限界があるのだろう。メタル進化種は筋肉で動いているのではなく、地場制御で全身を動かしているのだ。


「怒ってる怒ってる」


 姿勢を低くし前脚で地面を掻いて行くぞと言わんばかりだ。そういった仕草まで模倣しているあたりがにくい。現実に威圧感は半端ない。

 彼も息を吐きながら膝を折って足場を決める。右の拳を引いてカウンターを狙う態勢。戦闘のチリチリとした緊張感が背筋を熱くする。


「来い」


 角を前に突進してきた大鹿の横っ面を左手の掌底で叩く。そこに全力の右パンチを入れるも、表皮が溶けるように流れて滑らされた。


「なにぃ!」


 体重任せに押しかぶさってくる。コアを探す前に、腹側から無数のトゲが発射されて全身を襲う。回避不能の攻撃を両腕で顔面だけ庇った。トゲは先端が食い込んでいるものの、プロテクタの中までは貫かれてない。が、激痛を伴う。


「こんのぉー!」


 両足を揃えて畳んで背筋だけで上に突きあげる。腹に直撃した蹴撃はメタル大鹿を空に舞わせた。離れたところに落下する。


「足のパワーが強いのはお前だけじゃないんだぜ、こらぁ!」

(パワー勝負してどうなさるんです?)

 跳ね起きて吠えると、エメルキアにツッコまれた。


 先ほどの回避は完全に意表を突かれる。相手がメタル生物なのを忘れかけていたのを反省した。表面を流体化すれば打撃は滑らされてしまうのだ。

 しかし、真正面からサイコブレードで鍔迫り合いも得策ではない。彼が得意としてきたスポーツチャンバラはほとんど一発勝負で、剣身を合わせて力比べという局面はほぼない。だから、打撃で弱らせてからとどめをサイコブレードという戦い方をしてきた。


「俺、普通の剣技を習ったことがなくてさ」

(あら、そうだったのですか)

「そんなに自信ない」

(わたしも師にはなれないので、実戦で学ばれるしかありませんね)


 この大鹿のような機敏な相手だとヒートミサイルのような念動系の攻撃は直撃させにくい。打撃を重ねてサイコブレードに繋げる攻撃を選択するしかない。


「そっか。お前もそろそろ勝負どきか」

「ピッ!」

 角を下げて狙ってくる。

「じゃあ、こいつでどっちが上か決めようじゃん」

(もう余力がなさそうです)

「反射神経勝負だ!」


 すさまじいスピードで角が迫る。彼も頭から突っ込んでいった。眼前わずか数cmのところで角の先端を掴み取る。


「サイコブレード!」


 首を折り曲げて横から一閃。わずかに繋がっている首の断面に体を滑り込ませ、念動の刃でひと突きした。


「届いた、な?」


 メタル大鹿はどろりと崩れる。切っ先がかろうじてコアを貫き通していた。


「っと、回収回収」

(一滴残さずお願いしますね!)


 エメルキアに強く念押しされては正輝も頑張らねばならなかった。

次はエピソード『逆襲の始まり』『始動準備(1)』 「畏れながら、他国の工作ではないように思いますれば」

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