ホジダラ情報戦(5)
キーワードで変身が発動し、宿で待機していたエメルキアが光の粒子となって正輝のところへと流れてくる。身体にまといつくように集中すると、銀色のプロテクタへと変化して張りついた。表面の色が変化して変身完了。
(これ、あり? ルキの全裸を相手の目にさらさないで……、って。俺、もしかして、彼女の裸を誰かに見せたくないになってる?)
嫉妬の感情に変わっていそうだ。
「マズ……」
(わたしは嬉しいですけど)
「お願い。読まないで」
動いた感情が大きくて表に出てしまったようだ。
その頃には意表を突かれていた教団戦士も我に返る。装鎧少女二人は「あーあ」という顔になっているが、戦士のほうは慌てふためいていた。
「貴様が手配書の! く、装着!」
「装着!」
「そうは問屋が卸さないってね」
装鎧少女たちのローブが消えて全裸に。まさか、下になにも着せてないとは呆れてものも言えない。ふつふつと湧いてくる怒り任せに変身前の一人に本気の蹴りを入れていた。
「ち、弾かれた! 念動力かなにかか」
(変身中は変換作用の周りをくるむように防護魔法が働いてます)
蹴りを入れたほうはプロテクタを周囲に浮かせたまま後ろに転んでいる。本気で蹴ったのにその程度で終わっていた。生身の相手なら骨折じゃ済まないほどの衝撃が加わっているはずなのに、だ。
「まあ、しゃーない。こっちの変身だけ守れってのは都合が良すぎる」
(ええ、マサキにももっと強力な防護魔法が働いてますよ)
変身の隙を気にしなくていいのは助かる。なにせ、生身の正輝は念動もまともに使えず、敵の装鎧戦士に抵抗するすべがない。
「なにを一人でぶつぶつと!」
「妬くなよ。せっかくの可愛い子ちゃんとの逢瀬なんだから」
(あら、恥ずかしいです)
変身して殴り掛かってきた教団戦士の拳を受けとめる。あまりに軽い手応えに拍子抜けしてしまいそうだ。手首の振りだけで弾くと、腕をひねって大地に叩きつける。
パンチを落としながら、ようやく起きあがったもう一人の突進をキックで迎撃。リーチの差で先にヒットした一撃でもんどり打って倒れた。
「あんたら、装鎧戦士のスペックに頼りすぎて鍛え方が足りなくないか?」
歯応えのなさに呆れるやらがっかりするやら。
「うぐ……、言わせておけば」
「警戒してた俺が馬鹿みたいじゃん」
(マサキに比べれば取るに足りませんね)
二人の戦士は剣を抜いて念動力をまとわせる。さすがに気をつけてまともには受けとめない。腕の甲に斜めに当てて逸らすと火花が散った。すぐに確認すると傷の一つも付いていない。
「教団戦士とか豪語してクオリティ低くね?」
「なんだ、貴様の強さは!」
「一遍に斬り掛かれ!」
試しに手刀に念動をまとわせて受けとめる。やんわりと止めて逸らしながら、もう片方の手刀で剣の腹を叩くと簡単に折れてしまった。動揺する戦士にキックをかまして吹き飛ばしておく。
「なん……とぉ!」
「お粗末すぎんだよ!」
もう一人も剣を折りながら振りまわして背中から打ちつける。苦しんでる間にこちらの武器をくり出す。
「サイコブレード」
「なんだそれはぁ!」
倒れているところを問答無用で胸の真ん中をひと突き。ぐるりとひねって致命傷にする。引き抜いて血を払うと、復帰してきたもう一人も胴を深く斬り裂きながら走り抜けた。
「勝負ありだ」
痛みにのたうちまわる二人の変身が解ける。まといつく光が致命傷に至るほどの怪我を癒やしていった。残ったのは、永遠に変身する能力を失った人間二人と、ほとんどの力を治癒に使ってしまって繁殖形態を維持できなくなった小妖精が二人。
「あんたら、その子たちに感謝しろよ」
「なに……を」
小妖精たちを傷つける台詞を吐きそうになるので、顎を軽く小突いて失神させた。馬鹿らしくなって肩を鳴らす。
「さあ、おいで」
少女の面影のある小妖精二人を招く。
「しまったな。服がないか」
「大丈夫です。ありがとう」
「ごめんけど、そのまま飛んでってくれ」
たっぷりと精気を分けると島のことを教える。口々に感謝の言葉とキスの雨を降らせる二人をいたわって南を指さした。
「さて、こいつらは、と」
準備していたロープと布切れで猿轡を噛ませる。バイクを置いてある場所にとりあえず寝転しておく。
正輝はなにごともなかったように解除して街に戻った。
◇ ◇ ◇
「ジノグラフの防犯って?」
深夜の教会の勝手口。変身した正輝は内側の閂を念動力で持ちあげて外す。なんなく侵入に成功。
(それほど意味はないです。重さでカバーするしか)
「ヤバくね?」
念動力の強い盗賊ならば侵入し放題な気がする。もっとも、それくらい力があるなら真っ当な仕事はいくらでもあるだろうと思っておくことにした。
「そのまま寝とけ」
眠っていた司祭を一撃で落とすと縛って猿轡をオン。引きずってきた戦士二人と一緒に寝室に押し込んでおく。
「お待たせ。悪かったな。っぷ!」
最奥の育成室の扉を壊すと、中から小妖精が溢れだしてきて押し倒された。ランゼッタが笑っているのを聞きながら、彼女たちに存分に精気を浴びせる。
「しばらくはここを寝蔵にするから、そんなに焦んなくていいぞ」
(もう聞く耳持ってませんから)
急な精気供給に悶える小妖精が死屍累々と転がっている。
正輝はやり過ぎたかと反省した。
次回『ホジダラ情報戦(6)』 「あなたほどとなると青をはべらせていらっしゃるのですね」




