↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
妖精拠点と幻惑作戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
131/306

妖精種の里に(2)

 正輝は翌日、これからしようとしていることを明かす。


 泉に沈めた深底コップがまだ精気を帯びていることを示し、それの大規模版を作る計画を説いた。泉そのものが外には噴きださない構造だと聞くと、難色を示した子も結構いてどう説得すべきか困る場面もある。


「絶対に成功するとは言えない。もちろん失敗する可能性もある。その場合はすぐに解体するし、湧出を一回飛ばしてしまった君たちの栄養補給のために、次の湧出までここに留まると約束する」

 そのくらいの保険は当然のことだ。

「マサキがおっしゃるとおり、お休み期間が長いときに困っているのは本当です。みんなだって、もし次までが長かったらどうしようといつも不安を抱えていることでしょう。だったら、この方に賭けてみてはいかがかと思ってます」

「一番つらいテアクルセが賛成なんじゃ言いにくいけど、これまで何十年も上手くやってきたのを変えるのも不安を伴うのよ」

「わかるわ、ピトレスカ。でも、いつかは変えなくては駄目ではないですか? 誰かが迷い込んできたとき、あなたはもうこの隠れ里のキャパシティはいっぱいだからどこかに行ってと言えて?」


 ピトレスカは不安を抱える小妖精(リトルエルフィン)の味方として反論した。彼女自身は試みてもいいのではないかと思っているふうだった。しかし、誰かが不安を抱く小妖精に寄り添わなくては、成長した二人に反論しにくいのだ。


(こうやって今までやってきたんだろうな。苦労が忍ばれる)


 すぐに褒めてあげたい気持ちが溢れるが、それをやると彼が強引に翻意させたのと同じになる。ここは隠れ里の皆だけで決定してほしくて黙っていた。


「本当はここまで苦労させないでいるのが共生の形なのにな。人間の欲がこんなにも彼女たちを追い込んでしまってる」

「マサキが悔いるようなことでもありません。人間と関係を断つ選択をしなかったわたしたちにも原因があります。安易に精気が得られる環境を捨てがたかったのが今の歪みを作ってしまいました」

「でもな、その歪みのもととなる情報操作をしたのは間違いなく人間側だ。それは正さなくてはならない」


 すでにただの正義感では済まないところまで行っている。正輝が異世界にやってきたのは、それが使命だと思えるほどだ。思い込みで十分だからやり遂げたいと欲していた。


「では、塔の建立でいいですね? もちろん、失敗に備えて約束の履行はわたくしがマサキへ強く主張させてもらうつもりです」

 指導者として立派な姿をテアクルセは示した。

「手伝いをしたくない者はしなくて構いません。したい者は歓迎するとおっしゃっているので頑張りましょう」

「ありがとう。できるだけ、君たちの生活の負担にならないように心掛ける」

「よろしくお願いいたします」


 まずは素材の集積から始めなくてはならない。必要なのは大量の金属素材。塔のフレームと表面を構成する骨材となる。成形するには流体金属(メタル)と混合するのだが、主要素材は鍾乳洞のニッケル鉄となる。

 それ以外に必要なのが表層にコーティングする樹脂の素材だが、それを主に小妖精(リトルエルフィン)にお願いすることにした。メルメシルがリーダーとなって森から木ヤニを集めてきてもらえる話になる。


「バイクというのは変わった乗り物ですのね?」

「俺にしてみれば、走りトカゲみたいな生き物を乗り物にするのは手間が大変だって感覚なんだけどさ」

「それはマサキがこんなに精気を持っているからでしょう。普通の方であれば、わたくしがこんなに精気を吸い取れば元気がなくなってしまいますわ」


 エメルキアとランゼッタが里のほうで準備に当たるときに一度だけテアクルセをバイクに乗せて動かしてもらったときの会話。緑髪の装鎧少女(エルフィン)は楽しそうに言葉を連ねてくる。いつになく饒舌な彼女に正輝は引っ張られていろいろな話をした。


「では、マサキが元いた世界ではこちらが常識でしたので?」

「おう。テアみたいな子はいなかったから、別に燃料っていう燃える水を使って動力を得ないといけなかったけどな」

「こんな乗り物がいっぱい走っている世界なんて想像できないです」

「そうか? まあ、楽しみにしてるといい」


 鍾乳洞に到着したら一緒に中に入る。用意してきた革袋にニッケル鉄の砂鉄を目いっぱい詰めては持ちだすを何回かくり返して、満載にして隠れ里に戻るという往復を日に何度もこなした。


「プールを準備しておきました。これにあの流体金属(メタル)を移すのですね?」

 エメルキアは若干不満げである。

「まあまあ、ルキ。あそこは森でもそんなに深い位置じゃない。俺たちの目がないときに誰かがやってきて持ち逃げするかもしれないぜ?」

「もっての外です。だから、納得したではありませんか」

「だったら、不機嫌になるなって」

 今日は撫でても機嫌は直らない。

「バイクにテアさんが乗っているのも……」

「なんだい?」

「なんでもありません」


 口をとがらせて呟く少女を抱きあげてプールの様子を見る。準備は問題ないようだった。流体金属(メタル)の搬送も進めなくてはならない。


 何日も費やして素材の集積に勤しんだ正輝たちであった。

次回『妖精種の里に(3)』 「あきらめるの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。