ホジダラ迎撃戦(3)
多数を向こうにまわして念動力攻撃だけ圧倒する正輝。まさか、相手は彼が地球の現代知識を応用した魔法を使っていると思うまい。
(いわゆる知識チートってやつだろ、これも)
動揺する敵陣営を眺める。
(なんだったら燃える魔法を作れなくもないはずだが、そっちはもうちょい研究が必要だな)
(見てみたい気がします)
「おいおい、ここは読んでこないでくれ」
変身中の少女には思考が筒抜けである。思わぬところからの意見に少し慌てた。
「そのうち説明する。かなり難しいんでルキが理解できるか微妙なとこなんだが」
(頑張って学ぶので教えてください)
「向上心は褒めてあげたいところだけど、今は敵に集中するか。あまりに失礼だ」
衝撃でふらふらになりながらも立ちあがってくる教団戦士たち。魔法攻撃の最大の欠点は、ほぼ致命傷たり得ないところである。弱らせるのが関の山。
ヒートミサイルも直接相手には撃ち込めない。もし、可能なら致命傷どころではないにしても不可能なのだ。なぜか、念動力は外的にしか効果がない。
「弱ってもらうしかないわけだが。ソイルスピア」
「だから、何度も同じ手は……、げえ! なんだそれは!」
「いやいや、サイズ変更可能だろ? これはXLサイズ」
直径10mほどの土錐を作る。地面ががっつり凹んでしまったが勘弁してもらう。どこからともなく土を生みだすのは無理なのだ。
「逃げろ!」
「ひい!」
吹き飛ばされていたうちの三人が巻き込まれる。さらに遠くに飛ばされて完璧にダウンした。正輝はダッシュで接近する。
「サイコブレード!」
右手に念動剣を発生させた。
「お前は何者だ!」
「あんたらの敵さ」
三人にとどめを刺してまわる。致命傷になる一撃は直接手を下すしかない。
「あんまり余裕綽々でやってると足元掬われそうだしな。ちょっとずつ削っていこう」
(はい。それが順当だと思います)
エメルキアも不安に思いはじめていた頃合いらしい。
巨大ソイルスピアの余波を喰らっていなかった戦士は、彼が駆け寄ると空に逃げる。そこは自分たちの領域だと思っているらしい。
「そうは問屋が卸さないってね!」
ジャンプして、さらに念動で二段加速する。
「まさか!」
「届かないと思ったら大間違い」
「くっ!」
カウンターの斬撃を弾いて横薙ぎする。思ったより力を入れすぎたかもしれなかった。
「げ!」
サイコブレードが首を刎ねてしまっている。
「さすがにヤバいか?」
(いえ、全身が経路で接続されてますので)
「わお、そんなに離れないのか」
地面にどさりと落ちると、斬れ飛んでいた首が引き寄せられて接合される。しかし、装鎧少女はそこで力尽きて光の粒子に還元した。収束したときには小妖精に戻ってしまっている。
「剥がれた子はあそこ! 二人のところに集合!」
ロナタルテとティナレルザがこっちに来いと手招きしてる。自分たちも攻撃されるかと思っていたのか、おっかなびっくり指示に従って飛び去っていく。
「さあて、どこまでもつかな?」
「ぐぐぐ」
飛行隊のリーダーらしき戦士が歯噛みする。
空中に逃げてしまった飛行隊メンバーは一人ひとり叩き落として斬っていく。途中で氷の矢で狙ってきたがサイコブレードで斬り飛ばした。
「へぇ、空中の水分を掻き集めて矢にするか。しかし、すぐ弾切れしそうなもんだ」
(はい、そんなに連発できるものでは)
「すると、当然に切り替えてくるな」
今度は圧縮空気で狙ってくる。密度の違いからか、球形に見える揺らめきが飛んでくるさまは異様だった。しかし、見えるだけに念動力で簡単に弾き返せてしまう。
「魔法は遠隔で使えて便利でも単調だな。こりゃ肉弾戦に偏るわけだ」
王国は近接戦士団を形成し、魔法は専門の魔法師を使っていた。
(どうしてもそうなってしまうようです。それを踏まえても、やはり生身より遥かに強いのが装鎧戦士ですので)
「まあ、装鎧戦士に対抗できるのが装鎧戦士だけだってのも頷ける」
(結果的に戦争の道具として扱われることに)
だんだんと面倒になってきて、ジャンプと念動加速で飛行隊の高さまで上がるようになってきた。一人斬れば落ちていくしかないのだが。
「どうやって、そこまでの力を!」
「なんとなく予想できるけど教えてやんないさ」
空中で解除してしまうと命が助からない高さだったが、装鎧少女たちの配慮からか落ちてから再生されている。地面には敗北して変身を解かれた戦士が増えていく。転がっているだけなので放置で構うまい。
「こいつらには俺の強さを教団に報告するって仕事もあるしな」
(歩いて戻るとなるとどれだけ掛かるかわかりませんけどね)
「それくらいの苦労、可愛いもんじゃん?」
一人ふたりと斬り飛ばしていって、残るは空中に二人というところまで来た。見るからに腰が引けてきているが勘弁してやる義理はない。
「サイコブラスト」
「がはっ!」
背中から叩かれて落ちてきた戦士を袈裟に斬る。光の粒子に包まれるのを確認もしないままジャンプした。念動加速でリーダーの高度まで達する。
「観念しな」
「貴様は何者だぁー!」
「妖精種だけの正義さ。憶えとけ」
正輝は容赦なく胴を薙ぎ払ってやった。
次回『ホジダラ迎撃戦(4)』 「この方は妖精種の神様なの」




