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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
妖精拠点と幻惑作戦

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目立たなくするには(1)

 正輝は紙に書き付けをしながらエメルキアたちと話をしている。話題はテアクルセとピトレスカとの融合変身のこと。


「経路が繋がったらしいけど、俺のほうからは特になにも感じないわけなんだが」

 彼女たちのほうからは感じられているのだろうか。

「マサキを感じているはずですよ? あの嬉しそうな顔を見ればわかるではありませんか」

「いや、なんで俺に縛られるのがそんなに嬉しいんだか」

「経路による繋がりは距離を意味なくするほど強いものです。なので、わたしたちも複数の人と契りを交わすことは不可能です。誰かと契ったら、もうその方以外とは契れないのですよ。だから、テアとトーレスはマサキに求めたのです」

 この先、なにがあろうと彼以外に利用されることはない誓いを示す行為。

「余計に俺に縛られてるようなもんじゃん」

「縛られたかったのですよ、二人は」

「はぁ、ちょっと重い。変身フォームがそれぞれに違ったのはちょっと興味深かったけどさ」


 小妖精(リトルエルフィン)が見守る中、テアクルセとピトレスカとの融合変身をした。もちろん、同時にではなく一人ずつとだ。変身後のフォームは異なる姿をしていた。


「わたしとのときも説明しましたが、イメージが大きく影響するのです。それぞれの髪の色がメインカラーになっていましたでしょう?」

 確かにテアクルセは緑、ピトレスカは赤だった。

「でも、ルキと変身してもカラーが入ってないじゃん」

「それはきっとまだ変身のイメージが固まってなかったからです。本当にマサキの中にあるイメージだけで固定してしまったのでしょう」

「ルキが気にならないならいいけどさ」

 少女にとっては契ること自体が大切だから、フォームは関係ないという。


(俺が感じられてないだけで、ルキたちの感覚の中で経路っていうのはすごく大きなもんなんだろうな)

 そう予想できる。


「しかし、経路ってのは複数維持できるものなの?」

 そこは疑問だ。

「長いこと変身しないと薄れるとか」

「あり得ません。一度開いたら相手が致命傷を負うか死ぬかするまで一生ものです。人間側がどうなっているかはわかりませんけど」

「経験ないもんな。研究とかされてるかもしれないけど、あるとすれば王国とか教団の内部資料か」

 触れる機会はなさそうである。

「前に多重融合の話も出たけど、そっちは難しいんだっけ?」

「はい、人間側の自我に影響が出やすくなります。だって、現実に隣り合わせになる量が二倍になるわけですから負荷も純粋に二倍になります。耐えられる強度の自我がないと影響受けて崩れますね」

「怖いな。でも、俺の場合、くっきりと分かれてるから影響受けるって感触がない」


 普通は自我同士も融合しそうになるものらしい。だから、装鎧戦士(エルフィンアーマー)の適性というのは、この自我強度が大きな条件の一つになってしまう。


「二人とも、変身中も普通におしゃべりできただろ?」

 相手のほうは驚いていたが。

「意外でした。おしゃべりまでできるのはわたしだけだって思いたかったんですけど」

「変なとこ、嫉妬するんだな」

「します」

 頬をふくらませている。

「でも、これで証明できました。マサキはほぼ間違いなく多重融合変身が可能です」

「だからってテアやトーレスを連れていったりしないからな」

「ええ、彼女たちが妖精種の里に不可欠なのは本当ですし」


 ゼアネルヒほどの高い能力はなくとも里の精神的支柱であることに変わりない。二人がいなければ、せっかくできあがった本拠地が荒れることになる。


「それに、バフレベルはやっぱりルキが群を抜いてた。すぐに感じられたぜ」

「その言葉だけでわたしは満足です」

「この妖精種(エルフィン)殺し」

 ティナレルザに責められる。


 事実なのだから、いわれなき責めである。説明しても、彼女はなぜかそっぽを向いて受け入れてくれない。


「なに書いてるの?」

 ランゼッタの興味は別にあってうずうずしている。

「ちょっと下準備な。考えをまとめとかないと失敗が多くなりそうだから」

「まだ、なにか作るのですか?」

「もう、里に来てからさんざん作ったじゃないの?」

 本当に作業ばかりの日々だった。

「こっちが本題なんだ。メタルハンターを詐称するのは、これを作りたかったからでもある」

「なに?」

「なんなのー?」


 ランゼッタとロナタルテが覗き込んでくる。しかし、書き付けを見てもそれがなにを表しているか見当もつかない様子である。


「これ、車輪な」

 輪っかの部分を指して言う。

「で、上に伸びているのがハンドル。車の向きを変える仕組みを考えてる」

「車を作る気なの? バイクが命だって言ってたじゃない」

「もちろん、俺が乗りたいのはバイク。でも、俺だけ乗ってるとすごく目立つだろ? 目立たなくするにはどうすればいい?」

 疑問を提示する。

「仕方なく車に乗り換える?」

「いや、木を隠すには森の中、だ。バイクを普及させればいい。でも、バイクだけ作らせようとしても興味は惹かれない。積載能力に劣るから。じゃあ、どうするかっていうと、一緒に金属製の車を持ち込む」

「ああ」

「積載量なら車のほう、走りトカゲに代わる簡便さとスピードならバイクのほうってなる」


 両方ともパワーアップした形にすれば売り物になると予想した。高く売れるなら飛びつきそうな人間は幾らでもいる。要は基になる技術提供だけすればいい。


「これが目立たなくするための幻惑作戦だ」


 正輝は紙をひらひらとさせて宣言した。

次回『目立たなくするには(2)』 「仕方ありません。これからの身の安全のための投資です」

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