ホジダラ迎撃戦(1)
正輝がしたためた次の報告書は「捕捉するも苦戦せり。増援請う」だ。送りだす前にエメルキアたちに助言をもらう。
「これだと、飛行隊がやってくるかもしれませんね」
少女はとんでもないことを言いだした。
「そんなのがいるのかよ」
「数は少ないけど、飛行タイプの変身が可能な装鎧戦士もいるのよ。分類すると、魔法タイプの派生形?」
「ですね」
ティナレルザの説明をエメルキアが肯定する。
「強敵?」
「いえ、総じて接近戦を苦手とする者です。パワーに振るべきところを飛行能力に振り分けているので。速力はありますが、物理攻撃力魔法攻撃力ともに劣ります。主に奇襲にしか用いられないので、なり手に乏しい一面もあります」
「ちょっといいかも。飛べるのか」
いろいろと便利そうだ。しかし、いかんせん攻撃力に劣るでは今の環境ではマイナスでしかない。あきらめるしかなさそうだ。
「バイクが無意味になるしな」
「マサキはほんと、そこにこだわるんだから」
「ライダーの魂は捨ててなるものか」
唯一執着する物欲がそれである。ティナレルザは呆れるし、ランゼッタも不思議な面持ちになる。作るところから知っているエメルキアとロナタルテの賛同しか得られない。
「コタカッタ支庁に飛行隊がどれくらいいるか知ってる人、挙手!」
小妖精に号令する。
「たぶん、十人くらいだと思います」
「十五人くらいで飛んでるとこ見たことある」
「えー、そんなにいないでしょ?」
意見はさまざまで一致しない。
「トータルすると、二十人はいないってとこでいい?」
「はーい、いないと思います」
「じゃあ、全滅させときたいな。斥候に使われると厄介だし。これから支庁の小妖精がいなくなったら連絡役にも使われる。情報は寸断したままにしときたい」
たった一人で立ち向かうには、如何に相手を弱体化させるかが肝要だ。今後を鑑みて、飛行隊を削っておくのは効果が大きい。
「でも、遠くから攻撃してくるよ。マサキ、苦手じゃない?」
ランゼッタが心配そうに言う。
「なあに、集団戦に備えて魔法をどう使うかは考えてる。見てな」
「そうなんだ。じゃあ、ぼくは援護しなくて大丈夫?」
「問題ない。それより、一人でバイクを動かせるようにしてもらえると助かるな」
課題になっているのは移動からの戦闘の場面。バイクを放りだすわけにもいかず、乗ったままでは戦闘に差し支える。飛び降りて、そのままシームレスに戦闘に移れるようにしたい。その場合、バイクを運転できる担当を作りたいのだ。
「バイクが壊れたら、俺、泣くぞ」
「わかった。マサキを泣かさないよう頑張る」
「お願いしますね」
ケタケタと笑うロナタルテを小妖精たちが呆然と見ている。少しはイメージダウンしてくれると助かる。神様のままでは尻がむず痒い。
「じゃあ、報告書はこれで良しとする」
メモの扱いに習ってくるくると丸める。
「当然、走りトカゲでやってくる可能性も考慮して対処する。残った子は偵察もお願いな」
「はい、頑張ります」
「ほどほどにな」
飛ぶにしろ走るにしろ、ジノグラフでは夜は行動が制限される。四六時中監視の目を光らせておく必要はない。
「じゃあ、お昼にしよう。お食事タイムだ」
「わーい」
彼は食事をしつつ、小妖精が背中にたかる。食べる端から消費していく感じだ。
(そういえば、最近の食事量は完全に過剰だな。その分、精気に変換されてるんだろ。エネルギーもちゃんと保存されてる)
以前に比べて、二倍まではいかないかという食事量。
正輝は集団でランチを楽しんだ。
◇ ◇ ◇
報告が来たのは三日後のこと。偵察をお願いしていた子が、連絡役の小妖精を連れ帰ってくる。敵そのものではなく、連絡のほうが先に来た。
「『飛行隊を派遣せり。しばし足止めせよ』だってさ」
飛行隊がやってくるのが確定的になる。
「都合がよろしいのでは?」
「いやな、こんな悠長なこと平気でやってるとか気が知れんと思ってな。だって、三日もしたらどれだけ状況変わってるかわからないじゃん」
「それほど警戒していないのだと思います。装鎧戦士一人なら二人で当たればなんとでもなると」
面白くない予想だ。
「ねえ、君。何人くらいの飛行隊が出てくるかわかる? 追い越したとか?」
「いいえ、まだ準備してました。確か十二人だったと思います」
「そうか。ありがとう」
お礼を言うとまだ面食らった顔をする。習慣というものはなかなか抜けないものである。
「到着までどれくらいかな?」
「一日遅れ程度かと? わたしたちは夜も飛べますので」
「なるほど」
変身時の視覚を思いだす。昼間ほどとはいかないが、十分に見通せるほどの視力は確保できていた。
「助かったよ。戻った子は大丈夫そうだった?」
「本当に心配してくださるのですね。もう少し残っている黄緑の子たちに声掛けに行ってました。とても元気な様子で」
「よしよし、ほんとに良い働きをしてくれたね。サービスしないと」
「はああ……」
悶え崩れる連絡役の小妖精。ちょっとうらやましそうに見ている残った黄色組の子たちも懐に座らせる。
「迎撃戦の段取りは順調。これが済んだら君たちも楽園の島に向かうんだよ?」
「はい。でも名残惜しいです、マサキ様」
「すぐ忘れるさ。本当の生活が待ってる」
正輝は彼女たちに言い聞かせた。
次回『ホジダラ迎撃戦(2)』 (珍しく自信満々ですのね)




