ホジダラ情報戦(4)
逗留中は小妖精二人とできるだけ人目のないところで接触することで教団戦士の目を誤魔化していた。そうすれば、正輝は少女を二人連れただけの普通の人を偽装できる。
「マサキ、連れてきたー」
ロナタルテが指示書を持った小妖精を案内してくる。
「あなたが?」
「そうだ。ありがとう」
「本当に怖くない人間」
感謝の言葉に彼女は目を丸くしている。
「まずは約束を守ろう。おいで」
「ああ……」
「とりあえず、そこで思う存分吸ってて。指示書を見せてくれるかい?」
渡されたのか取り落としたのかわからないようなメモを手に入れる。開いてみると、そこには『調査を続行せよ。応援が必要なら要請を』と書いてあった。
「うーん、取るに足らないレベルのやり取りを。面倒だな」
使いっ走りがすぎる。
「でも、順当なのでは? おそらく、相手が装鎧戦士一人であれば、二人いれば対処できると思ってるはずです」
「普通はそうかも」
「じゃ、逆手に取るか」
正輝は判断を早める。
「なあ、君。もし仮に連絡役が取って返すようなことがあったら疑われる?」
「……そんなことはないです。よくあることなので」
「だったら問題ないか。このメモは握りつぶす。君は俺が作ったメモを持って戻ってくれる?」
急な精気注入で全身を桃色に染めた小妖精が息も絶え絶えに返事する。艶っぽい目で彼を見返してきた。
「はい、仰せのままに、神様」
妙なことを口走る。
「なんのこと?」
「あの、噂になってて。妖精種の神様が現れたって」
「おうふ。そいつは勘弁してほしい」
気恥ずかしいことこのうえない。
「まあ、噂は噂ということで、あえて訂正する必要はないかと」
「ルキさん?」
「使えるものは使いましょう」
エメルキアがごくたまに見せていた妖艶な笑みを浮かべている。こういうときの彼女には反論できない。
「では、なんと書きますか?」
準備しておいた紙切れを取りだす。
「んー、『疑わしきを発見。増援を編成しつつ続報を待て』で」
「はい、わかりました」
「もう、十分かい?」
小妖精を助けおこす。
「はい、堪能いたしました」
「言い方! まあ、いいから、これを持って君は支庁に戻って渡す。その後は隙を見て……」
「力の強い子を連れてここに来ればいいのですね?」
「しっかりと周知されてるか。そのとおり」
最初の連絡役の子は首尾よく立ちまわってくれているらしい。すでに情報攪乱作戦は進行している。
「次の行き先は楽園だ。いいね?」
「はい、神様」
背筋がゾクゾクする。
「それはやめるよう周知してくんない? マサキでいいから」
「はい、マサキ様」
「そのあたりで妥協なさってください」
エメルキアが助言してくる。
「我慢する。いいかな?」
「喜んで。みんな、あなたに期待しております」
「応えられるよう頑張るよ。とりあえずは時を待って俺の指示どおりに動いてくれるようお願いしておいて」
おかしな具合に神格化されているようだ。エメルキアが言うように利用できる状況ではある。なんでもする覚悟をした正輝は神も演じなくてはならない。小妖精を見送ってこれからの段取りを説明することにする。
「では、これからは……」
「はい、マサキ様」
ランゼッタが面白い悪戯を思いついたようだ。
「冗談も言えるようになって嬉しいよ、ランゼ」
「マサキ様のお陰です」
「じゃあ、ご褒美をあげよう」
ランゼッタをくすぐり倒して転がす。暴れまわって疲れた彼女を胡座の中に寝かせて精気補給しながらエメルキアに対する。
「で、作戦なんだけど」
彼女までふざけようと目を光らせたところを視線で制する。
「この程度のやり取りしかしないなら、あの二人は邪魔なだけ。もう始末しよう」
「え、もうです?」
「俺も泳がせるつもりだった。でも、面倒なだけじゃん」
見切りをつけた。
「ですが、急にいなくなれば支庁は騙せても教会が怪しみます」
「だから、教会ごと沈黙させる。あそこに居座ろうと思ってる」
「大胆ですね」
どうせ、引き払う前に潰しておくつもりだった。中に囚われている小妖精を放置して去ることはできない。すでに目をつけられているので手加減など無用だ。
「さあ、行動開始だ」
「はい、マサキ様」
正輝は結局エメルキアもくすぐり倒さないといけなかった。
◇ ◇ ◇
「おや、こんな田舎街に教団戦士様とは珍しい」
正輝は二人と接触する。
「任務中だ。邪魔をするな」
「待て。ちょうどお前に似た男を見掛けなかったか? 小妖精を二体も連れているのですぐにわかると思うが」
「それってもしかして、妙な鉄の乗り物を持ってるやつですかい?」
二人はピクリと反応する。
「そいつだ。どこで見た?」
「ほんのさっきです。その鉄の二輪の車を押して街の外のほうに」
「本当か!? しまった。逃げられる」
明らかに動揺している。正輝はほくそ笑んだ。
「急ぎの用ですかい? じゃあ、案内しましょう」
「協力感謝する。お前の献身はきっと神に届くことだろう」
「そりゃありがたいこって。こっちです。お急ぎを」
先導して走る。二人は連れの装鎧少女がおかしな顔をしていることになど気づきもしない。そのままホジダラから少し離れたところまでおびき出した。
「どこだ?」
「ここだぜ。ビルドイン!」
正輝は変身ワードを口にした。
次回『ホジダラ情報戦(5)』 (わたしは嬉しいですけど)




